海賊と悪巧み

「遂に踏み込んで来たなぁ」


ルーメンは自身の執務室でそう呟く。


「何故俺を出さない、ルーメン」


ソファに座っている眼帯をした男が機械的な音を腕から鳴らしてそう言うとルーメンはその男の方を向いて言う。


「アルマはん、あんさんは出す訳にはいかへんのよ」


それを聞いて男は首を傾げながら腕から響く音を止める。


「理由を聞こう」


アルマは組んでいた足を下ろし姿勢を正す。


「"最強""無敵"と並ぶアルマはんにはあまり、表に出て欲しくなくてなぁ」


それを聞くとアルマは面倒くさそうに言う


「また、諜報か?」


「まぁ……そんなとこや」ルーメンは苦笑いしながらそう言う。


すると、そのタイミングで通信が入る。


《こちら、ユーティア》 《現在、第三区画にて例の液体による襲撃を確認。保安部の被害甚大!》 それを聞いてルーメンは一瞬眉をひそめるがすぐに口を歪めて笑う。そして通信を聞いて不機嫌な顔をするアルマに向かって言う。


「安心して下さんな、最高司令官はんもこの気を逃すなと」


「はぁ……面倒だが仕方がない、俺が行こう」


アルマはそう言うとソファから立ち上がり扉に向かって歩き始める。するとルーメンはまた何か思いついたように彼を呼び止める。


「ちょい待ち、あと一つだけお節介させてもらおか?」


それを聞いたアルマは少し口角を上げながら答える。


「聞こうか」


それを見たルーメンは満足気に頷く。


「ヤツらの首に鈴を着けるんや」


━━━━━━━━━━━━━━━


「ピーラータ……どうやってここに来たッ!?」


ユビキタスがそう言うとピーラータは海賊帽を震わせて笑う。


「俺だけじゃねェぜ?」


「何を……?ッ!?」


周囲の気温が下がっているように感じ、不審に思ったヴェティが下を見ると足元が凍り付いていた。


「この能力は……グラキエス」


ユビキタスがそう呟くとヴェティはカットラスの攻撃を数回受け流しながら叫ぶ


「ユビキタス!ゼノ!見てないで手伝えッ!!」


「ゼノ、お前はタイミングを見て『バインド』で拘束しろ、出来るか?」


ユビキタスはゼノの肩に手を置いてそう指示をする。


「わ、分かりました!」


ユビキタスは真剣な眼差しで頷くと、ピーラータを凄まじいスピードで殴り飛ばす。


「遅いぞ……」


「悪い、だが本当にヤバイのはこれからだな」


すると、ガコンという音と共に他のエレベーターが止まり扉が開くとそこにはいくつかの人影が見えた。


「液体眷属の軍団か……」


「ちゃっかり武装してやがるしな、ゲル……いや、スライム兵と言った所か?」


ヴェティは足元の氷をナイフで砕くと、再び戦闘態勢に入る。


「ひでぇな……ユビキタスいきなり殴り飛ばすとは」


ピーラータはへし折れたカットラスを捨てながら言う。


「お前にはこうした方が話すよりも効くだろ?」


ユビキタスがそう言うと同時に数体のスライム兵が彼らを取り囲むように襲いかかる。


「めんどくせぇ奴等だッ!」


ヴェティがスライム兵の腕を掴んだかと思うと凄まじいスピードで投げ飛ばし、覆いかぶさり倒れた所に二本のナイフで飛びかかり、滅多斬りにする。


「やるな、ヴェティ」


ユビキタスも重力を操作して一斉にスライム兵を浮かせてから強大な重力で叩きつけて床のシミにしてしまう。


「ぼ、僕もッ!『バインド』!!」


ゼノの手から射出された綱状のエネルギーは数体のスライム兵をまとめて拘束する。


「良くやった!」


ヴェティがそう言うと一気にスライム兵を切り伏せる。


その刹那、スライム兵の間からプリントロックピストルを構えたピーラータが笑顔で現れる。


「チッ……ッ!?」


ピーラータはヴェティに向かって数発の弾丸を撃ち込む。


「『反転重力』ッ!!」


ユビキタスが叫ぶと同時に放たれた銃弾が跳ね返る様に戻って来て、ピーラータの腹を貫く。


「ごふッ……」


「『重力壁』」ユビキタスは静かに能力を唱えて、ピーラータを『門』の厚い扉へと吹き飛ばす。


「ガッ!!?」


ピーラータは扉にぶつかり鈍い音を立ててその場に倒れ込む。


「後はグラキエス、どこだ……?」


ヴェティが周囲を探す中、ユビキタスはなにかに気づくとピーラータの倒れている方へと歩みを進めて行く。


「狡猾な奴だ、ここにグラキエスは居ない、そうだろ?」


ユビキタスがそう言うと倒れたはずのピーラータが笑いながら立ち上がろうとする。


「その通りだぜ?うおっ……怖ェ」


ユビキタスは無数の尖った瓦礫を宙に浮かせてピーラータに向けていた。


「どうして分かったァ……?天才君」


「簡単だ、壁に走る冷却剤のパイプを損傷させてヴェティを冷却剤の水溜まりへ誘導し、凍らせた」


ピーラータは拍手しながら笑い出す。


「流石、ユビキタス!ご名答だぜ!!」


「さぁ、大人しく捕まって貰おうか」


ユビキタスがそう言うと彼は首を降る。


「だが、俺の方が一枚上手だったなァ?」


ピーラータが新しいカットラスを背後の分厚い扉に突き刺すとミシミシという音を立てた束の間崩れ落ちる。

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