<共通ルート> 二章 迷子の青年との出会い

 翌日。目を覚ました私はそっとリビングの部屋を覗いてみる。


「フィアナ、おはよう……なんだ? 俺の顔に何かついているか?」


(夢じゃなかった……)


犬の姿で普通に話しかけてくるフレンさんの様子に昨日の出来事が夢でなかったことに苦笑するのと共になぜかほっとしている自分がいた。


「それより、昨日久々にご飯を食べたおかげか、少し元気が回復した。今日は普通にご飯が食べられそうだ」


「それは良かった。すぐにご飯の準備をするね」


彼の言葉に私は普通にご飯が食べられるようになったことに良かったと思いながら台所へと向かった。


「本当にお前達姉妹には世話になってばかりだな。元の姿に戻れたらきちんとお礼をしたい」


「お礼だなんて、気にしなくていいよ」


「そうよ。それよりも早く元の姿に戻れると良いね」


朝食を終えるとフレンさんがそう言って頭を下げる。その姿に姉と二人で顔を見合わせるとそう言って笑った。


「お~い。ティア、フィアナ」


「誰か来たみたいだぞ」


「は、はい!」


そこに玄関から誰かの声が聞こえてきてそれに耳をピクリと動かしフレンさんが言う。


姉は慌てて返事をすると玄関へと駆けて行った。私も後を追いかける。


「はい……あれ? ルキア? どうしたのこんなに朝早くから」


「どうしたもなにも、この大量の本を届けてくれってルシアに頼まれたんだよ」


姉の言葉にそこに立っていたルキアさんが答えて背後に置いてある本の入った袋を見せる。


ルシアさんあれから直ぐに用意してくれたのかな? だけどなんでルキアさんが届けに来たんだろう。


「お仕事忙しいのに、わざわざ有難う」


「いいって……それよりお前達ルシアとなんかあっただろう。あいつ自分から持って行くのが気まずいからってオレに頼って来るなんてさ、まったく人使いが荒い兄貴だよな」


私がお礼を言うと彼がにこりと笑い言った。ルシアさん来るのが気まずくてルキアさんに頼んだのか……。


「ルシアは平常心を装っているみたいだけど、朝からすんごく機嫌悪くてさ。そんで、オレも断ると後が怖いと思って本を代わりに持ってきたってわけ。まったく、自分で持ってくりゃいいのに……何一人で悩んでんだかね」


「本当にごめんね」


溜息交じりに話すルキアさんの言葉に姉が謝った。


「気にすんなって。それより……早くフィアナのペンダントの謎が解けると良いな」


「う、うん! 有難うルキアさん」


本心からそう思ってくれているのに嘘をついていることに、申し訳ないと思いながら私はお礼を言う。


「そんじゃ、オレも仕事に戻るな。あ、そうだ。犬を飼ったんだろ? 今度ゆっくりできるときに触らせてくれな」


「う、うん。勿論よ」


瞳を輝かせてそう頼んできた彼に姉が複雑な思いを抱いているのだろうひきつった笑顔で頷く。


(そういえばルキアさん動物大好きだったな……ルシアさんは逆に苦手なのに)


ちなみにルチアさんは好きな動物と嫌いな動物の差が激しい。小動物は好きだけど肉食の大型の動物は苦手なのだ。ライオンとかトラとかね。オオカミは犬っぽいから好きだと言っていたけど、人を襲うこともあると思うのだけれどそこは大丈夫なのかな?


ルキアさんを見送った私達は大量の本が入った袋を抱えてリビングへと戻る。さすがの量の多さにフレンさんも驚いていたが、何かヒントでもあればと片っ端から調べる事となった。


「……だめ、どの本も伝説や言い伝えばかり」


「こっちも実用的な事は何一つ書かれていないわ」


「俺も手伝ってやりたいがこの手では本一つ読み上げることもできそうにない……二人は俺のために頑張ってくれているというのに情けない」


私の言葉に姉も本から目を外して溜息を零す。フレンさんが申し訳なさそうな顔で言う。でも耳が垂れ下がっていてとても可愛い……抱きしめたくなる衝動を抑えながら私は口を開いた。


「気にしないで。私本を読むのは得意だから」


「そうなのか?」


「フィアナは昔から本ばかり読んでいたからね。私もお母さんに言われて魔法陣の本とかは読んだことがあるからこういうたぐいの本を読むのは得意よ」


私の言葉に不思議そうにする彼へと姉が答える。


「なんで魔法陣の本なんか読んでるんだ? 一般人には必要のない知識だと思うのだが」


「それはね、私のお母さんが踊り子で、私はお母さんと同じ踊り子になるのが夢なの。だから魔法陣を覚えるために本を読んでいたのよ」


困惑した顔で尋ねるフレンさんに姉がにこりと笑い答えた。


「踊り子になる事と魔法陣を覚えることがどう関係してるんだ?」


「よくわからないんだけど、お母さんが言うには一人前の踊り子になるにはまず魔法陣を覚えた方が良いんだって。それが分かる様になれば踊り子になれるって教わったの」


「そ、そうなのか。俺はそんな話し聞いたこともなかったが……世界は広いな」


姉もよく分からないけどといった感じに説明する。その言葉に彼が汗を流しながら呟くと暫し黙り込む。きっとこれ以上聞いてはいけないと思ったのだろう。


「そ、そういえば、気になっていたんだが、ティアは俺が喋った時驚いていたのにフィアナは全然動じなかったな」


「あ、それはね。私小さいころから動物の言葉が分かる特殊な能力を持っていたから。だからフレンさんが喋った時も最初は驚かなかったの」


話題を変えて聞いてきたフレンさんの言葉に私はすぐに答えた。


「そうか……もしかしたらフィアナには素質があるのかもしれないな」


「え? 素質……ですか?」


彼の言葉に私はきょとんとして尋ねる。


「あぁ。動物の言葉を理解できる魔法使いも中にはいるそうだ。だからフィアナには魔法使いの素質が備わっているのかもしれない」


「私が魔法使いになれるってこと?」


フレンさんの言葉に心底驚いて尋ねた。魔法使いになれるなんて子供の頃は誰もが憧れたのではないだろうか。


「素質があるから可能性はある。だが魔法を扱えるかどうかはわからない。この国は魔法についてはまだ発展途上だと聞いている。素質があるだけで誰もが魔法を扱えるというわけではないからな。魔法を使えるようになるのもかなりの熟練度が必要だ。いきなり炎や水を出せるわけでも動物を従わせられるわけでもない」


「フレンって魔法に詳しいのね」


「ある程度の知識があるだけだ。それくらいなら一般人だって知ろうと思えば知れる」


すらすらと説明する彼の言葉に姉が言うとフレンさんが焦った様子でそう答えた。


「そ、それより。魔法や魔法使いの本を借りたいといった時フィアナが話していたペンダントっていつも首にかけているやつの事だろう。それ、ゆっくり見て見たいんだがいいか?」


「あ、これね。……これはねお父さんから譲り受けた物なの。といってもお父さんはその後すぐに亡くなってしまって、結局これがそのまま形見の品になってしまったんだけど」


フレンさんが私のペンダントを見詰めて言うので首から外して彼の前へと持って行き見せる。


「……何とも複雑な作りのペンダントだな」


「細工がすごく細かいからね。お父さんはこれはとても大切なものだから大事に持っているようにって。それと、このペンダントには何か不思議な力が宿っているらしいんだけれど、それを教えてもらう前にお父さんは亡くなってしまって……だから図書館で本を借りて何かヒントでもないかと思いながら調べてみたりしているんだけど、全然……」


まじまじとペンダントを見詰めながらフレンさんが言う。私は首に戻しながら説明した。


「そ、そうか。……いつかそのペンダントの秘密がわかる日が来ると良いな」


「でも今はこのペンダントの事よりもフレンさんを元の姿に戻す方法を探さないと」


フレンさんが何か言いたげな顔をしたがそう言って笑う。私は言うと手元の本へと視線を向けた。


「そうね、まだまだ本はいっぱいあるから。そろそろ本を読む作業に戻らないとね」


「俺も読み終わった本を端にずらすことくらいなら手伝えると思う。さすがに口にくわえるわけにはいかないから押し出す程度だけどな」


姉も言うと読みかけの本へと目線を戻す。フレンさんもやることが見つかったといった顔をして手伝うという。


そうして私達は夜になるまで本を読み漁ったのだけれど、これと言って手がかりになりそうなものは見つからなかった。


翌日。私達は気分転換もかねて近くの森へと遊びに来ていた。


「昨日はずっと本とにらめっこで疲れただろう。今日は気分転換に思いっきり外の空気を吸って疲れを癒してくれ」


「気を遣わせちゃって悪いわね」


森の中へと入り草むらにレジャーシートを広げているとフレンさんが声をかけてくる。それに姉が答えた。


「いや、二人とも俺のためによく頑張ってくれている。早く元に戻りたい気持ちはあるが、二人に負担をかけさせる気はない。だから、無理はしてほしくない」


彼の言葉に私達はお互い顔を見合わせる。


「前から思っていたけどフレンさんて、礼儀正しいし、なんか隠し切れない気品みたいなのも漂ってるし、もしかしてよいところのお坊ちゃまとか?」


「そうね。それで何かの事件に巻き込まれて魔法をかけられたのかも」


「今頃ご家族は心配してるんじゃないかな?」


「捜索願とか出されているかもしれないわよね」


「おい、二人で何こそこそ話し合ってるんだ?」


私達が内緒話をしているとフレンさんが怪訝そうな顔で見てきた。


「う、うんん。なんでもない!」


「さ、ピクニックを楽しみましょう」


「?」


慌てて首を振って答えると姉もそう言ってお弁当を広げる。彼は不思議に思ったようだが追究することなくそのままピクニックをする事に意識は向けられた。


「さ、てと」


姉が昼食の準備をしている間私は森の奥へと入っていく。この奥に木苺の木が生えているところがあるので、それをつんでデザートで食べようと思ったのだ。


「これくらい積めばいいかな」


籠一杯に木苺をつむと私は立ち上がり来た道へと戻ろうとした。


「ん?」


今木の上から物音がしなかったか? そう思い上空を見上げる。


「きぁあっ」


「っ!?」


途端に上から何か大きなものが降ってきて驚いて悲鳴を上げる。ぶつかると思ったがその物体は空中で方向転換し私の前へと降り立った。


「はぁ~びっくりした」


「ごめん。人がいるとは思わなくて……その、君大丈夫?」


驚いている私へと目の前に降り立ったものが尋ねる。落ち着いてきた私が顔を上げるとそこには見知らぬ青年が心配そうな表情をして私の事を見ていた。


「はい。驚きはしましたが何処も怪我はしていませんので大丈夫ですよ」


「そうか、それなら良かった」


私の言葉に彼も安堵したように微笑む。すごく顔立ちが整っていて美男子なのに右頬に×印に斬られた古い傷跡がある。


(きっと怪我した時痛かったんだろうなぁ……)


ルキアさんもこれくらいの傷をよく作って帰ってきていた頃があったので、傷を見るのは見慣れているはずなのになぜか胸が痛む。


「ん? ぼんやりしてどうしたの。やっぱりどこか怪我でもしちゃった?」


「い、いえ。この辺りでは見かけない方のようですが、木の上からいきなり降って来るなんて何をしていたんですか?」


青年の言葉に我に返った私は慌てて問いかける。


「その……」


「?」


急に黙り込んでどうしたんだろうと首を傾げ、彼が口を開くのを待つ。


「……道に迷ったんだ」


「え?」


彼が諦めた様子で口を開く。その意外な言葉に私は驚いた。


「もしかして……方向音痴ですか?」


「行きなれた場所なら平気なんだけど、知らない土地だと方向が分からなくなって……それで木の上から道を探そうとしてたってわけ」


私の言葉にもはや隠すことなく彼が溜息交じりに説明してくれる。


「オルドラ王国ってこの近くのはずなんだけど。君、知らないかな?」


「それならこの森を抜けたさきが王国の入り口ですよ。あ、良かったらそこまで案内しましょうか?」


「え、いいの?」


私の言葉に彼が驚いて尋ねる。


「私その国に住んでいるので」


「それは助かるよ。……オレはレオン。君は?」


「私はフィアナです。あ、この森には姉と来ていて、お姉ちゃんにも説明してからになるんですが、宜しいですか?」


自己紹介してくれた彼へと私も名乗り、姉がいる事を伝えそこに向かうと説明する。


「構わないよ。でも女の子二人だけで森の中なんて危ないとは思わなかったの」


「え? 危ないと言ってもこの辺りには危険な獣なんていないですし」


次に言われた言葉が以外で驚いて尋ねる私にレオンさんが困ったような顔で苦笑する。


「人攫いにでもあっても知らないよ」


「ひ、人攫い?」


途端に鋭い眼差しとなり薄い笑みを浮かべて言う。その言葉に私は驚いた。


「最近多いって話だ。若い女の子を攫って売買する闇の取引があるって……聞いた事ない?」


「そんな物騒な話、本当にあるんですね。あ、そう言えば前にルシアさんとルキアさんがあまり遅くまで一人で出歩くなって言ってたけど、それも人攫いが関係してるのかな?」


彼が表情を戻すと説明する。その言葉にルシアさんとルキアさんが私に話していた内容を思い出し冷や汗を流す。


「いまはいいけど、暗くなってくるとクマやイノシシやオオカミなんかも出る。そんな森に女の子二人だけで来るのはあんまり感心しないよ」


「……」


レオンさんの言葉に不安になり俯く。


「まぁ、危険を伴うって分かったら次から気を付ければいいだけの話だ。さ、お姉さんが心配してるといけないから行こうか」


「はい。こっちです」


彼が溜息を零しそう言って促してきたので私は返事をして姉がいる場所まで案内する。


でもレオンさん初めて会った私達の事を心配して注意してくれるなんてとても親切な人だな。旅の人みたいだけれど、この国には何しに来たんだろう?


「あの、レオンさんは何をしにこの国に?」


「ただの観光。オレ、いろんな国を渡り歩いている旅人でね、行った事のないところに行くのが好きなんだ。この国にもしばらくの間は滞在する予定だから、オレに会いたくなったらここに来てくれればいいよ」


「あ、会いたくなるなんてことあるのか分かりませんが、分かりました」


私の質問に彼が答えるとポケットから何か紙切れを取り出し差し出してくる。それを状況反射で受け取ってしまい、しまったと思いながら頷く。


「あ、フィアナ。探していたのよ、どこまで行ってたの? ……その人は?」


「道に迷っていた旅人のレオンさん。レオンさん、こちらが私のお姉ちゃん」


姉とフレンさんが駆け寄ってきたが、フレンさんは人が一緒にいる事に気付き普通の犬のふりをしている。


「話は聞いてるよ。君がお姉さんだったんだね」


「は、はい。私が姉のティアです」


姉を見た途端に微笑みいきなり距離を詰める彼の様子に姉も驚いたようだが何とか受け答えた。


(これってもしかして……レオンさんお姉ちゃんに気がある?)


「……わん、わわわん!」


「ぉと……この犬っころなに?」


私が勘ぐっているとフレンさんがつまらなそうな顔をして二人の間に割って入る。彼が飛び掛からん勢いでじゃれてくる様子にレオンさんが驚いて尋ねる。


「私の家で飼っている犬です。今日は天気がいいので散歩がてら一緒に森に連れて来ていて」


「ずいぶん人懐っこい犬だね。……いた、いたたたたっ! ちょ、ちょっと。爪が痛いって」


「だ、だめよ。ほらこっちおいで」


私が説明する間もじゃれつかれているレオンさんがしゃがんで彼の頭を撫ぜようとした。途端にフレンさんが彼の顔を右手で「頂戴、頂戴」とするみたいに動かす。太い爪が顔に当たり痛がるレオンさんの様子に慌てて姉が彼を引きはがし抱き上げる。


「かまってほしいみたいで、すみません」


「いいって、動物なんてそんなもんさ」


姉の言葉に彼が笑って答える。姉の腕の中にいるフレンさんは満足そうな顔をしていた。


(はっ! これってフレンさんもお姉ちゃんのことが好きなのかも? それでレオンさんに嫉妬して?)


私はそう思いいたるとフレンさんの顔を見詰める。


(これは後で妹としてお姉ちゃんのことをどう思っているのかちゃんと聞いてみなくては!)


私が意気込んでいるといつの間にか話は終わっていたようで皆で街まで帰る事となった。


「ここまでで大丈夫だよ。色々と面倒かけてごめんね」


「いえ、観光楽しんでいって下さいね」


町の入り口までくると立ち止まりレオンさんが言う。それに姉が笑顔で答えた。


「それじゃあ、またね」


「……レオンさん大丈夫かな? また迷子になったりしないかな」


手を振って町の中へと駆けて行ってしまった彼を見送りながら私は言う。


「そんなの気にすることはないだろう。それより、何だか疲れた。早く家に帰ってゆっくり休みたい」


「私もちょっと疲れちゃったかな。レオンさんずっと話しかけてくるんだもの。何だか気疲れしちゃって……」


疲れた顔でフレンさんが話すと姉もそう言って溜息を零す。


「レオンさんお姉ちゃんに一目ぼれしちゃったんじゃないの? いきなりお姉ちゃんのこと抱き寄せたのにはびっくりしちゃったよ」


「あれには私も驚いたわよ。もっと顔をよく見たいなんて言っていきなり抱き寄せるんだもの……」


私がからかうように尋ねると姉は頬を赤らめ慌てて口を開く。


「そんな話はもういいから、早く帰ろう」


(やっぱりフレンさんもお姉ちゃんに気があるのね。これは後で気持ちを聞きださないと)


フレンさんが本当にどうでもいいと言いたげな顔で言うと家まで向けて歩き出す。その姿を見ながら私は確信を得た。いゃ~お姉ちゃんは人気者だな~。


にやける顔を隠しながら家へと帰るとぐったりとした様子の二人のために夕食を作る。


「フレンさん。ちょっと待って下さい」


「どうした?」


部屋へと戻って行く彼を呼び止めると不思議そうに首をかしげ見上げてきた。


「フレンさんってお姉ちゃんのこと好きなんですか?」


「は?」


私の言葉に彼が呆れた顔をして半眼になる。


「お姉ちゃんのことどう思っているのかって聞いてるんです。好きなんですよね?」


「……あのな。たとえ好きだったとしてもこんな格好の俺に恋情を抱くやつはいないだろう」


私の言葉に彼は半眼のまま答えた。


「ってことは、元の姿に戻ったらお姉ちゃんに告白するんですね?」


「……」


食いついていく私の様子を呆れかえった顔で見やり暫し黙り込む。


「いいか、俺が人間に戻ったところで、出会ったばかりの男性にいきなり告白されても困るだけだろう。それに元に戻ったところで結ばれるとも限らない。俺の立場的に本当に大切に思うひとほど側に置いておこうとは思えない。……それに、俺は告白するより相手が俺の事を好いていると気付いてくれるまで待つ。言っておくが、ティアにしろお前にしろ世話になっているし迷惑をかけて申し訳ないとも思っている。だから元の姿に戻れたらお礼をしたいと思っている。今はただそれだけだ」


フレンさんはそれだけ言うと部屋へと戻って行ってしまった。何だか答えをはぐらかされたような感じに思ったのは気のせいかな?


結局フレンさんがお姉ちゃんのこと好きなのかどうかを確認することはできないままこの日は床に就いた。

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