第189話 

 突然現れたルーシーは剣を構えてやる気満々の様子だ。鬼気迫る雰囲気。眷属との死闘を経た俺ですら恐ろしいと感じるそれが、周囲の騎士を完全に萎縮させていた。


 彼女はそれほどの存在になっているのだ。まともな訓練を積んだ大人とて今や彼女より遥かに格下である。


 そんな化け物が、


「……始めよ」


 ゼロから急激な加速を見せ、即座に間合いを潰して来る。大人より、騎士より、恐らくは二年前に戦った眷属の通常個体よりもーー更に速い。


 少女の矮躯でこの出力は常識外れと言える。そして恐らく、


「見え、てんぞッ!」


 その攻撃を楽々と迎撃出来る俺もまた、常識の中にはいないのだろう。


 ルーシーが振り放った剣は音もなく中空に留まっていた。まるで縫い留められたように槍の穂先に捕まっている。


 きっと衝突の手応えもなかったに違いない。そういう風に受け止めたから。


「……また上手くなってる。強い」


「そっちも大概化け物だろ」


「……そうかも」


 一瞬の停滞。それを崩すようにルーシーが剣を押し込んで来た。やはり少女の身にしては異常な膂力で、俺は抗う間もなく受けごと圧し潰される。


「こん、の!」


 そこから更に押し込まれ、トドメと言わんばかりに大きく弾き飛ばされた。そうして隙を見せた時には、さらに追撃の蹴りが叩き込まれている。


 武器での競り合いから即座に足技を出してくる意外性。しかもその威力は一発でこちらを刈り取れるレベルときた。


 倒れる最中、体術では避けることも出来ないが、しかしまだ窮地ではない。俺は風属性魔術によって無理やり体勢を整え、風の加速を受けつつ全力で槍を突き込んだ。


「……見えてる」


「知ってるよ」


 当然のように突きを回避したルーシー、その顔が突如として痛みに歪む。彼女の鳩尾には槍が叩き込まれていた。


「……なに、して」


 痛みで一瞬硬直する体。いかに天才とはいえそこはまだ常人水準らしい。俺は立ち止まるルーシーに追撃をーー仕掛けることはなく、そこで槍を下げた。


「……なんのつもり?」


「今日は最後までやるつもりはないからな」


「……なんで?」


「このあと大事な用事があるんだよ。精神的な疲労は魔術じゃ治せないだろ」


 今日はクレセンシアに会うのだから、万が一の不安すら残すわけにはいかない。そんなこんなで俺はルーシーとの戦闘を中断し、訓練を切り上げることにした。



 その後、俺はシュナイゼルと共に王城の前までやってきていた。


 門番がシュナイゼルを見て俺達を顔パスで通過させる。


 ーーいよいよご対面の時間だ。







ーーーーーーーーーー

ちょいと休んでました。流石にこの話適当すぎるのでまた書き直します。ここで投稿しないとまたエタり癖出るなと思ったので無理やり更新です、、、

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