しがらみ
「……わらわをどうするつもりじゃ外道」
「それは1番お前がよく知ってるだろ」
「……ッ!」
「残念だが」スイッチはフォルスを睨みつけながら言う。
「折角捕まえた裏切る者を可哀想だからと見逃すほど、俺らもお人好しじゃない」
スイッチはフォルスの頭に手を当ててスイッチを構える。
「何をするッ!!離すのじゃ!!」
フォルスが暴れると、スイッチは冷酷な表情で言う。
「殺しはしないさ、ちょっと僕の能力で眠るだけだ」
スイッチがボタンを押すと共にフォルスの意識はヒモが切れたように途切れ、地面に突っ伏す。
「……スイッチさん、もう離しても大丈夫ですか?」
ゼノはフォルスを拘束するバインドを握りながらスイッチに言う。
「ああ、良いぞ」
スイッチはそう言うと、端末を取り出し操作し始める。
「……あの、スイッチさん」
「なんだ?」
ゼノは少し言葉を詰まらせながら言う。
「フォルスは、これからどうなるんですか?」
それを聞いてスイッチはため息をついてから端末を仕舞い、地面に倒れているフォルスの傍に腰を下ろして口を開く。
「ディヴィデは全ての世界を危険に陥れる団体だ……『門』の事や内通者の事とか、ディヴィデの事は全部話させるさ。例え、コイツが死んでもな」
「そんな……!」
ゼノがそう言うと、スイッチは静かながら厳しい声色で言い放つ。
「お前、コイツが俺達のことを殺そうとした事、忘れてないか?」
ゼノはその問いに黙り込んでしまう。
「……まぁいいさ」スイッチはそう言って立ち上がり、気絶したフォルスを抱き抱える。
「これから忙しくなる……OCO本部にもそろそろ帰るはずだ」
「この世界とはお別れって訳ですか?」
「そうだな……サランともお別れだ、挨拶しとけよ」
ゼノはその言葉に表情を曇らせる。
「……じゃ、行くぞ」
スイッチはそう言って背を向けて歩き出す。
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「それは本当か?」
ユビキタスが端末を耳に当てながら言うと、その相手であるスイッチが落ち着いた口調で言う。
「ああ、フォルスを捕らえてこっちに作られた『門』を見つけた」
『門』を見つけたと言う言葉を聞いて、ユビキタスは目を見開く。
「信じられんな……その話」
「おいおい、信じてくれよ。僕が嘘つくように思えるかい?」
スイッチは苦笑いしながら言う。
「思えるな」
すると電話の向こうから冷静な一言が聞こえてきて、スイッチは思わず吹き出す。
「相変わらずだな……まぁ、いいさ、証拠はOCO本部で見せよう。それで……『
「ああ、お前のとこのアーク三等官が今やってくれる。明日あたりには出来るだろう」
「明日か……」
スイッチが不安そうに呟くと、ユビキタスは真剣な口調で言う。
「何か問題が?」
「いや……二人が少し仲良くなり過ぎた」
その言葉を聞くとユビキタスはため息をつく。
「この仕事を続けるなら、必要な経験だ」
「まあ。そうだな……」
「お前は、その手柄を持って帰ることだけ考えろ」
「了解」
ユビキタスはそれを聞くと通信を終了させ、端末を仕舞う。
「……ルーメンさんに報告だな」
ユビキタスはそう呟くと自分の机から立ち上がり、自室を後にする。
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OCO本部では非稼働の『門』の前でサルベージを行う為の作業が進められていた。
アークは数人の作業員と手分けして、『門』付近で装置の設置を行っていた。
「ええと……これは向こうで」
アークが台車に積まれた箱の中身を見ていると扉が開き、レプスが追加の荷物を持って現れる。
「アーク、持ってきましたよ」
「良くやった!レプスッ!……センパイ」
アークがそう言いながら荷物を受け取ると、レプスは貼り付けた笑顔でアークの肩に手を置きながら言う。
「次はないですからね」
「は、ふぁい……」
アークはそう言うと受け取った装置を組み合わせて『門』の前の縁につける。
「フフ、フハハッ!これで、ほぼ完成だッ!後は我が闇の力を使い、このビーコンを『狭間』に投げ込むッ!」
そう言って、アークは門を開く。
部屋は光に包まれ、アークは門の中に黒く小さい小箱を投げ込んだ後、直ぐに門を閉じる
「後は待つだけだッ!ハハハ!」
「お疲れ様、アーク。
レプスは労う声でそう言うと作業員達を連れてその場を後にする。
作業を終えたアークはその場に座り込むとため息をつく。
(お願いされた事はこれで良いよね、一応数値を……)
装置を見ると、全て正常な数値を出している。
「スイッチ……センパイも頑張ってるだろう。待っておけ、今助け出してやろうッ!」
アークはひとり、部屋で高笑いする。
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一方、ユビキタスはルーメンの執務室を訪れていた。
「……ソレは
「はい、スイッチから報告を受けました」
ルーメンは長く静かに息を吐くと座席から立ち上がり、羽織っている着物の背中をこちら側に向けて窓の外を眺める。
「尋問は……誰がやるつもりなんや?」
「本件、スイッチに一任しています」
「まぁええわ。何するなんてこと聞くまでもないからな……」
ルーメンはユビキタスに背を向けたまま語る。
「だがなぁ……ディヴィデ1人捕まえただけで、問題が解決する訳やないんやで?そんな事して何になるんやろなぁ?」
ルーメンの問いに、ユビキタスは目を閉じて答える。
「私は個人的には賛成です」
「何がや?」
「……尋問です」
ルーメンは窓に手を当てながら言う。
「尋問ねぇ……あんなん、拷問や無いか?」
「私が気にしているのは、あくまでOCOとしての義務です。全ての世界の安全と秩序を守る為に必要な事であると判断すれば、どんな手段を使おうとも、我々はそれを実行します」
「せやけどなぁ……」
ルーメンはそう言うと振り返り、ユビキタスを見る。
「連盟議会がこの事知ったら、面倒臭い事になると思うんやがなぁ」
「それは……」
「まだ、やるべき事は山積みなんやで?こっちの案件もあるんやし、これ以上仕事を増やすのはごめんやで」
ルーメンは険しい顔をするユビキタスに耳打ちする。
「……拘束するだけにしておくこと。ええな?」
「…了解です」
ルーメンはため息を着いて言う。
「いやー……最近はこうも頭使う仕事ばっかりで腕が訛るわぁ……」
ルーメンはそう言うと机の横に置かれている日本刀をゆっくりと触ると、ハッとした様な表情になる。
「あっ!愚痴ってしもた、ごめんなぁ」
「いえ、お気になさらず。ルーメンさんもかなりの激務ということは把握しております」
「部下に気を遣わせるなんて、ボクもまだまだやなぁ……」
ルーメンはきまり悪そうに言う。
「お時間ありがとうございました。では、失礼します」
ユビキタスは敬礼をして部屋を出る。
ルーメンはユビキタスが部屋の外に出た後に机に座り小声で呟く。
「気持ちは、わからんでも無いけどな」
ユビキタスは扉を背にして大きなため息を着く。
「捕まえても結局はこれか……」
ルーメンとの話で頭が痛くなり、こめかみを抑える。
(正直、議会の決議などD3の決定権を凌駕する力はないのだが……敵に回すと厄介であるのは理解できる)
ユビキタスは廊下にある自販機の前に止まり、自分のカードをかざし、コーヒーを購入すると自販機横のベンチに座りながら缶コーヒーの蓋を開ける。
(……悩ましい)
ユビキタスはコーヒーを一口飲み、ため息を着く。
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