流れは戻る
「おいっ!」スイッチが慌ててゼノを支えると、サランも心配そうに駆け寄る。
「大丈夫かッ!?」
ゼノはなんとか起き上がろうとするが、力が入らない様子だった。
「一体……なにが」
「恐らく、自分自身の血を増やしちまったんだろうな」
「そんな……」
彼は焦って領主を見る。
領主の血はぼぼ《増える》。
その瞬間、領主の顔色がみるみるうちに良くなる。
「ゼノ……!お前!編集を連続で!?」
スイッチはかなり驚いた様子でゼノの肩を掴む。
「良かった……です」
ゼノはそう言うとそのまま床に倒れる。
「……スイッチさん!?ゼノが!!」
「大丈夫です。いわゆる……魔力切れです、少し休ませてやりましょう」
そう言うとスイッチは領主とゼノを運び始める。
━━━━━
「う……うーん……」領主はゆっくりと目を覚ますとベッドから身を起こす。
「……お父様?」サランは心配そうに、領主の顔を見る。すると彼が何か言う前に突然スイッチが頭を下げる。
「領主様お身体のほど、いかがでしょうか?」
「君は?」
「冒険者のスイッチです」
「冒険者……?どうしてここに?」
彼は不思議そうな顔で聞き返す。
「我々は領主様を暗殺しようとやって来た暗殺者からお守り致しました、娘さんもご無事です」
スイッチの言葉を聞くと、領主は目を見開いて驚く。
「なんと!本当か!」
彼はベッドから起き上がり、サランを抱きしめる。
「良かった……サラン、本当に無事で……」
「お父様、守れなくてごめんなさい」
「良いんだよ。君が生きていてくれただけで私は嬉しい」
領主はそう言うと優しく微笑む。
すると、ゼノが目を覚ますがまだ寝ぼけている様子で起き上がると辺りを見回す。
「う……ここは?……領主様!!」
「目覚めたか、こちらは私の仲間のゼノです」
スイッチは領主にゼノを紹介する。
「……ああ、知ってるよ。ありがとう、ゼノ君」
「領主様こそご無事で……!」
ゼノはそう言うと会釈をする。
「君たち2人には感謝してもしきれないな……何かお礼をさせて欲しい」
領主が手を広げると、スイッチとゼノは顔を見合わせるとスイッチはゼノに合図を出す。
「それでは、サランさん……いえ、お嬢様が冒険に出る事を認めてあげてください」
領主はそれを聞くと、かなり真剣な顔で2人を見つめる。
「……サランはこの屋敷の次期当主であり、大切な一人娘……」
スイッチは領主の言葉を聞いて深くため息をつく。するとゼノが真剣な眼差しで語りかける。
「……お嬢様は外の世界で私を助けてくれました。彼女は人を助けるために冒険を続けているんです」
「ゼノ……」
彼はサランを見て「そうだな」と小さく頷く。
「分かった……サラン、君が冒険者になりたいと言うのなら止めない。冒険に出ることを認めよう」
「お父様!!」
領主のその言葉を聞き、サランの表情が一気に明るくなる。
しかし、領主の目はどこか遠い所を見つめていた。
「母さんと一緒だな……」
領主はぽつりと呟く。
「え?」
「いや……何でもないよ」
領主はそう言うと、にっこりと微笑みサランの頭を撫でるとサランは恥ずかしいのか「お父様!!」と顔を真っ赤にして言う。
━━━
その夜、ゼノとスイッチは酒場で今後のことについて話していた。
「とりあえずサラン嬢が冒険に出るのを認めることが出来たし、これで俺たちのミッションはほぼ達成したってことになるだろうな」
スイッチの言葉にゼノは頷く。
「これで世界の流れは戻ったんですか?」ゼノの言葉にスイッチは腕を組む。
「まだ分からん……だが、少なくとも悪い方向には進んではいないはずだ」彼は不安げな表情を浮かべたゼノを見て微笑む。
「とりあえず俺たちの目的は達成された、後の行動はIFの結果を見て決める……わかったか?」
「はい」
スイッチの言葉にゼノは少し安心した表情を見せる。
「さてと、とりあえずなんか飲むか!」
そう言うとスイッチはギルド職員を呼ぶと酒を注文する。
「僕は一応未成年なんで……」
ゼノは苦笑いを浮かべながら答える。
「ここじゃそんな法律なんかないが……じゃあコイツには茶を」
彼が注文すると、すぐにギルド職員は酒とお茶を運んでくる。スイッチは運ばれてきた酒を一口飲むと思わず。
「うめぇ」
「仕事終わりの1杯ってやつですね?」
ゼノも続けてそう言うとお茶を飲む。
その後、スイッチは追加で頼んだ料理に手を付けながら話し始める。
「そういえばお前にはまだ言ってなかったな」
「なんですか?」
「ディヴィデの尻尾を掴んだ、明日捕まえに行くぞ」
「僕達2人だけでですか!?」
と言うゼノに対してスイッチはニヤリと笑ってみせる。
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