第180話 

 眷属の出現によって混沌と化した都市。ノルウィンがいる場所から少し離れた所にも、何とか戦線を維持している者たちがいた。


「何なんだこいつらは!?」


 困惑に揺れる老兵の叫びは、斬って斬って斬って、それでも起き上がってくる敵を前にする理不尽がゆえ。


「ぐ、ぁッ」


 味方の一人が深手を負って膝を付く。トドメを刺される前に別の味方をカバーに向かわせるも、ギリギリだった戦線はさらに押し込まれてしまう。


 先程からずっとこの繰り返しだった。


 一対一ですら勝ち目の薄い強敵が、何度も蘇ってくるという悪夢。多対一で致命傷を負わせても無意味で、自陣ばかりが消耗していく。


 一人また一人と戦力が減る。今はまだ何とか戦えているが、防衛人数が足りなくなって蹂躙されるのもすぐ先の話だろう。


「くそ!」


 長年オブライエンの部下を務めた男だからこそ、ここまで保たせることが出来たのだ。逆に老練の兵士ですら長くは保たない地獄とも言えてしまうが。


 どうすればいい、どうすれば。


 男は必死に思考を巡らせようとするが、しかし目まぐるしく変わる戦場に脳のリソースを割いた状態では、打開策など出てくるはずもなかった。


 そうして徐々に追い詰められ、いよいよ終わりが見えてきた時、


「いたぞ!」


 増援の声が聞こえてきた。


 同じくオブライエンの部下であった者たちを中心に、様々な人間で構成された部隊が戦場に雪崩込む。


 多くが入り混じる彼らは土壇場で組まれた即席の部隊なのだろう。しかしそうとは思えぬ程の統率力を見せて次々に眷属を屠っていく。


 当然、一度倒したくらいではまた起き上がってくるが、それも考慮した上で部隊全体が無駄なく動いていた。


 一人ひとりが連動し、確実に、速やかに敵を殺し切る。その速度と確実性、何より情け容赦の無さに老兵はーー


「そんな、まさか……これは閣下の」


 オブライエンの思考を感じた。


 急に助けられた彼は、この増援がどのような部隊で、どこを中心に動いているかなど知らされていない。


 けれど彼はオブライエンの思考を数十年単位で実行に移してきた猛者である。故に、戦況を、人の流れを、その流れに乗る思考を遡れば、部隊の指揮官がいる場所まで辿り着く事ができた。


 そうして向かった先にいたのは、彼の同僚である老兵に支えられつつも、必死に部隊を捌いているノルウィンであった。


「なん、と。あの若さで」


 彼に言わせればまだまだ足りない。その欠けを彼の同僚が埋め、出来るだけオブライエンに近付けている。


「はは、そうか、そうか……。閣下はまだ死んでなどいないのだな」


 震える声は武者震いのせいだろう。視界が滲むのは目に埃でも入ったのか。


 主を失った事で心にぽっかりと空いたがらんどうが、ほんの僅かだが満たされていく。今はまだ小さな星だが、きっとこの先、がらんどうを満たし、溢れるほどに成長していくに違いない。


「この戦場が墓場だと思っておりましたが……閣下、私はまだそちらへは行けませぬ」


 戦意が滾る。オブライエンの系譜とも言えるあの少年を見て、滾らない部下などいないだろう。


 だから、彼もまたノルウィンに引き寄せられる。







ーーーーーーーーーーーーーーーー

こうやってノルウィン派(激重感情マシマシ)が増えていくんやなあと、、、。


ノルウィン派閥(戦争最強)(白目)(オブライエン基地)(後方腕組みシュナイゼル)

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