挽回法
スイッチは頭を抱えて部屋の中をグルグルと回り出す。
「本当にマズイ事になってるじゃないか……!こんな現場に居合わせるなんて、クソっ」
「ちょ、ちょっと落ち着いてください!」
「落ち着けるか!お前、アイツがどういう存在かわかっているのか!?」
スイッチは怒りが収まらない様子で言う。
「いえ……」
ゼノは小さく答える。
「なら教えてやる!奴はこの世界の重要人物だ!」
「えっと、それは……」
ゼノは理解が追い付かない。
「いいか、サランはこの世界の英雄の1人の先祖だ!」
「はい!?」
「あーもう!これだから何も知らないガキは嫌いなんだ!いいか?お前はサランに関わる事でこの世界の流れにひずみを与えた可能性があるんだよ!!」
「そ、そんな大袈裟な……!」
「とにかく、お前はこれ以上関わらない方がいい」
スイッチは真剣な顔で言う。
「……ひとつ、言いにくいんですが」
「何だ」
「実は昨日━━━━」
ゼノの話の一部始終を聞くとスイッチの顔色が青くなる。
「はぁ……最悪だ。お前、」
スイッチは呆れながら言う。
「それで、ど、どんな事がこの世界に起きてしまうんです……?」ゼノは恐る恐る聞く。
「それは……まあいいか……IFで演算してみよう」
「IF?」
「likelihood Forecaster……可能性予測システムだ。簡単に言えば未来予測だが……詳しくは帰ってからユビキタスにでも聞け」
スイッチはそう言うとカーテンと扉に何かを帯のようなもの投げつけ手に持っているペンのような物をカチッと押す。
すると、帯が部屋中を覆いが暗闇に包まれる。
それと同時にスイッチは腰から端末を取り出しスイッチを入れると空中に無数の光の線が星々なようなものに紐づけられ広がる。
「すごい……」
ゼノはその光景に目を奪われる。
「これは、OCOのメインサーバーの情報を元に計算した行動によって引き起こされる世界への影響だ」
「影響……?」
「例えば、Aという選択をした場合、その先の展開は無限に存在する」
光の線がゆっくりと回転しながら1つずつ減っていく
「その中で、特定の選択肢を選んだとして起こる可能性が1番高い確率のものを割り出している」
「それが……この結果ですか?」
ゼノとスイッチの前にいくつかの項目が並ぶ。
「そうだ……って、マジかよ」
「これは、どういう事ですか?」
「はぁ……もう一度絶望を味わえと?」
スイッチはため息を着くと静かに語る。
「彼女はしばらくすると結婚し1人の男児を授かる、彼が重要人物の父親だ。本来ならその父親は自由な母親の育て方に感化され、自身の娘にも貴族でありながら冒険者である事を許す寛大な父親となるが、今回の出来事のせいでその未来は消えかけている」
「どうなっちゃうんですか?」
「……彼女は冒険者を嫌い厳格な性格になるだろう。そして父親もその性格を引き継ぐだろうな、彼女は冒険者にならず恐らく本来出会うハズの仲間たちとも出会わない……この世界は魔王の支配からは逃れられない」
「そんな……」
ゼノは項垂れる。
自分の行動でサランや世界の運命を変えてしまったなんて……。
ゼノは自分の軽率な行動を悔む。
しかし、スイッチは冷静に話す。
まるで、この状況に慣れているかのように。
「まだ、決まった訳じゃない。これからの行動次第でその結末を変えることが出来るかもしれない」
「でも、どうやって……」
「サランにもう一度冒険をさせ、父親を説得するんだ、そうすれば正しい流れに戻るハズだ」
そう言うとスイッチは端末の電源を落とす。
「こうなったからにはしょうが無い、俺も出来る限りのことは協力しよう」
「ありがとうございます……あの」
「何だ」
「……何から始めればいいでしょうか」
「とりあえず、お前は何とかしてサランと接触しろ」
「どうやって……」
「あ"ー……自分で考えろ」
スイッチは苛立ちながらも話を続ける。
「お前、冒険者カードは?」
「持ってないです。」
「じゃあ、まずはカードを作るところからか……」
「はい……」
「じゃあ、明日の朝冒険者ギルドに来い、これ以上勝手なことされると困るからな」
スイッチはため息を着いて言うと、窓と扉に張り付いた黒帯を剥がし、まとめてから部屋の扉を開ける。
「今日は一旦戻る、予定を忘れるなよ」
「はい……」
スイッチは扉を閉めると足早に去っていく。
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