<共通ルート 分岐点> 三章 王国魔法研究所
王国魔法研究所ってところにいるヒルダさんって人に会いに行けばいいと教えてくれたカーネスさんの情報を持ちいったん家へと戻る。
「フレンさん、有力な情報を手に入れて来たよ」
「本当か?」
急ぎ足でリビングへと駆けこむとフレンさんへと言う。姉はまだ帰ってきていないようだったので姉が戻って来てから私は先ほどカーネスさんから聞いた話を伝えた。
「王国魔法研究所にいるヒルダって人に話を聞きに行けば何かわかるかもしれないってことね」
「……だが、その情報は確かなのか?」
姉が早速行った方が良いんじゃないかといいたげにフレンさんへと視線を向けると彼が難しい顔をして答える。
「その情報を教えてくれた人はフィアナの知り合いなのか?」
「うんん。この国では見た事ない人だったけれど、多分その人王宮で働いている人だと思うんだ。外交の事とかに詳しかったから」
「知らない人って……そんな奴からの情報を信じたのか?」
フレンさんの言葉に私は答える。すると彼が呆れた顔をして言ってきた。確かに知らない人から貰った情報を信じていいのか分からなくなってきた。
「とりあえず、その情報が確かじゃない可能性もあるだろう。もう一度街に出て今度は信頼できる人から話を聞いてきた方が良いだろう」
「あ、そ、それなら。ルシアさんなんてどうかな? 彼は王宮で働いているから王国魔法研究所が本当にあるのかどうか知っていると思うし、そこにヒルダさんって人が働いているのかどうかも聞いてみれば分かると思う」
彼の言葉に私は何でも頼れると言ったらルシアさんしかいないと思い提案する。
「ルシアってこの前ここに来たやつの事か。う~ん……まぁ、まったく知らない奴からの情報を信じるよりはルシアに話を聞いてみた方のが良い気はする」
「それじゃあ、さっそく話を聞きに行ってくるね」
「あ、なら私も一緒に行くわ。フィアナだけでいったらまた心配されるといけないから」
私は言うと立ち上がる。姉がそう言って笑った。確かにルシアさんは私にとても過保護だ。この前だって一人で図書館に本を返しに行ったらものすごく心配されて説教じみた事を言われたもんね。その時館長さんが間に入ってくれたのでお話はすぐに終わったけれど、あのままだと一時間以上は確実に語り続けていただろう。もう私も子どもじゃないし、あの頃と違って体も丈夫になったというのにね。
なんて考えながら家を出て王宮に隣接している別館へと向かい受付で待つ。
「ティア、フィアナ。あまりここには近づくなと言っておいたはずだが」
「お仕事中ごめんね。ちょっと聞きたい事があって」
ご機嫌斜めな様子のルシアさんがやって来ると姉がそう言った。
「……俺に用があるなら手短にな」
「あ、あのね。この国に王国魔法研究所ってところがあるって話を聞いたんだけど、それって本当なの?」
彼の言葉に姉がそう尋ねる。
「何処でそんな情報を手に入れたのか知らないが……確かに存在する。王国が管理している魔法研究所だ」
「それじゃあそこにヒルダさんって人もいる?」
王国魔法研究所は確かに存在するのね、それならと私も口を開き尋ねた。
「隣国から来た魔法使い見習いの中にそんな名前の者がいたが……ところで、そんなこと知ってどうするつもりなんだ? まさか、魔法使いにでもなりたいとか言い出すんじゃないだろうな」
「このペンダントには不思議な力があるっていうのは魔法の力が宿ってるのかもしれないって思って、それで魔法に詳しい人から話を聞けれたらなって思って調べていたら、王国魔法研究所ってところにいるヒルダさんが魔法や魔法使いについて詳しく知ってるってある人から聞いてそれでその人の所に行ってみようかなって思ったんだけど、聞いたこともない話だったから確証がないでしょ。だからルシアさんならそのことについて何か知ってるんじゃないかなって思って」
探るような眼差しで見てくる彼に私は慌てて説明するように話す。ルシアさんに嘘をつくのは申し訳ないけれど、ペンダントの事について知りたいのは確かだし、完全な嘘ってわけじゃないからいいよね。
「つまり、この前の本の続きということか。おおかた本では有力な情報を得られなかったんだろう。だから王国魔法研究所に辿り着いた……と言ったところか」
「そんな感じ。色々調べていたら王国魔法研究所を知ったの」
私の言葉に納得してくれたのか探るような眼差しはなくなる。姉も肯定して私の話に口裏を合わせてくれた。
「ペンダントの秘密を知りたいという気持ちはわからんでもないが……あまりのめり込みすぎて怪しげな奴等に騙されたりしないようにな」
「だ、大丈夫だよ。お姉ちゃんも一緒だし」
彼の言葉に私は大丈夫だという。
「ティアも一緒だからなおさら心配なんだ。大体お前達は――」
「あ、有り難うルシア! お仕事忙しいんでしょ。私達もう帰るから、お仕事頑張ってね」
説教が始まりそうになった途端姉が慌てて声をあげると私を引っぱり別館を後にする。
そうして逃げるようにして私達は急ぎ家へと戻って来るとフレンさんにルシアさんから聞いた話を伝えた。
「ルシアが言っていたんだから、王国魔法研究所は実在するし、そこにヒルダって人がいるのも間違いないわ」
「そうだな……なら明日さっそく会いに行ってみよう」
「フレンさんもくるの?」
姉の言葉に彼がそう言ってきたので私は尋ねる。
「あぁ。俺が元に戻るために二人に手伝ってもらっているのだからな。俺のために頑張ってくれているのに自分だけ何もしないのは申し訳ないからな」
「分かった。なら明日皆で行きましょう」
フレンさんて本当に礼儀正しいのね。そんな事気にしなくてもいいのに。姉がその意を組んで頷く。こうして私達は明日王国魔法研究所へと行くこととなった。
翌日。私達は王国魔法研究所へと向かい、ヒルダさんって人に会いたいと頼むと待合室で待つこととなる。ただ、動物は施設に入れないとのことでフレンさんだけ外で待ってもらうこととなった。すごく心配そうな顔して見送られたから、失敗しないように気をひきしめて行かないとね。
「お待たせしました。わたしに御用があると聞きましたが、あの……何の御用でしょうか?」
「あの、実は……魔法や魔法使いについていろいろと調べていたら王国魔法研究所というところにいるヒルダさんなら詳しく知っているとある人から聞いてそれで、お話を伺えたらなと思い」
奥から女の子が出てくるとそう言って私達の顔を見やる。姉が説明するように話した。
「魔法や魔法使いについてですか、一般の方に詳しくお話することはできませんが、ある程度の事ならお話しできます。……それで、どんなことをお知りになりたいんですか?」
「魔法の失敗で動物になった人を元に戻す方法があるって聞いたことはないでしょうか?」
ヒルダさんの言葉に姉がそう言って尋ねる。
「方法はなくはないですが……その。申し訳ないのですが、タダで教えることはできません」
「「え?」」
次に彼女が言った言葉に私達はどうしてといいたげに驚く。
「その、魔法使いじゃない人に情報をタダで教える事が出来ないんです。ですから情報を得るためにはそれと同等の価値がある物と交換が必要なんです」
そう言えばカーネスさんも情報を得るためには等価交換が必要なんだって言っていたわね。ということは今回も何かと等価交換が必要ってことかな。
「そうですね、情報料を用意して頂けるのでしたら、お教えすることは可能です。でも、そんなに安くはないですよ」
「構いません。おいくらですか?」
ヒルダさんの言葉に姉が尋ねる。安くないってことはものすごく高い可能性もあるわね。
「そうですね最低でも15000コール必要です」
「15000コール……」
15000コールって私や姉のお小遣いをかき集めても全然足りない。姉もどうしようと思っているらしく考え込んでいるようだ。
「すぐに用意しろとは言いませんので、お金が集まったらまたわたしの所を訪ねてきてください」
「はい。有難うございました」
困っている私達の様子にヒルダさんがそう話すと姉が答えて私達は敷地の外へと出る。
「どうだった?」
「結果だけで言えば教えてもらえなかった」
外で待っていたフレンさんが問いかけてくると姉がそう言って溜息を吐く。
「そ、そうか……」
「でもね、情報料を用意してくれば教えてくれるって約束してくれたの」
項垂れる彼へと私は慌てて説明した。
「情報料……いくらくらいになるって言っていたんだ?」
「15000コール」
「15000って……その、俺が言うのも何なんだが、用意できるものなのか?」
フレンさんの言葉に姉が答えると彼が尋ねてくる。
「今すぐに用意するのは難しいかもしれない。で、でも大丈夫よ。方法を考えてみるから」
慌てて姉が言うと私達は一旦家へと帰りこれからどうやってお金を集めるか考えてみる事となった。
「それで、どうやってお金を集める気だ?」
「私が踊りを踊って何とかお金を集めてみるしかないかな」
「それじゃあすぐにお金が集まるとは思えないよ……あ、そうだ。ルシアさんに頼んでお金を借りたらどうかな?」
フレンさんの言葉に姉が言うと私が良いことを思いついてそれを伝える。
「ルシアにお金を借りるって、簡単に借りられるとは思えないけれど。むしろ説教されて終わりそうな気も……」
「フレンさんに協力してもらいたいんだけれど」
「?」
私は言うと姉とフレンさんへと耳打ちする。そうして姉はなるほどといった顔でフレンさんは明らかに嫌そうな顔をした。
「それなら急にお金が必要になっても変じゃないものね」
「うん。それじゃあさっそくルシアさんに頼みに行ってくるね」
フレンさんを抱き上げ私は急いで王宮の別館へと向かう。
「フィアナ……あんまりここには近づくなと――っ!? そ、その犬が拾ってきた犬か。なんでここに連れてきたんだ?」
「あのね、この子拾ってきたんだけれどずっと具合が悪くて……それで、動物について詳しく調べてみたらいろんな病気になることが分かったの。だから獣医師に見てもらってお薬を処方してもらわないといけないんだけどね、そのお金が15000コールかかるらしくて。そんなお金直ぐには用意できなくて困ってるんだ……お願いルシアさん! この子を助けるためにお金を貸して……このままじゃこの子死んじゃうかも……」
不機嫌そうだったが私が抱いているフレンさんを見て顔色を変える。私は考えてきた言葉を話し俯く。フレンさんはぐったりとしたふりをしてくれている。
「本当にその犬は具合が悪いのか?」
「本当だよ。ほら、よく見て!」
やはり一筋縄ではいかないようで疑ってかかる彼へと私はフレンさんをルシアさんの目の前へと突きつけた。
「わ、分かった……分かったからその犬をこっちに近づけるな。お前達は本当に世話が焼けるな……ちょっと待っていろ」
慌てた様子で身を引き距離を置くとそう言って奥へと入っていってしまう。どうやら上手くいったみたい。
「ほら、これを持っていけ。それから、金は返さなくていい。お前達のお小遣いでは返せる額ではないだろう。生活費に困ってまた泣きつかれでもしたら困るからな」
「ルシアさん。有り難う」
彼が言うとお金が入った袋を私に差し出す。それを受け取ると私はお礼を言った。
「大金だからな気を付けて持って帰るんだぞ。すりにでもあったら大変だからな。人通りの多い道を通って帰るように。それから――」
「分かってるから大丈夫だよ。それじゃあ、この子を早く治してあげないといけないから私行くね」
長い注意が始まりそうになったので私は言うと駆け出す。
「あ、こら。走ったりなんかして熱が出たらどうする気だ。おい、聞いてるのか?」
背後からルシアさんの声が聞こえてきたが無視して急いで別館の外へと走っていった。
「はぁ~。はぁ~。……つ、疲れた」
「大丈夫か?」
別館の外までくると私は息切れを起こし立ち止まる。そんな私へとフレンさんが心配して声をかけてきた。
「うん、こんなに一生懸命走った事なかったからちょっと疲れちゃって……でもお金が無事に借りられたからこれでもう大丈夫だよ。協力してくれてありがとう」
「病気のふりしてくれなんて頼まれた時は正直困ったがな。さ、ティアが待ってるだろうから家に帰ろう」
私が言うとフレンさんがそう促す。そうしてルシアさんに言われた通り人通りの多い道を通り家へと帰ると心配そうな姉が玄関前で迎えてくれた。
「遅かったから心配したのよ」
「大丈夫。ちゃんとお金貰って来たよ」
リビングに向かいながら話しかけてくる姉へと私は答え袋を見せる。
「ルシアがそんな簡単にお金を貸してくれるなんて思わなかったけれど……本当にうまくいったのね」
私も上手くいかないかもしれないと思っていたけれど、動物が嫌いなルシアさんならちゃんとフレンさんの体調を確認することもないだろうと思いこの作戦を考えたのだ。上手くいって本当に良かった。後は明日ヒルダさんから情報を教えてもらえばすべて解決するよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます