〜huh?〜

カオさん

愛が凶器(狂気)となるその頃には───

『*毎日この時間に連絡して』


『どうして他の女と一緒にいたの?』


『私以外の女見ないでよね?*』


──────


この世には【王道】と言われる、"これが基本"なる言葉が存在する。

王道は魅力がある。皆が好きだから王道と呼ばれる。


3年前のとある夜、ベッドに入る前に俺に対して確かに*あー言った。俺の目をジッと見ながら。

反応に困る俺を放って眠りにつく彼女。


.......いつもいつも思う....枕を替えても替えても寝付けない......しかし原因は分かった。

俺の右腕をがっちりと抱き枕の様に掴まれてしまっている.....これが理由だ。


〜〜〜〜〜


彼女は付き合った当初から不安定で、都会の沼から見つけたトー横出身の彼女はこんな事を当時から言っていた。



「私ってこれだけ生きてきて誰も幸せに出来なかった。親にだって迷惑ばっかかけて不幸にして...こうやって今だって何も出来なくて...俺君の事も...幸せに...グスッ...してあげられる...自身がないよ...」



なんて言い出して、いきなりすぎて混乱したよ。

更に畳み掛けるように続けて、



「ねぇ...!俺君は...俺君の......何が──」


──幸セ?



そいつの目は輝きを失った目をしていてとても不気味極まりなかった....あの顔を今も覚えているよ....。


俺が死にたいくらいだ....ただそれを彼女に言ったところで──



「一緒に死ぬのが最高」



って言うくらいなんだぜ...?狂ってるだろ?


〜〜〜〜〜


〜《数年前のとある深夜》〜



佳奈『──俺君....?もう時間が23時なのに....まだ帰って来ないの.....?一体誰とナニをしているの.....?迎えに行かないと.....』


〜〜〜〜〜


俺「いやーすまないね、俺の仕事まで手伝わせてしまって笑」


女幼〔大丈夫だって〜!アンタが終わんないとアタシまで帰れないんだからね〜?笑〕


「ハハハッ笑.....もう夜も遅いし、家まで送ってこうか?」


〔あほんとに〜?お言葉に甘えますかね〜〕


〜〜〜〜〜


〜《駐車場へ向かう道中》〜



女幼「──でさ...あそうそう笑そうな──」


───。


「笑.....ん?」



賑やかな話し声が一瞬で鳴り止んだ。


下を見るとさっきまで楽しく談笑していた幼なじみが倒れている。

そこで俺はある事を察し、恐る恐る後ろを振り向いた.....するとそこにはナイフを持って立っている彼女の姿が。


俺は死ぬ程ビビった。まさか....まさかこんな事をするなんて.....と。



「お、おぉ前.....ぃ一体.....何をしているんだ......!?」



すると彼女の顔が薄気味悪い歪んだ笑みに変わり、こう言った。



『どうしたの?俺君はどうしてそんな怯えた顔をするの?大丈夫?』



そう言って俺に近寄る彼女。


俺は吐いた。隣で人が殺されたショックと、彼女に対する気持ち悪いくらいの怖気と嫌悪で。



「おぉ...お前、なにをして....オエッ...」


?この女がそんなに気持ち悪い?そうだよね、彼女がいる男に近寄る女なんか気持ち悪いもんね。』



俺はもう目の前が霞んで来た......度重なるストレスなのか...?もう俺には考える気力が湧いてこない.....ただ言えることは、俺の彼女はもう一線を超えた関わってはならない人間だという事だ......


俺は倒れ込んだ....ダウンしたボクサーの様に....この狂気に太刀打ちできる気がしない....。


俺が仮に今ここで、

「もうお前とは付き合って行けない!」と力強い声で突き放したところで、すんなりと別れてくれるような健常者だと思うか?


「絶対に別れたくない!ヤダヤダ!」と言い出す筈だ。

それを分かっていて足掻こうとする俺は往生際が悪いだろうな.....。



『家に戻ろ?ね?』



その辺からあまり覚えていない....ほぼ気を失っていたのか?何も覚えてない。


しかし家へ入ったところで、声を掛けられたのは覚えてる。


〜〜〜〜〜


『....ねぇ...俺君.....私って...偉い?』



気分はまるで酒に酔ってるようで、何もかもがどうでもよかった....。



「偉い?...っハハ...ハァ...あぁ...そうだな...あっ...あぁ...」


『どうしたの?!大丈夫───?』


〜〜〜〜〜


いつの間にか俺は気を失っていた。最後に佳奈は心配していたようだ....狂気的だ。



〜その日の昼〜



【佳奈】「......俺君...グスッ...うぅ...起きてぇ...」



──ここは?病院か?....泣いている声がする。

そう思い、声のする方を見ると───


──佳奈が泣いていた。


〜〜〜〜〜


俺「....佳奈?なに...泣いてんだよ、泣きたいのは俺だ....。まずお前がなんでここに居る」


【佳奈】「俺君!起きてよかったぁー!心配したんだよ?!急に倒れt...」


《抱きつこうとする佳奈を振りほどき、人差し指を指して言う。》


「お前の声が耳障りだったからだ....全く目が覚めたよ、とんでもねぇことしておいて本気で俺の事心配しやがって....どうなってんだよ...ったく。」


【佳奈】「お、俺君...?どうしたの?急に怒って...佳奈...


《佳奈は驚いている。ヤツからしたら彼氏である俺からあんなことを言われたので、おそらくショックを受けている様だ。》


自分が何をしたか分からないってか?....人殺しが....。」


【佳奈】「まとわりついてたから、払っただけ.......」


《呆れた様にため息をついた俺は質問を投げ掛ける》


「はぁ.......お前が殺したやつは"蚊"か?」


【佳奈】「.....え?どういうこと...?」


「蚊だよ。血を吸う虫。自分の周りを飛ぶ蚊にわずらわしさを覚えるとどうする?....殺すよな?そうだよな?刺されるの嫌だし、刺されたら痒いからな。

お前さっき、まとわりついていたから払ったと言ったな?」


【佳奈】「言ったけどそれは....!だって....あの女....」


「『言ったけどそれには理由があって、諸々理由があって殺した...だから悪くない.....』ってか?

馬鹿野郎が。お前はどうしてそんな馬鹿なんだ?」


【佳奈】「俺君は....彼女がもし誰かも知らない男の人に連れてかれそうになっても.....助けないの...?」


「.....助けるよ、手を引っ張ってな。刃物は使わないよ、。」


【佳奈】「私だって助けるよ?だから助けたんだよ?分かるでしょ?ね?」


《呆れを通り越して、下を向いて黙ったままの俺を差し置いて喚き散らす佳奈》


【佳奈】「私の気持ちも分かってよ!守ったのに...."どうしてそんなに馬鹿なんだ"なんて.....酷いよ流石に.......。」


「(黙ったまま窓の外を見つめてる)」


【佳奈】「俺君....?何か言ってよ.....ねぇ...?!」


「なぁ佳奈....植物がストレスを感じると超音波の悲鳴をあげるのを知ってるか...?」


【佳奈】「...え?」


「....人間がやられてストレスに感じることを植物にもやって、どれほどの音波を検出できるかという実験がイスラエルで行われた.....。」


【佳奈】「なんでそんな話急に.....」


「干ばつ状態、茎に切れ目を入れる、何もしないの3種類の実験を行った結果....それぞれ"10~100kHz"の音波を発したという研究結果がでた。」


【佳奈】「.......」


「もうひとつ、とある実験の内容がある。

人を殺した人の心の状態とは何か?という実験だ」


【佳奈】「(下唇を噛み、俺を睨む)」


「3つある」


【1つは、明かな動機と殺意を持っていて計画性がある場合】


【2つ目、動機はあるが、殺意というレベルでは無いが、結果的に殺害してしてしまう場合(計画性が無い)】


【3つ目、動機も殺意も無いが、衝動的に、もしくは精神に異常があり、殺害に及ぶ場合(計画性も責任能力も無い)】


「....なぁ、俺が言った3つのうちの3番目....お前の状態と似てると思わないか?なぁ。」


【佳奈】「.........」


「なぁ、黙ってねぇでなにか言えよ」


【佳奈】「似てない......」


「動機は大した理由も無く、本人曰く蚊を払っただけ。事の重大さの理解力も欠落している.....どうだ?」


【佳奈】「違う....違う...!!!」


「佳奈、ずっと否定し続けるのは辞めろ。

自分がやったんだ....逮捕が怖いならやってしまった自分を悔やむんだな。」


【佳奈】「佳奈....俺君に会えなくなるのやだよ...!会えないなんて死んでるのと一緒だよ......。」


「それも含めて自分を悔やめ。行いは自分に帰ってくる。命を自分勝手に奪った報いを受けろ。お前も大切な人を奪われろ!」


【佳奈】「ねぇやだ!離れたくない!!ごめん!ごめんなさい!本当にごめんなさい!許してくださいぃ!!」


《俺は何も言わず、黙ったまま佳奈の土下座を見下ろしていた。

顔は涙で溢れ、鼻水が女っ気も無くダラダラと垂れ流してた。》


【佳奈】「こ"め"ん"な"さ"い"!!!ほ"ん"と"にこ"め"ん"な"さ"い"!!!」


「お前がこの先改心するかはどうでもいい。ただもう....俺に関わらないでくれも───」


【佳奈】「やだやだやだやだやだやだやだ!!!!」


「──もう出ていってくれ....。」


【佳奈】「やだやだや──」


「いい加減にしろっ!!!」


【佳奈】「だや──え...??」


「もううんざりなんだよ!ただでさえ今ここにお前がいるのが苦痛で仕方ないのに、それも知らずにお前は!....休ませろよ....病院なのに休む暇も無い....。

殺人犯と一緒にいる部屋とかどうなってんだよ!

頭がおかしくなりそうだ!頼む、早く出ていってくれ!」


【佳奈】「........わかった...行くね.....じゃあね。」


「自身の人生が不幸になってんのは周りの環境等のせいじゃない。自分で人生の風向きを変えないから不幸のままなんだ。覚えておけ。」


【佳奈】「........バタッ(病室のドアが閉まる音)」



......から気持ちが清々した。

けど気分がすこぶる悪い、イラついてんのか?俺。

話してて疲れた....退院まで寝てようかね...なんてな。

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〜huh?〜 カオさん @KAO_SAN

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