2.ドロドロ感情と同期

 なんで彼女なの?

 彼女より優れている点を探してしまう。

 彼女より頭良い。

 彼女より器用。

 彼女より気配り出来る。


 そんなことを考えている時点で性格が悪い。


 わかってるけど

 彼女を貶めたい。

「私だって」

 比べるものではないのに。


 恋はツライ。


 彼が好きなはずなのに。


 なのに時々彼を責めたくなる。


 そんな権利ないのに。


「私だけをみて」


 彼の心を望むたびに締め付けられるくらい

 胸が痛い。


「この感情、彼に打ち明ければ解決できる?」



 そんな答えなんて決まっている。


 気持ち悪いといわれるだけ。

 職場にすらいられなくなるかもしれない。


 頭では分かっていても、

 目は正直で、二人の姿を見てしまう。

「なぁ、そんなに先輩見てると訴えられんぞ」

「キャッ」

 突然私の視界は遮られた。


 書類入りのクリアファイルによって。

「ビックリしたー。朝峰」


 同期入社の朝峰諒太アサミネ リョウタ


 ラグビー部にいそうなガッチリした体格のフツメン。

 何かというとからかってくる。

 仕事上もよく連絡をとる。

 朝峰のことよりも

 先輩たちがどんなことを言っているのか気になってしまう。

「確認のちハンコ、宜しくでーす」

 今日も残業確定の私。

「はいはい」

「終わったら空飛べるドリンク買ってあげますからお仕事」

「ドウモありがとう」

 ペタンとハンコを付いてまたパソコンに向かう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る