第2話 面白いアニメ見つけちゃった
「綾香! 私ね、昨日の夜、すっごいアニメみちゃった!」
音乃は昨晩の興奮を翌日、学校にてさっそく綾香に話した。
「ああ、ラミ丘ね。昨日放送されたっていうと」
「え、綾香知ってるの!?」
音乃は昨日初めて知ったアニメだが、綾香がすでにそのタイトルを知っていたことが衝撃的だった。「ラミレスの丘」の略称は「ラミ丘」らしい。
「あたし、原作の漫画から読んでるよー。アニメ化ってことで楽しみにしてた。そっか、音乃も昨日のアニメ観てたんだ。あたしも記念すべき一話だったからリアタイしちゃったな」
「綾香も!?」
自分だけではなく、綾香もあんな遅くまで起きていたさらにリアルタイム視聴をしていたとは驚きだった。
そして原作、というものが気になった。
「原作って面白い? 漫画だとどんな感じ?」
音乃はあの凄いクオリティのアニメが原作だとどのような漫画なのかが気になった。
「んー、アニメの絵とはちょっと違うけれど、登場キャラがすっごく魅力的なの。台詞もセンスあるし、漫画でありながら戦闘シーンがものすごく迫力あって。アニメの映像もいいけど、原作は静止画ならではの味わいがあるって感じ」
アニメであのクオリティなら、原作だとどのような感じで表現されているのか。
綾香の話を聞けば聞くほど、音乃は興味が沸いた
「えー、読んでみたいなあ」
音乃はラミ丘の原作が気になった。
「今度コミックス貸してあげよっか?」
「ホント!?」
すっかり夢中になってしまった「ラミ丘」のコミックスを読めばさらにあの世界を理解できるかもしれない。
何より、綾香の言うようなそんなに面白い漫画ならではの面白さというものが気になった。
「うん、貸して!」
「じゃあ、明日持ってくるから」
翌日、綾香は大きな手提げ袋をひっさげて、さっそく学校にコミックスを持ってきてそれを音乃に貸してくれた。
「はい、これが今出てる分までね。1巻から9巻まで」
現在発売されているのは9巻までであり、これならばすぐに読める長さだ。
そこまで巻数が多すぎでもなく、かといって少なすぎでもない。
まさにちょうどいい長さだ。
「ありがとう! 帰ったらさっそく読んでみるね!」
綾香にコミックスを借りると、家に帰ったらすぐにその原作コミックスを読み始めた。
「どんな感じなのかな、ワクワク」
音乃はそう言って、1巻のページを開く。
一話目はアニメと同じく、ロシウスの旅立ちのシーンだった。
アニメと同じ内容のストーリーが迫力ある絵柄に、バトルシーンを大ゴマで見せる演出やキャラの動きが静止画ながらもよく表現されている。
「原作だとあのシーンがこんな感じなんだー」
原作はアニメとは多少絵柄が違うものの、アニメの映像と静止画というメディアの違いで
アニメ一話の部分が原作ではまた違う形で面白かった。
アニメと漫画、その媒体は違うものの、どちらもその違いを楽しめた。
音乃はあっという間に「ラミ丘」のコミックスを全て読み終えてしまった。
アニメは再生しなければ視聴できないが、漫画はページを自分のペースで読むために、一瞬で読むことができるからだ。
大雑把にいえば、ラミレスの丘という漫画は主人公であるロシウスが世界を巡り、大人になる証を授かる「ラミレスの丘」と呼ばれる場所を目指す話だ。
RPGのような冒険ものであり、ストーリーを追うと面白い。
最新刊である8巻まで読み終えると、続きはとうとう現在の連載分になる。
ということは続きはコミックスが発売されるまで数か月はかかるということだ。
「この続きは雑誌でかー」
最新刊である、9巻は気になるところで次巻に続きになっているために、どうしてもその続きが読みたかった。次はどんな話になるのかと。
奥付を見ると、掲載雑誌は月刊少年フライデーという雑誌だと知る。
「月刊少年フライデー、あの雑誌で連載してるんだあ」
ラミ丘が連載している雑誌の名前を知った。
有名な漫画雑誌だが音乃は雑誌名を知りつつも読んだことはなかったのである。
「ああ、早く続きが読みたい! でもしばらくはアニメで楽しめる!」
漫画で続きを読めないのであれば、当分アニメを楽しむまでだ。
翌日、昨日綾香渡してきた手提げ袋を持って、学校に登校すると、さっそく綾香にラミ丘のコミックスを全て返した。
「ありがとう、すっごく面白かった」
「もう読んじゃったの? もう少し貸しててもいいんだよ? じっくり読んでほしいし」
この早さで読んでしまったのならまだストーリーを把握してないのではないか、と綾香は思った。ちゃんとじっくり読んでほしいと。
「ううん、あんまりにも気に入っちゃったから私もコミックス買うことにしたの!」
家でずっといつでも読めるようにしたいと思い、音乃はコミックスを全巻買いそろえる決意をしたのだ。
数百円の漫画を9冊となれば、高校生にとってはそこそこの金額であるが、音乃はどうしてもラミ丘のコミックスを手元に置いておきたかった。
「ふうん、じゃあ布教成功かな」
綾香が謎の単語を発する。
「なあに、布教って?」
「好きな漫画を人に貸して、その人もその作品を好きにさせることだよ」
「そんな用語があったんだ」
「他にも漫画にはまったことを「沼」って言い方もあるよ。なんの漫画に沼ったとか。はまったら沼に落ちたように抜け出せないって意味で。音乃の場合は「ラミ丘沼」に落ちたんだね」
初めて聞いたオタク用語に、音乃は今まで知らなかった用語を知った気分だった。
音乃はすっかり「ラミ丘」に夢中になってしまった。
翌週、今日は「ラミ丘」第二話の放送日だ。
先週に続いて、音乃はリアルタイムで視聴したいがために、この日も夜遅くまで起きていて放送時間にテレビの前で待機した。
「もうコミックスで先の内容を知ってるけど、次はあのキャラが登場かな!?」
音乃はそう思いつつも放送開始時間を待ち遠しくした。
そしていよいよ放送時間だ。
まずはオープニングなしのアバンタイトルから始まった。
ロシウスが敵に囲まれたピンチのシーンであるキャラが現れる。
「やれやれ、こんな雑魚相手に苦戦しているようではお前はまだまだだな」
ロシウスのピンチに表れたのは金髪の青年。衣装は銀の胸当てにくさりかたびら、緑の瞳を持った、こちらはロシウスと変わってクール系な印象のキャラだ。
「キャー! アミエル様が出たあー!」
音乃はそのキャラが登場すると、テレビの前ではしゃいでしまった。
原作をすでに読んでいて音乃はもちろんこのキャラを知っていた。
ロシウスより少し年上の、先に旅に出ていたアミエルというキャラだ。ロシウスとは年齢が違うものの、先に旅立っていた分先輩であり、ロシウスのことは幼少期から知っていてライバル視してているという設定だ。
アミエルが登場したところでオープニング映像に切り替わる。
原作を読んだ上で見るオープニング映像はそこに登場するどのキャラも知ってるキャラばかりだ。
「エリスとウィンコス司令が出るのはいつかなあ」
オープニング映像に次々と映し出されるキャラ達はすでにどのキャラもどんな人物か知っているキャラばかりだ。このキャラはいつアニメ二登場するのかというのも楽しみだ、
オープニングののちに、コマーシャルが明け、再び本編が始まる。
アバンタイトルのロシウスのピンチに助っ人として表れたアミエルがロシウスと共に戦うのだ。
漫画だけで先に知ったアミエルと、アニメでみるアミエルとはなんだか違う。
音乃はその時、漫画とは違う感想を抱いた。漫画は白黒の静止画だが、アニメという媒体はフルカラーでキャラクターに色がついており、声で実際に台詞を聞くことができる、その上に動くのだ。そのために、漫画のキャラが動いたら、声を出してしゃべったらというリアリティを味わうことができる。
ラミ丘2話は主人公ロシウスの先輩でありながらライバルであるアミエルがメインの回だった。
「やだ、アミエルもかっこいい!」
音乃は主人公であるロシウスが推しキャラだったはずだが、共にアミエルも好きになってしまった。
1話では最後にオープニング方式だった為にエンディングがなかったが、今回は初のエンディング映像だ。エンディング映像はオープニングが激しい動きなのに対して緩やかな曲と、ゆるやかに歩くキャラの絵が表示される映像だった。
オープニングはこれからアニメを見る! という演出のかっこいい派手な曲に対し、エンディングは終わったことを実感するバラードだ。
「エンディング曲は癒されるわー」
音乃はオープニングだけでなく、エンディングも気に入った。
この日もラミストの放送中は時間を忘れてしまうように、30分があっという間だった。
それだけ夢中になって視聴していたということになる。
こんなにも時間が吹き飛ぶように速く流れたことは初めてだ。
「ああー、もう、次回も楽しみ!」
音乃にとっては毎週のこの時間が楽しみになった。
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