第11話 初めての創作活動

「音乃ちゃん、小説の方は上手く行ってる?」

 学校の部室にて、物事がうまくいかず机にぐってり机にと突っ伏してる音乃に宮平先輩がそう言った。もちろん理由はそれだ。

「小説……うまくいってないんです。もうどうやって話を作ればいいのか、どう文章にすればいいのか、自分の作った話が面白いのかなんてものもわからなくて」

 音乃は自分が悩んでいることを素直に言った。

「わかるよ、私達も最初そうだったもんね」

「ねー。そうだったよね」

 宮平先輩と石野先輩は顔を合わせてそう言った。

「先輩達もそうだったんですか?」

 あれほど漫画を描くことがうまい先輩達がそうとは思えなかった。

 漫画を描くということは、その時点でストーリー作成ができるということではないのか、と。

「最初は誰でもそうだよ」

「書いていて、こんな話恥ずかしいんじゃないかとか不安になったり」

「勝手にキャラの台詞を捏造したら、もう自分が書いた話は原作とは別物と思ったり、もしも書き上げても、いざそれを公開する時はやっぱりこんな話つまらなくないかなって思ったり」

 先輩達の言ってることは、まさに今の音乃の状態と同じだった。

「私も全く同じです! どうやったらそれを克服できるんですか?」

 音乃にとっては、それが自分には全くできないことなのだろう。

「そうだね……『私の作ったお話は絶対面白い!』って自信を持つことかな。最初から完璧な話を作ろうとするから躓くんであって、私の作る話は私にとっては面白いんだ、って思えば、自分は書いてて楽しいって気持ちになるから最後まで書き上げられるの」

 それはまるで自画自賛なのではないのか、と音乃は一瞬思った。

「誰かに見て欲しいとかじゃなくて、『私がこの話を見たいんだ!」ってことで自分が考えた話を形にするの。そうやって自信を持つことで最後まで書き上げられるんだ』

「だよね。誰かが褒めてくれるとかじゃなくて、自分で自分の作品を認めることが継続させる秘密だよね。そうやって書いたものが意外と名作になったりするよ」

 普段から漫画をよく描く先輩達の話だからこそ、その話は信ぴょう性が持てた。

「私が……自分で、自分の作品を認める……」

 二次創作は誰かに評価をもらいたくてするのではなく、自分が考えた話を形にした時点でも満足感が高いものだ。そのついでにウェブ公開することで、ファンの共感を得ることができる。

 あくまでも大切なのは「この話を自分が読んでみたい」と思うことなのだ。

「そうですよね。自分が自信を持たないと」 

 一度諦めかけたからこそ、音乃は再びやる気がわいたような気がした。

「私、もう少し頑張ってみます。自分も二次創作をやりたいから」

「うん、その調子だよ。音乃ちゃんの頑張る姿、応援するね」

 やはり先輩達は頼りになる。こうしてアドバイスをくれるのだから。


「そういえば、野々花ちゃん最近来ないね」

 石野先輩はふと、そう言った。

 音乃と衝突あってから、あれっきり野々花は部室にあまり来なくなった。

 週に一度は部活に顔出しをするというのが条件な規則の通り、確かに週に一回はここへ来るものの、活動報告に名前を書くだけですぐに帰ってしまう。

 音乃とあんなことがあって、なるべく音乃とは会いたくないのかもしれない。

 教室でなら二人とも別々の友人達と一緒にいることが多いが、部室だといつまた二人っきりになってしまうかわからない。うっかり音乃と話すということが嫌なのだろう。


 学校で先輩達に聞いたアドバイスを役立たせる為に、家に帰って自分の部屋で、音乃はまたもやパソコンを立ち上げた。

音乃は再び自分の中で燃え上がる気持ちが沸いて来たのを感じた。

「やっぱり、私も諦めたくない! ちゃんと自分が考えたお話を形にしたい! そしてそれをラミ丘ファンに見てもらいたい!」

 ここで諦めては、永遠にそういったファンとしての活動に参加できないような気がした。

 それならばここで踏ん張ってなんとかその壁を越えて見せようと。

「きっと私にしか書けないお話だってあるはずよね! それを他のファンにも楽しんでもらえるなら、凄く嬉しいことだよ! でもまずは自分が満足する話を書こう!」

 音乃はやはり、どんなに苦労があっても、やはり自分だけのストーリーを作り上げたいと強く思った。

「やっぱり、小説の書き方以外にも二次創作の作り方とかもよく調べてみなきゃ」

 音乃は、さっそくインターネットで調べ事をすることにした。

 今度は小説の書き方だけではなく、「二次創作の書き方」についてを検索した。

 すると、何件かのページがひっかかる。

「みんなでやろう! 二次創作への十の秘訣」というページだ。

 まさに二次創作について説明するサイトだった。

「こことか、二次創作の参考になるかも! よく読んでみよう」

 音乃そのページを上から下までよく目を通すことにした。

「二次創作を楽しむための十か条、と」


その1『二次創作は、書きたいものを書くこと』


「うーん、これはもう十分わかってることかな?」

 音乃は基礎中の基礎はすでに自分で理解しているつもりだった。

 そのままそのページを読み進めていく


 その2『すでに作られている世界観や設定、キャラクターの性格を動かす。』

その3『このキャラならこんなことを言いそうだな、とキャラの性格から台詞を考える。そこからその台詞を言わせるためのシチュエーションを考える』

その4『このキャラならこういう場面でこんな行動をとりそうだな、という想像をする』

その5『この世界観ならばこういった出来事があるかもしれない、という考察でイベントを考える。こんなシーンを書きたいなという願望を詰め込む』

その6『原作をよく見て、世界観を理解し、背景描写をイメージして書く。その世界観に会った描写にする』

その7『自分がキャラクターに言わせたい台詞を考えて、実際に書き起こす』

その8『大事なのは作品への愛! 自分がその作品の世界をどう表現したいのかを考える』

その9『とにかく自分が読んでみたい! と思うような自分の理想を叶えた作品を書く』

 音乃は一通りそのページを読んだ。

「こうやって作るんだ。なるほど。私に足りないのはこれかも」

 そして最後の部分に目を通す。

その10『大切なのは作品への愛、それをどう表現したいのか、キャラの性格からしてどんな台詞を言いそうか、あの世界観で起こりそうなエピソードを考える……とにかく自分の書きたいものを書く。アイディアが浮かんだら、それを最後まで書ききろう! と完走を目指す』


 そういった二次創作のやり方を見て、音乃は自分には足りないものを考えた。

「キャラクターの性格を理解して、このキャラならこんなこと言いそう、やこんな行動しそう、こんな場合はこうしそう、とそれを考える。それを組み込むことでできるのね」

 音乃は自分に足りなかった部分を見た気がした。

「私に足りないのはこれなんだ! そうか、キャラクターの性格で動かす必要があるんだ!」

 音乃にはまさに、こうすれば解決する、という方法を見つけたのだ。

「逆にいうと、すでに作られた世界観やキャラの設定や性格さえ分かっていれば、好きなキャラクターを動かせる楽しさもあるってことかな?」

 音乃は頭の中で欠けていたパズルのピースが埋まっていく感覚がした。

「やっぱり、諦められない。もう少し色々やってみよう!」

 音乃は再びパソコン画面に向かい、自分の書きたい話を考えてみる。

「まずはキャラクターにさせたいことやこんなシーンを入れたい、とか言わせたい台詞とかを考えてみなきゃ」

 音乃はそう言うと、テキストファイルに箇条書きでアイディアを打ち込んだ。


「あの世界観なら、きっとティータイムとかしそう。紅茶を飲みながら語り合うとか……」

「言わせたい台詞は『やっぱり親友だ」『俺はロシウスを守りたい」っと」


 二次創作はすでに作られている世界観に、「このキャラはこんなことを言いそうだ」「このキャラはこういう行動をしそうだ」という妄想から話を作るのだ。


「次はその台詞に合ったシチュエーションを考える、と。じゃあ魔物に襲われそうになったロシウスを守る、原作でいえば序盤であったシーンみたいなシチュエーションを考える、とか?」

「でも、それよりもこのテーマなら、旅に出る前の、2人の日常の一コマとして、ティータイムに必要なお菓子を作る為の果物を取りに行く場面にするとか。あえてバトルじゃなくてほのぼの日常話で。ロシウスは料理ができるって設定だったし、きっとこのお話も成り立つはず!」

ストーリーを作る時はどういう想いで考えるのか、それを描こうとするのか、などそういった描き手の妄想の世界も自分の中で見えたような気がする。

「じゃあ貴重な砂糖と果物で、ロシウスがアミエルにお菓子を作ってあげる話とか!」

 そしてシチュエーションを考える

「材料集めに苦労した分、ロシウスの自分を想う心に感動したアミエルがこれからもロシウスを守る決意をする、そしてロシウスもアミエルに対して「やっぱり親友だ」と言わせる」

 音乃は次々と考えた台詞に合う場面を書き起こす。

「できた! プロットはこんな感じかな! これをストーリーに書き起こせばいいんだ!」

 音乃は自分が書きたいストーリーが見えてきたことに、これを小説という形にすればいい、と考えがまとまった。

「よーし燃えてきたぞー!」

音乃はますますやる気に満ちてきた。


 翌日、学校の部室にて椅子に座り、音乃は思いついたアイディアをひたすらスマホのメモ機能に打ち込んでいた。

「音乃ちゃん、最近はどう? 小説の書き方とかわかってきた?」

 音乃のやる気に満ちた様子を見て、石野先輩はそう聞いて来た。

「今なんとかアイディアが浮かんできて、構想とかはできてきたんです。これをどうストーリーにするかを考えたので、全体の話の流れを作ろうと思ってるんです」

「じゃあ順調なんだね! それがまとまれば、執筆するのが楽しみだね!」

「はい! なんとしても私、書き手になろうと思います!」

 そして音乃は再びスマホにアイディア(メモを書き込んでいった。



 音乃は学校から帰って宿題を済ませた後が執筆の時間だった。

「このシーンは、こうして……ここは果物を取りに行く森だから、背景描写はこうして、そこへロシウスのピンチにアミエルが現れて……」

パソコンに向かって、少しずつ書きたい場面、展開をメモに書き起こしていく。

「よし、今日はここまでかな!」

 一度に長文を書き起こそうとすると、辛くなって挫折するであろうことを考えて、あくまでも初めは少しずつ、少しずつの文字数で形にしていき、今日のアイディアと頭の中で考えた文章にしていく。

「続きは明日。もしかしたら明日にはもっといい文章が思いつくかも!」

 そして、音乃は今日の作業を終え、ベッドに入り眠りについた。


そして音乃は毎日毎日と執筆を続けた。

そうしているうちに、アイディアやストーリーがまとまり、残すは本編執筆だ。

そしてそれらが全て完成した日、それをウェブ上にアップすれば、いよいよ音乃の字書きデビューのスタートラインが始まる。


「よーし、今日はとうとう本編の執筆にいってみよー!」

 今日は朝からずっとそのことでわくわくしていた。

 いよいよ自分の考えたストーリーが本当に小説として書けるのが楽しみだったのだ。

 学校から家に帰って宿題などやるべきことを済ませた後、自室にて音乃はパソコンを立ち上げた。ようやく今日は本編が書ける! と興奮していた。

 音乃は次々とプロットを小説として書き起こし始めた。

「描写は、頭の中で描きたい場面をイメージして、それを文章に書き起こす」 

 まずは台詞と共に、キャラの行動を文章に表す。


『僕はいつもアミエルに助けてもらうばかりだ。何かアミエルに感謝を伝えられないだろうか』

『アミエルは甘い菓子が好きなはずだ。じゃあ僕がアミエルの好きな洋ナシパイを作るんだ』

 そうやってあらかじめ考えておいた台詞を書き出し、次はストーリー進行の描写だ。


「ロシウスは果物を採取しようと、さっそく農園へ行くことにした」

 こうして前半の流れを文章として小説に書き上げていく。

「よかった、私、ちゃんと小説にできてる」

 小説を書くのは初めてだが、書きたい場面と台詞をイメージすれば、自然と文章にできた。

「よし、今日はここまで! 大体前半の流れはできた!」

文章を書くというのは時間がかかるために、音乃は一日にちょっとずつ、ちょっとずつ、本編を描き起こしていった。

 

 音乃は数日かけて、ようやく小説本編の約半分をを書くことができた。


「ロシウスは採取してきた洋ナシを切るとと、それを砂糖で煮込み始めた。鍋の中では洋ナシがぐつぐつと煮あがっていた、それをパイ生地を敷いた型に敷き詰める」

もちろん、このシーンを書くために、音乃は洋ナシのパイの作り方をネットで調べておいた。


『できた! よしアミエルを呼んでこよう!』

「卓上には焼きたての洋ナシのパイが並び、それはホカホカと湯気を立てていた。辺りには甘い香りが漂っている。もちろんアミエルの好きな葉で紅茶を煎れる」

『冷めないうちに焼きたてを食べてもらわなくちゃ。アミエル、なんて言うかな』


 後半のストーリーも順調に進んでいった。

 自分の思い描いた世界がどんどん形になっていく、文字にしたことで目に見えるストーリーになっていくのだ。

「もう少しで一番大事なシーンだ。ここから先が一番の重要なところ! 私が読みたい話ができあがるんだ……それまで頑張らなきゃ」

書けば書くほど、自分が読みたい話がどんどん形になっていくことが快感でたまらなかった。

大切なのは挫折せず、最後まで書ききること、完走することだ。

「頑張れ私、もう少しで私の理想のお話が出来上がる……!」

 音乃は自分に言い聞かせ、次々を文章を書いていった。

 書けば書くほど、自分が読みたい話がどんどん形になっていくことが快感でたまらなかった。


 そんな数日間が続いても、日常生活も生き生きとしている、

 音乃は学校へ行っている間も、自分の作品が完成することが楽しみでたまらなかった。

 その高揚感もあるために、脳がハキハキとして、授業もいつもより集中できた。

 なにせ家に帰れば、自分の読みたい話がもう少しで完成する、という楽しみがあるからだ。

 

 そして、数日かけて、とうとう今日はラストシーンを書く時だ。

 この日は学校から家に帰るのが楽しみで仕方なかった。

 宿題をやっている間も、早く小説に手を付けたいという思いから頑張って片付けた。

 そして、ようやく宿題を終え、パソコンを立ち上げると、いよいよだ。

「今日書くのが一番大事なシーン! ここは渾身の力で書かなきゃ!」


『今日はアミエルの好物の洋ナシのパイを作ったんだ』

「アミエルはさっそくフォークで一口食べた。そして『美味しい』と呟いた」

『ロシウス、ありがとう。わざわざ俺の為に。このパイの味は忘れない』

『アミエルこそ、いつも僕を守ってくれてありがとう! ほら、もっと食べて!』

「ロシウスの気持ちが伝わり、こうして二人の友情はますます深くなったのであった」

こういった台詞と描写を事細かに書いていく、小説として出来上がっていく。


 音乃は最後の文章をキーボードで打ち込み終わると、その小説はついに完成した。

「で、できた!」

数日かかった上でこの日、音乃はついに小説を完成させのだ。

「よくやった私! とうとう自分の作品を書き上げたんだ! ちゃんとお話しを形にできた!」

 時間はかかったものの、自分で考えたストーリーが小説として形となったのだ。

「はああ……これが私が作った小説なんだ……私、小説が書けたんだ……!」

時間がかかった分、自分が作ったものが完成したことで、一気に物事をやり遂げた達成感に、ようやく数日かかった執筆が終わった解放感が身を包み込む。

「よく読んで推敲しなきゃ。誤字とか、表現がおかしくないかとかちゃんと背景描写ができているかとか、そしたらいよいよピクシブにアップだね!」

 音乃は何度も自分が書いた小説を読み返した。

「でも、今日はもう寝なくっちゃ。明日、これでいいならようやくアップできる!」

 作品とは書き上げたらすぐにネットにアップロードする前に、一度寝かせた方がいいのだ。

時間を置いてから再び推敲することで、よりよい仕上がりになるのである。

じっくり休息を取った上でチェックすることが大事なのである。

 音乃は原稿をUSBメモリに保存し、パソコンをシャットダウンして就寝した。


 翌日の部活にて、音乃は早速先輩達に小説を完成させたことを言った。

「私、ようやく小説が完成させられたんです! 初めてアミロシの二次創作が書けました!」

 昨日の達成感をいち早く誰かに伝えたい。元々小説を書くことを勧めてくれたのは先輩だったのだから、それはぜひ報告したかった。

「完成させられたんだ! おめでとう! これで音乃ちゃんも書き手デビューだね!」

 すでに創作活動をしている宮平先輩にそう言われると、自分も書き手になれたと認められたようで嬉しかった。

宮平先輩もまた、音乃が目標を達成できたことを祝福してくれたのだ。

「今日帰ったら、さっそくピクシブにアップしようと思います!」

「うん。もしよかったら私にも見せてね。書き手デビューの一作目、アップ作業頑張ってね!」

 ここまでできたのは先輩達のおかげである。音乃にとって感謝しても足りない。

その日はもう、今日が初めて自分の作品をネット上に初めてアップロードするということが楽しみで、浮足立っていた。ようやく、自分の作品を公開できる、と。


家に帰り、夕飯や風呂に宿題をすませたところで、いよいよここからが本番である。

 音乃は完成した小説をよく推敲したのちに、さっそくピクシブにアップロードしようとした。

 おそるおそるピクシブのの投稿画面を開く。

「ひゃー! これが作品投稿画面かあー! 初めて見る」

投稿画面はタイトル、本文、キャプション、タグ、公開範囲といった画面だった。

初めて見る投稿画面というものに、書き手の人々はいつもこういった場所からアップロードするのか、と何か感動した。自分もこの画面を見ているということはとうとうそれになれるのだと。つまり、書き手の人々と同じ場所に立ったということなのだ。

「タイトルは『親友の形』キャプションは『ロシウスがアミエルの為にお菓子を作って一緒にと茶会をするお話』っと」

音乃はさっそくタイトルを入れ、書き起こした本文をのせ、キャプションを入れた。

「タグはラミレスの丘。アミロシ……って感じかな? 年齢制限はなし、と」

 音乃は最後に本文とキャプションといったものを読み返し、最終確認をする。

そしていよいよ最後はアップロードのクリックになる。

「ひゃー! 緊張する! 初めての投稿だあー」

 音乃はドキドキしていた。とうとうこの瞬間が来たのだと。

「このボタンを押したら、私の作品がネット公開になるんだね……落ち着け…落ち着け…私!」

 音乃は初めてのアップロードに緊張が収まらなかった。

 これで自分は初めて二次創作の書き手にデビューできるのだと。

「よし、決心はできた! 行くぞ私!」

 音乃は覚悟を決めてアップロードボタンをクリックした。

すると「作品が投稿されました!」という画面が表示される。

「やったああ! 私の小説、これでピクシブに公開されたんだ!」

 音乃が二次創作の書き手になれた瞬間だ。これで音乃は二次創作を「書く側」になれたのだ。

「これでもう後には引けない……! さっそくアップされた画面を見てみなきゃ」

 音乃は自分のホーム画面からダッシュボードを見た。そののちに、「アミロシ」で検索すると、そこにはしっかりと自分の作品が画面上に表示されていた。

「ちゃんと私の書いた小説がアップロードされてるー! 凄い、今までは他の人が書いた小説を見るだけだった画面に、私の書いた小説がしっかり同じ形式にアップされてる!」

 音乃は本当に自分が作った小説をピクシブにのせることができたのだと、感動した。

 今まではただ見るだけで憧れでしかなかった「書き手」という世界に、自分が足を踏み込んだと思うと、まるでこれまでと違う世界への扉が開かれたかのような気分だった。

「偉かった私、ちゃんと目標達成したんだから、今日はもう寝なきゃ」

 音乃は数日かかってでもやりたかった目的を果たした、といわんばかりに幸せな気持ちで眠りにつくことにした。

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