12.会議のその後に

 時刻は18時05分。皆それぞれに打刻の時間であったり、

 残業であったりで会議室を抜けていく。

 

 両社のメンバーも気を使ってくれたのかもしれない。


 会議の後、二人になった会議室で自然に話ができた。


「どうかしら?」

 

 朝峰は答える。答えはこれで間違いはないはずだ。


「キャリウーマンらしくて、手際よくて、オキレイデス」

「じゃ、婚約してくださらない? あなたの上司からも進められているんでしょ?」


「これって政略結婚ってやつですか?」

「失礼ね。戦略的な恋愛を申し込んでいるのよ」


 あまりかわらない。

 上場企業との契約がかかかっているからそうそう断れない。


「仕事で成果を上げるってこういうことも含まれるのよ」

「たしかに」


 失恋の傷跡もほんの少し癒えてきた。

 しかしそんなことでこの美人さんを満足させられるのかはなはだ不安である。


「俺の年収ってそんなにないっすよ」

「私が稼ぐわ」


「頼もしいですね。オレの男としてのプライドは?」

「私の会社には内面にひかれたといっておくわ。

 あなたの会社には自分のほうが年収が上だったとでも言っておけばいいわ」


「うそでしょ。それはさすがに」

「じゃぁ……ブサイク専とでも言っておけばいいわ。

 ほかにそれらしい理由があれば言ったらいいわ」


 彼女は周囲の評価にはどうでもいいらしい。


「さようですか。婚約に関してほかに希望がありますか?」


「ウフ。プロジェックとが終わり黒字が確定したら、すぐに関係者を招集します。婚約記念バーティを開催。これで両社の会社関係者の絆を強固にします。そのご入籍。いかがかしら?」


 実に事務的な会話である。

「ご両親に挨拶は?」

「ああ。わたし、もう両親はいませんの。遠い親戚周りはしてほしいですけれども」


 麗華は指をおり、数えていく。


「あそことそちらのおばさまは電話連絡いれて、直接うかがうのは2件程度かしら。申し訳ないけど、娘さんを僕に下さいっていう人はいないから」

 

 意外な経歴に目を見張る。

「すみません、なんかデリカリーのない質問して――」


「……香よりもデリカシーがあって安心するわ」

 桜木、いったい何をしたのか。


「俺のほうは、両親と会ってほしい」

「承知いたしましたわ。嫁にもらってくださいって言ってみたかったの」

 

 ブランド物に身を包んでいるから令嬢かと思っていたが、いろいろ苦労したようだ。

 そんな水面下のプランはさておき、プロジェクトも順調だ。

 

 さすが、大手からの運営プランだ。見込んだとおりに売り上げ指数が伸びていく。

 

 実に都合よく、進んでいき、プロジェクトは黒字になってそのまま先方の特設チームに引き継がれた。



 そして俺たちは、いい夫婦の日に入籍した。













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