不定
「ゔぁぁあぁあ!!」
サランは暗殺者3人の前に恐ろしい速度で躍り出て、大剣を横薙ぎに払うと、暗殺者2人を斬り飛ばし、最後の人の顔面に全力の殴りを入れる。
殴られた暗殺者はそのまま窓を突き破り、外に落下する。
「おとうさまぁ……!!」
サランは領主に駆け寄り、傷口に
「そんな……!?『回復』!『回復』!!!」
しかし、それでも傷口は塞がらず、鮮血が流れ続ける。サランの顔からは血の気が引き青白くなっていた。
「イヤ……」
するとその時、割れた窓に何者かが現れる。
「『バインド』!!!」
ゼノは間髪入れずにその人物を拘束しようとするが、バインドは空中に現れた氷塊で防がれてしまう。
「なっ!?」
気づくと、ゼノの喉元には氷で出来た日本刀が向けられていた。
「邪魔はしないで」
その女はゼノに向かって静かに言う。
「サランさん逃げッ……」
ゼノは言葉を発する前に両手両足を氷漬けにされた上で口を塞がれてしまう。
「そこ、どいて」
女はサランに氷の日本刀を向けるが、サランは領主の傷口にヒールをかけるを辞めない。
「イヤッ!!お父様っ!死んじゃダメッ!!」
「……どいて」
「邪魔しないで!!」サランは叫ぶと、氷の刀を素手で掴む。血が滴り落ち、氷に伝うがお構いなしといった様子だ。
「これ以上ヒールしても、無駄」
「私は……ッ!」サランは涙を流し、顔をぐしゃぐしゃにしながら再びヒールをかける。
その姿を見た女はため息を漏らすと氷の日本刀を消し、領主の傷口に手を近付けると、傷口周辺は白く霜がかかり始める。
「何……!?」サランが驚いているうちに、領主の出血は完全に止まる。
「……こればしばらくは持つ。本当は治してあげたいけど……今の私には無理」
そう残念そうに言うと手をしまい、立ち上がる。
「……時間切れ」
彼女はおもむろにそう言うと窓の外へと身を投げたのだった。
「……待って!」
突然の事態に呆然としていたゼノは慌てて窓の外を見るがそこには誰もいなかった。
その時、反対側の窓を突き破りスイッチが入ってくる。
「大丈夫かッ!?」
「スイッチさん!!領主さんがッ!!」
「落ち着け!!」
(くそ、間に合わなかったかッ!!)スイッチは思考を巡らせる。
暗殺者は全て倒し、撤退したようだが……領主の容体は深刻。出血自体は止まっているが傷は深く、塞がらず回復魔法でも間に合わない状態だ。
「仕方ない……」
スイッチはそう言うと領主の傷口に手を置く。
すると、傷口は《塞がる》。
「嘘……あんなに深い傷を……」
サランは目を見開きながら、驚きを隠せない様子だった。
「完全に治ったわけじゃない……傷を塞いだだけだ、出血した血は戻らない」
スイッチはサランに説明するように言う。
「そんな……」
「……」
スイッチはそう言うと領主の脈を測る。
(傷口を完全に塞ぐのに編集を使った、出血性ショックは自分たちの力でどうにかするしか……いや何としても完遂しなければ)
彼は頭の中でこの世界の情報を思い出す。
(領主に血液型は設定されてない……つまり輸血が可能……いや、だがここにはそんな道具はない)
彼は悩んだ末に結論を出す。しかしそれは非常に危険な選択であった。
(これは賭けだ……もし何かに干渉すれば、世界の運命が大きく変わってしまう)
スイッチはゼノの方を見ると深刻な表情で語りかける。
「ゼノ、『編集』を使うんだ」
「へ『編集』?なんですか……それは」「今説明している時間は無い、とにかく傷口に手を置いて血が増えるように念じろ」
「えぇ……そんな適当なので大丈夫なんですか!?」ゼノは驚いた様子で聞き返す。
「大丈夫だ、だが集中しろ」
ゼノは少し不安そうな表情を浮かべながら頷く。
「わ、分かりました」
ゼノは恐る恐るといった様子で右手を領主の腹に向けると目を瞑り集中する。そして、傷口に手を当てる。
体内の血液は《増える》。
その瞬間、ゼノは鼻血を吹き出し、床に倒れ込む。
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