第185話 戻ってきた日常
各地の戦場を回ってから、実に2年ぶりに帰って来た王都は、あの頃よりも小さく、そして迫力に欠けるように思えた。
目に見える景色に変化があった訳では無い。であれば変わったのは俺の方だろう。身長が伸び、多くの経験を積んだ事で派手な光景にも慣れたのだと思う。
「あ、おい坊主!」
「先に行ってますよ!」
俺は逸る気持ちを抑え切れずに馬車を飛び出し、魔術を発動し全速力で駆け出した。なんてことはない。ただサラスヴァティとルーシーに会いたいのだ。
こっちを出てからしばらく顔を出していなかった。今彼女たちは何をしているのだろう。
会いたい。会って話をしたい。そうして屋敷へと向かいーー
「あ」
いた。てっきり屋内か訓練所にいるのかと思えば、屋敷の正門前に二人の少女が立っていた。
見覚えのある二人は、記憶にある姿よりいくらか成長していた。身長が伸び、幼いだけだった顔付きも僅かにハッキリとし始めている。
そんな二人はこちらを見ると、それぞれ異なる反応を示した。
一人はこちらを見た途端目を大きく見開くと、一瞬全速力で駆け出そうとした後に何故か立ち止まり。
もう一人は相変わらずの無気力な目を向け、ひらひらとだらしなく手を振る。
「えっと、ただい……ッぁだ!?」
恥ずかしくて、目を逸らしつつ挨拶をすると、それを言い終えるより先にサラスヴァティが抱き着いてきた。
「……」
「……」
急すぎる事態に狼狽えていると、胸の中でサラスヴァティが声をあげる。
「心配した……死んじゃうんじゃないかって」
ーーああ、そうか。
俺が監禁されている間に、こっちまで詳細が伝わってたんだっけ。状況次第では最強たちに殺されるって情報は、そりゃあ怖いよな。
「もう大丈夫だって」
「そんなの分かってるわよ」
「そっか」
「うん」
「……二人共、なんかラブラブ」
ルーシーが両手でハートマークを作ってニヤニヤしている。それを見たサラスヴァティは顔を真っ赤にして離れようとしたけど、面白いからわざと抱き締める力を強めた。
「ちょっ!?」
「ごめんわざと。もうちょっとだけ。こうしてると、なんか帰って来たなって思うから」
「……ちょっとだけよ」
「うん」
「……やっぱラブラブ。なんかやだ」
ゲシゲシとルーシーに足を蹴られる。なんでだ。
しばらく抱きしめた後にサラスヴァティをそっと離す。離れ際、「ぁっ」と名残惜しそうな声が少女の口から出た時、もう一度抱き締めたい気持ちになったが、それは理性で抑えた。
なにせ俺からだいぶ遅れて、シュナイゼルもこの場に戻ってきていたので。
「ようやく戻って来れたぜ。おう、ただいま……ちょっ、ぶね!?」
帰宅早々サラスヴァティに蹴り飛ばされそうになるシュナイゼル。何だ何だと驚きつつも当然のように回避するものだから、ムキになった少女はさらに追撃に出た。
それを見て面白そうな顔で参戦するルーシーはだいぶヤッてると思う。まあニヤニヤと傍観するだけの俺も同じようなものだけど。
「ちょ、おい坊主、見てないで助けろ!」
「遠慮しておきます」
ーーそんなこんなで、俺はこの街に帰って来たのだった。
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これでこの賞は終わりになりますが、後書きの前に謝罪をさせて下さい。
1年ほど更新をサボり続けて本当に申し訳ありませんでした。色々な事情があってのことですが、頑張れば更新できないこともなかったので半分はサボりです。こんなに期間が空いてもまだ見続けてくださる皆様には感謝してもしきれません。
本作はこのあとようやくクレセンシアと本格的に絡むようになります。ニコラスとかアルジャーノが隠す過去にも触れるようになります。のでここからさらに面白くなるはずです。自分の腕が落ちてなければ()
まあ気長に見ていただけたら嬉しいです。これからも本作をよろしくお願いします。
ここまで読んで、面白かった、続きが気になると思っていただけたら、小説のフォロー、レビューなどしていただけたら嬉しいです!!
それではまた!!
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