第5話 SNSという世界を知った

学校での昼休み、音乃は綾香と弁当を食べていた。

そして部活の話をしたりする。

「部活の先輩達ね、みんなラミ丘について熱いトークで語り合ってくれるの。それ以外のオススメのアニメとかも教えてくれるし、本当に漫研に入ってよかった!」

「音乃、よかったね。部活楽しいみたいで。やっぱラミ丘についても語れる場所があるっていいでしょ?」

「うん。今、とっても楽しいよ」

 大好きなアニメについて同じ学校の生徒と語り合う楽しさ、これはまさに青春だ。

「ああー、もっとラミ丘について語りたいなあ。他のラミ丘ファンの感想も聞きたい」

 学校でこうして友人と話すだけでも楽しいのだが、ラミ丘は雑誌などでの特集記事の多さや推し方を見る限り、とても大人気できっと全国にはもっと大勢のファンがいるのだろう。

「もう、全国のラミ丘ファンとお友達になりたい気分だよ!」

 音乃はそのくらいにラミ丘についてのことを色々やりたくなった。

 友人や先輩とラミ丘について語るだけでもかなり楽しいが、もっとその快感を味わいたいと。

 そこで、綾香はある案を出した。

「音乃、じゃあツイッターを始めたら」

 綾香が口にしたのはそんな単語だった。

「ツイッターってよく見るソーシャルネットサービスってやつ?」

 いわゆる現代においては大勢の人々が利用するSNSというものだ。

 インターネット上で情報を発信し、共有するというものだ。

 現代の若者のSNSをしている者も多いという。それだけ普及してるツールだ。

「ツイッターって面白いの?」

もちろんテレビでよく聞く有名なツールなので音乃はツイッターの存在は知っていたが、それを実際に使ったことはなかった。

 中学時代はそういったSNSというものに友人には誘われたものの、その頃はインターネットは必要最低限の情報が見れればいいということで音乃は連絡手段であるLINE以外のSNSには興味がなかった。

「うんそう、SNSってやつ。ツイッターはただの日記じゃなくて、アニメ好きや漫画が大好きな人達と友達になれるの。フォローしたり、フォローバックされたりで新しい関係ができたりね。そうすれば趣味が近い人、つまり同じアニメが好きな人とも交友することができるんだ」

「へー。そうなんだ」

 いまいち実感が湧かないが、それだけを聞くと楽しそうに思える

「あたしもやってるよ。アニメが好きな人もいっぱいいて、全国のアニメファンと繋がることができるの。」

「綾香もやってるんだ」

 綾香は実際に自分のスマホら音乃にツイッターの画面を見せた。

「こんな風に自分のアカウントを作って、趣味が近い人とかをフォローすれば、タイムラインで一斉に140文字以内の日記や情報がみれるの」

 綾香はそういって自分のタイムラインを見せた。画面では流れるように次々と他のアカウントがツイートした文章が表示される。

 その文章内容は現在やっているリアルタイムな日記だったり、アニメの公式アカウントから最新情報が流れたりしている。

「へえー、こうやってリアルタイムでいろんな人のつぶやきが見れるんだあ。楽しそう」

 音乃は今まで使い方はよく知らなかったこのツールに興味津々だった。

「これで、どうやればラミ丘好きな人と仲良くなれるの?」

「ツイッター上にはラミ丘好きな人もいっぱいいるからプロフィール欄で好きなアニメがかぶってる人とか、そういう人をフォローするの。そうすれば、その人のツイートがタイムラインで流れてくるんだ。毎日のようにラミ丘関連のツイートも、ラミ丘への感想や語りが見れるの」

「毎日、ラミ丘の感想や語り……」

「そうそう。アニメ好きな人達とも交流ができて、住んでる場所が遠い人とも仲良くなれるの!」

 音乃にとってはインターネット上に自分のアカウントやホームページを持った経験がない。

 それゆえに好きな趣味の話題はあくまでもリアルにおいての友人との会話のみだ。

 しかしインターネット上ならば自分の周りだけではなく、全国のアニメファンの語りが見れるということだ。もちろんラミ丘ファンとも。音乃はそのことに凄く惹かれた。

「面白そう! やってみたい! ラミ丘について語れるんでしょ!?」

 音乃は新しいものを見つけたかのように目をキラキラさせた。そんな経験ならしてみたい。

「綾香、アカウントの作り方教えて!」

 さっそく音乃はツイッターを始める気が満々だった。


その夜、無事にツイッターのアカウント作成ができた。

音乃はベッドに寝転がりながら、スマートフォンでツイッター画面を眺めていた。

アカウント名を本名の音乃のもじりで「乙姫」にし、プロフィール欄にばっちりと「ラミ丘が好きです!」と入力した。

 しかし音乃のアカウントはまだフォロー数もフォロワー数もゼロだ。

「綾香が言うには、まずはラミ丘を好きな人をフォローすればいいんだね」

 まずは自分から動かねばフォロワーは増えないとのことだ。

 

 最初にやったことは、まずは初めのツイートだ。

 音乃はツイート欄に「ツイッター初心者です。「ラミレスの丘」が大好きなのでツイッターを始めました」とツイートした。

 そしてまずは「ラミレスの丘公式」というラミ丘の公式アカウントをフォローする。

 すると、タイムラインにはラミ丘の予告など最新情報が流れた。

「こうすると、いつでもリアルタイムでラミ丘の新しい情報が見れるんだね」

 常の最新の情報をキャッチできるという意味ではツイッターは便利だ。

 そして音乃は次に、ラミ丘1、2話の感想をツイートする。


「1話のロシウスの戦闘シーンもかっこよかった」

「2話のアミエル登場の場面が凄くキュンとした」

「原作のあのシーンをどうやって表現するのか楽しみ」

 といったツイートを流す。

「これで、私のラミ丘愛のツイートはOKかな」

 音乃は次々とラミ丘についての語りをツイートした。

「ん?」

 すると数分後、通知アイコンに数字が表示された。何やら通知が来たようだ。

 初めての通知ということに、音乃はどんな反応があったのかとわくわくしながら開いた。

「初めまして! ラミ丘1話のあのシーンいいですよね! 共通の感想を持つ方を見つけられてテンション上がりました! フォローさせていただきました。よろしくお願いします」

 なんと初めてのリプライが付いたのだ。しかもフォローまでしてくれたと。

「やった! 私のツイートに返信してくれる人がいた!」

 自分のツイートがネット上に流れ、それを読んでくれてなおかつ返信がもらえたことが嬉しかった。さらにフォローまでされたのだ。

 自分の語りが自分の中だけではなく、外に公開してそれについて返信をしてくれた人がいる。

 つまり、音乃のラミ丘愛が知人以外の誰かに認められたような気がした。自分のラミ丘への愛はこうして同士がいるのだと。

「もっとラミ丘好きな人を探さなきゃ!」

ツイッターの検索欄から「ラミレスの丘」もしくは「ラミ丘」と入力してラミ丘についてのツイートをしている人を探し出す。

さっそく引っかかったツイートからラミ丘を好きとプロフィールに書いている人々を次々フォローした。

 すると、すでに何人かがフォローを返してきた。

 中には丁寧に「初めまして! ラミ丘好き同士よろしくお願いします!」と挨拶のリプライをつけてくる人もいた。

「そうだ、私もフォローの際にはちゃんと挨拶しなきゃ!」

 そして音乃はフォローする際には「よろしくお願いします」などのリプライをつけることにした。

 そうしている間に、フォロワーは順調に増えていき、この時点で三十人のフォロワーができていた。

「さっそくラミ丘ファンと繋がっちゃったー」

音乃は初めてのSNSの快感が楽しくてたまらなかった。


そしてラミレスの丘アニメの放送日。

来るラミ丘の放送中の時間帯にはツイッターで同じくその時間にアニメ本編の視聴をしているフォロワー達が「ラミ丘」のハッシュタグをつけてリアルタイムで実況ツイートを流す。

 まるで自分一人でアニメを見ているわけではなく、同じ時間にファンがリアルタイムで楽しんでいると、その一体感が面白かった。


その日から音乃のタイムラインはひたすらラミ丘関連のツイートが流れた。

 最新話が放送される度に翌日には感想ツイートが流れ、ラミ丘同士の語りが流れ、公式アカウントからは次々と新情報が流れる。

「ツイッターって楽しいなあ」

 音乃は新しい趣味を見つけたことで、ますます楽しくなった

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