第34話 裏社会の仲間?!

 カイネから伝えられた内容は、大体以下の通りであった。


 まず、カイネは裏社会を支配していた組織の後継ぎである。

 現在その組織は完全に潰れており、カイネの父親である首領や幹部の大半が殺されているため、再起はほぼ不可能らしい。


 次に、アジトにいるメンバーが子供ばかりなのは、組織の解体に伴って行き場を失った子供を、カイネが無理をして引き入れたから。

 つまりはお荷物である。

 まあ、幸か不幸か子供の一人に風属性の魔術師が混ざっていたため、全く役に立たないというわけではないようだが。


 現在は、ウルゴール邪教団の追跡を逃れるために数日置きにアジトを変えつつ、反撃の隙を窺っている段階らしい。


「大体、ボクたちの現状はこんな感じです。聞きたいことはありますか?」


 聞きたいことというか、気になることならある。


「そんな状態で、よく俺を助けた上で仲間に引き入れようと思いましたね」


 情に厚いのか、あるいは考えなしの馬鹿か。

 善意は美徳だけど、子供を背負った人間があんな危険を犯すべきじゃない。

 俺だったら、そんな奴と手は組みたくない。 


「勿論、強い人に恩を売って味方にしたいって打算はありましたよ。弱かったり、ボクたちの敵になるような人であれば、見殺しにするつもりでしたし」


 わあお。そこら辺は結構冷酷な判断が下せるんだな。

 まあ、カイネから見たら俺は妙に強くて怪しいガキだ。そいつを助けるよりも、今いる味方を大切にしたいってことだろう。


「······そうだったんですね」


 あの戦いはギリギリだったから、出来ればすぐにでも助けてほしかったけど。


「気を悪くしたようでしたらすみません。ただ、こちらもみんなの命がかかっていますので」


「別になんとも思いませんよ。逆の立場なら俺でもそうします」


「そう言って貰えると助かります。それで、どうですか?ボクたちに協力してくれますか?」


 さて、本題はそれだ。

 カイネたちの目的はウルゴール邪教団を倒し、裏社会の安定を取り戻すことだが―――ん?まてよ?


「カイネさん。あいつらを倒したところで、裏社会の治安は良くなりませんよね?」


 治安維持をしていた組織を潰したのはウルゴール邪教団だが、今さらそれを倒したって組織は戻ってこない。


 必要なのはこの一帯を統治する力を持った組織の存在であって、奴らの打倒ではないのだ。


「それは問題ありません。今、爺やが各方面と繋がりを作るために奔走してくれているんです。もしボクがあいつらを追い出すことが出来れば、ボクの後押しをしてくれると約束するグループが既に幾つかあります。今後も、少しずつ増えていくでしょう」


 なるほど。

 ウルゴール邪教団の打倒は大前提として、その後の自らの立ち位置まで見越していたのか。

 巨大組織の血筋、そこにウルゴール邪教団の撃破という確かな実績が乗れば、多少の無理も通りやすくなるだろう。


 ―――おいおい、待てよ!?


「―――ッ!?」


「どうしました?」


 突然目を剥いた俺に怪訝な顔を剥けるカイネ。

 それになんでもないと返しながら、俺はたった今思い付いた筋書きに興奮を抑えきれないでいた。


 今、絶対的な支配者がいないこの地で、もしカイネがその座を勝ち取ったら?

 ここで恩を売って、カイネと深い関係を築いておく。これは悪いことではないはずだ。


 幸い、俺にはカイネの手助けをする理由もある。

 ウルゴール邪教団がクレセンシアを狙っているのだとすれば、絶対に倒さなければならない敵だからだ。

 そして、俺は奴らを倒す手段も持っている。

 俺の捜索をするであろうシュナイゼル、もしかしたらルーシーもか。

 あの最強たちに動いて貰えば、事態は一気に終息に向かうだろう。

 だってシュナイゼルに勝てる奴いないし。


 うん。そうだ。


 俺の縁と力でカイネの狙いを達成させ、この男女には裏社会を牛耳る存在になって貰うのだ。

 よく分からないけど、この整った容姿とかつての巨大組織の後継ぎであったという事実は、カイネを上に祭り上げるに足る材料になると思う。


 そして、いつかカイネの組織が大きくなった時、俺に手を貸して貰おう。


 うん。いいぞ。Win-Winってやつだ。


「決めました。俺でよければ、いくらでも力になりますよ」


「本当ですか!?」


 パッと目を輝かせて笑顔を浮かべるカイネ。こいつの性別が女だったら、一発で見惚れそうな美貌だ。


 だがそれとは対照的に、爺やは俺に厳しい視線を向けたままである。


「若様、私は反対致します。こやつの力は確かに魅力的ですが、それが我らに向いた時は厄介ですぞ」


「分かってるよ、爺や。でも大丈夫。この子は裏切る目をしてない」


「あの、俺の名前、ノルウィンって言います。出来ればこの子じゃなくて名前で呼んで貰えるとありがたいんですけど」


「あ!すみません。こっちの話ばっかりで名前聞くの忘れてて······」


 ―――これが、俺とカイネたちとの出会いであった。

 この瞬間が後にもたらす影響の大きさを知らないまま、俺たちは打倒ウルゴール邪教団を掲げて動き始める。



―――――――――――

す、すみません。

今回からめっちゃ動き出すって前回のあとがきで書いたのに、あまり進まなかったです、、、。次回からは本当に動き出すので許してくださいm(_ _)m

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