火蓋
ゼノがユビキタスとオフィスでお茶を飲みながら話している時に警報が鳴り響く。
「うわっ!?なんですかッ!?あっっつつ!!」
ゼノは驚きのあまりお茶を膝にこぼしてしまった、それを横目にユビキタスは冷静に端末を操作して情報を確認する。
「クソ……フォルスが脱走した」
「えぇぇえええええ!!」
ユビキタスは勢い良く立ち上がると同時にヴェティが勢い良く扉を開ける。
「ユビキタス!」
「ああ、ゼノお前もだ」
ゼノは席を立ってユビキタスと共にヴェティの後を追う。
「状況は?」
そう尋ねるユビキタスにヴェティが答える。
「突然収容区画内の電源が落ちて、昇降機も動かないみたいだ」
「件のゲル能力か?」
それを聞いてゼノは天を仰ぐ。
(どうしよ……めっちゃ怖い)
「ところで、ゼノ」
「はい?」
ヴェティがなんとも言えない表情でゼノに聞く。
「漏らしたなら、先に着替えても良いんだぞ……?」
「漏らしてませんから!!!!」
ゼノの悲痛の叫びがフロアにこだまする。
「とりあえず、『門』に降りるぞ」
ユビキタスはそう言うと昇降機へ続く通路を走って行く、ゼノとヴェティもそれに続く。
全員が乗り込むと同時にエレベーターは勢いよく下へと下がっていく。
「看守の皆さんは大丈夫ですかね……」
ふとゼノの口から不安の言葉が溢れ出す。
「目的がフォルスの解放だけなら、心配はない。ただ……」
「ただ……?」
ユビキタスはそこで言葉を切り、下へと降りて行くエレベーターの階層表示がガタンという音と衝撃と共に止まる。
(凄い嫌な予感がする……)
「閉じ込められたか、まずいな」
ヴェティがそう言うと同時に何かが天井から滴り落ちる。
(うわっ……何?)
ゼノが天井から落ちてきた液状の物をジッと見ていると、それが動いた事に気づく。
(コレは……あの時の!?)
「ヴェティさん!これ!」
床でモゾモゾ動くソレをヴェティに見せようとすると間髪入れずそれをユビキタスが踏み潰す。
「わっ!?」
しかし、叩き潰された液体はうぞうぞと動いていて不気味だ。ユビキタスはそれを見て口を開く。
「『門』の所までもう来てやがるのか……下がってろ」
ユビキタスがそう言うと同時にエレベーターの扉を能力でこじ開ける。
その瞬間、スライム塊がエレベーター無いに一斉に侵入しようとするが
「『重力壁』」
とユビキタスが唱えると同時に見えない壁によってスライムが塞き止められる。
「危ねぇ……窒息死させる勢いだったぞ」
ヴェティはその光景を見て冷や汗をかきながら言う。
「ユビキタス、まずはスライムを封じ込めてくれ」
ヴェティがそう言うとユビキタスが能力で強引に扉を閉める。その時だった、エレベーターシャフト内に鈍い音が響き渡り、エレベーターが大きく揺れる。
「全員手すりに捕まって姿勢を低くしろッ!!」
ユビキタスがそう言うと同時に再びエレベーターは大きく揺れる。
(壁と天井に張り付いて移動している?)
「おい!ユビキタス!こいつは俺たちを撒き餌にしようとしているぞ」
ヴェティの言葉にゼノは驚いて聞き直す。
「撒き餌って……!?」
「俺らの救助に時間を割かせるつもりだ」ユビキタスがそう言うと、バチンという音と共にエレベーターが急降下を始める。
「うあああああ!!!落ちてます!落ちてますよね!?」
「『反転重力』」ユビキタスはそう呟いてエレベーターシャフトに『反転重力』を出現させ、その力を徐々に上げ使いエレベーターを落ち切る前にしなやかに減速させつつ停止した。
(た、助かったぁ~……)
「ふぅ……精密な動作は苦手だ」
ユビキタスはそう言うとため息を吐いて立ち上がる。
「門の前室付近に停まったはずだ、開けるぞ」
能力を使って再び扉をこじ開けると少しズレていたが門の前室が見えた。
そして扉をこじ開ける音で気付いたのか門の前に立っていた人影がこちらを向いて言う。
「おいおい……ストゥルティ、俺の所までは来ないって言ってなかったけ?」
「これはもう……単なる脱獄じゃねぇな」
ヴェティはそう言うと同時にナイフを二本抜き、その人影に飛びかかる。
すると、その人影はヴェティの二本のナイフをカットラスで受け止めると言う。
「そう。襲撃だ」
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