第184話 戦後のあれこれ
一触即発の空気に割って入って来たアルマイル。彼女の言、そして移送の際にはガルディアスやハイアンが側に付くという条件があり、何とか俺の安全は確保された。
まあ、僅かでも異変があれば最強二人に殺されるという、最悪の条件付きと言えるが。
「あの……」
場所は変わり、司令部へ向かう途中の馬車にて。俺は両手足を縛られ、さながらイモムシのような体勢で最強たちに囲まれていた。
「あの……」
「どないした?」
声を上げるとアルマイルがこちらを見下ろしてくる。
「助けてもらってありがとうございます」
「ええねんええねん。それにまだ助かったと決まった訳やない。なあお二人さん?」
それぞれ武器を持つガルディアスとハイアンは、無言でアルマイルの言葉を肯定する。こちらの身を案じつつも、何時でも殺せる間合いであった。
「ノル坊を失うんはこの国の損失や。せやから助けた。ただなあ、やっぱ、ワイも軍人や。最悪の事態は想定しとる」
「……ですよね」
どう考えても無事だとは思うんだけど、それをなんて説明すればいいだろうか。まあ検査とやらに任せよう。現状、俺の口から出る言葉に価値はないだろうから。
そうこうしていると司令部に到着する。拘束された俺はそのまま連行されーー
◯
まあ結論から言うと、俺が味方であることは保証された。
監視と検査を兼ねた数週間に及ぶ監禁生活中に、怪しい点が見られなかったからだ。眷属のように理性を失うでもなく、検査で異常が出た訳でもない。
見た目の変容こそあるものの、その他に目立ったモノがなければ、理由なく裁くことはできなかったのだろう。
とはいえそれが安全であることの証明にはならない。上層部の中では、敵が俺に成り代わって周囲を闇討しようとしている、なんて意見もあるのだ。てかそんな声が多数らしい。
それらを黙らせたのはあの時真っ先に俺を庇ってくれたシュナイゼルであった。
何かあった時はすべての責任を自分が持つと熱弁し、同時に俺がアルカディアにとってどれだけ必要な存在かを述べ、何とか俺の立場を守ってくれたとか。
彼ほどの地位にある者が責任を持つ事の意味。最悪公爵家としての問題になることもあるだろうにーーそれほど大切にされているなら、俺も彼に応えなければと、そう思った。
戦争の方は俺が監禁されている間に決着が着いていた。大将軍と副将を欠いた敵軍は降伏し、現在は両国間で落とし所を探っている段階らしい。
ただこの交渉が揉めに揉めているとか。
アルカディア側は眷属の襲撃による被害も敵国に非があると主張し、その分より多くの補償金をぶん取ろうとしているらしいが、向こうは知らぬ存ぜぬの一点張りだと聞いた。
ーーきっと長引くんだろうな。
眷属に関与しているなどとは口が裂けても言えないだろし、それに本当に彼らは何も知らない可能性もある。眷属の手引をしたのは恐らくアルジャーノ達なのだから。
まあ、ここらへんは俺達軍の人間がどうこうするモノではない。軍を超えて政の域、つまり文官の仕事だ。俺にそちら側の繋がりはないから、詳細を知るのは全てが片付いたあとになるか。
そうして全てが片付いて、ようやく王都アルレガリアに帰ることになったのだがーー
「我らもお供いたしまする」
オブライエンの部下たち、総勢百名ほどの戦争集団が、何と俺の手駒になっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
一応この章は次でラストです。
次の章はようやく学院編です。クレセンシアの護衛になる所ですね(もう忘れちまったよ)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます