第2話 テレビ前


Sさんの家のテレビ前には、物を置ける少しばかりのスペースがある。

そこには、愛らしい小さなキャラクターフィギュアが6体並べられていた。

「これ、動くんですよね」

「動く?」

「テレビに背を向ける形で正面向きに、全部そうしてたんですけど。気付くと全部、綺麗に後ろを向いてるんです。みんなテレビを見てるみたいな状態になるんですよ」

「それ、Sさんが動かしてるんじゃないの?」

「飾ってるものわざわざ動かしません。それに無意識に動かしたとして、綺麗に6体同じ方向向かせるとか出来ませんよ。まあ、テレビとかDVDプレーヤーの振動とかちゃんと理由はあると思うんですけど」

他に飾ってるフィギュアや物は一切動かないんですよね。


あまり繰り返すのでとうとう戻すのを億劫がり、今でも6体のそのフィギュアは綺麗にテレビを見る形で並んでいる。


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