第5話 桃

 権兵衛さんの家の近くに大きな桃の木が、権兵衛さんの親が生まれる前からあった。権兵衛さんは幼い頃から、家族で桃を食べるのが好きだった。権兵衛さんは桃を食べながら、年老いた両親に尋ねた。

「おらの小さかった頃は、桃はもっとでかくなかったか?赤ん坊くらい。」権兵衛さんは明らかに勘違いしていた。両親は顔を見合わせて、あっけにとられた。

「なあに言ってるだ。桃は昔からこの大きさだ。」

「昔の桃の方が小さかったかもしれんな。」

両親は答えた。権兵衛さんは思った。遠い未来の桃はきっとでかいに違いない。きっと将来は人間は時間さえも自在に扱えてるに違いない。でっかい桃に乗って時間の川を遡る未来が想像出来る。

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