不穏
スイッチは夜の森の中で耳に手を当てて何かを待つ。
『スイッチ聞こえるか?』
「あぁ、いい感じだ」
スイッチの頭の中にユビキタスの声が響く。
『それで、鍵とゼノは見つかったか?』
「見つかったが、最悪の事態だ」
『何?鍵が壊れたか?』
「いや……それならまだ良かったんだが」
『……まさか』
「そう、そのまさかさ……"カノン"への介入」
スイッチがそう言うとため息が脳内へと重く響く
「まあ、それはこっちで何とかする。それよりもだ」
腰のポーチからケースを取り出して握りしめる。
「ついに尻尾を捕まえたかもしれないぜ」
『また、ディヴィデか?……スイッチお前はまたそうやって……』
「いや、今度のは
『24回程、同じ事を聞いたが?何を見つけた?』
「見つけたのはゼノだ、俺じゃない。『鍵』さ無刻印で今まで見た事ないシリアルのだぜ」
『ほう……データ送れるか?』
「勿論」
スイッチは端末に無刻印の鍵を差し込む。すると、端末にはデータ送信中の文字が表示され、鍵からデータを抽出しているアニメーションが再生される。
「よし、送信中」
『どれどれ……よし。しっかり受信してるぞ進捗度83%』
「解析頼むぜ」
『はいよ』
その時、夜の暗闇を切り裂き、何かが高速でスイッチの端末に突き刺さる。
「ちッ!?」
『どうした?エラーか?』
「いや、端末を壊された!」
その言葉と同時にスイッチは黒い帯を空中に投げ、手持ちのペンの上部分をカチッと押す。
それと同時に黒い帯は盾の役割を果たし、攻撃を数発防ぐ。
『大丈夫か?スイッチ!』
「何とかな!だがマズイかも」
攻撃が飛んできた方向を見ると再び数発何かが飛んで来て手前の木に突き刺さる。
スイッチはその刺さっているものを見て呟く
「この氷柱……間違いない」
『ど……スイッ…聞こ……』
「チッ……力場を狂わせられたか」
その刹那スイッチは回避行動を取る。
スイッチが先程までいた場所には黒いスライムが木々を薙ぎ倒して覆い被さる。
「危ねぇ!もう1人いるのか!?」
スイッチは腰から数個の小箱を放り投げ、ペンの頭を押す。
すると小箱は爆発し、辺りに煙を充満させる。
その煙の中からフードを被った人物が冷気を纏う日本刀を振り上げながら現れる。
「『超回避』ッ!」
それを紙一重でかわし、振り向きざまに三角形型の小型爆弾を3つほど投げつける。
「吹き飛びやがれ!」
しかし、小型爆弾は空中で起爆する前に氷漬けにされ、動作不良を起こしてしまう。
「……厄介だ…なッ!」
スイッチはダガーを刺客に投げつけるが、日本刀で弾かれてしまう。
その刹那、スイッチが次の行動に動く前に彼の喉には日本刀が放つヒンヤリとした空気が当たる。
「……鍵出して」
刺客は氷のように冷たい声で刀身をピクリとも動かさず言う。
「それは無理な相談だぜ」
その言葉と同時に、弾かれたハズのダガーが刺客のフードを切り裂き日本刀の刀身をよろめかせながら、スイッチの手元へと戻ると、スイッチはバックステップを踏んで距離を取る。
「やっぱりお前か、グラキエス」
フードがずるっと落ち、あらわになるその美しい水色の瞳とセンター分けの黒い短髪の女性を見てそう言う。
「……容赦しないよ。今すぐ鍵を出して」
「能力で優位にたったつもりか知らないが、礼儀がなってないな」
スイッチはそう言うと顔の横でペンの頭を押す。
それと同時に煙を撒き散らした小箱の破片が重力場を生み出し、グラキエスは膝をつく。
「お願いするなら腰は低く……な?」
スイッチはそう言うと腰のポーチからリストバンドの様なものを取り出す。
「グラキエス。お前を拘束する」
スイッチがそう言ってグラキエスの腕にリストバンドを巻つけようと近付くと、瞬間。グラキエスに掛かっていた重力が解消され、グラキエスはスイッチに襲いかかる。
「もう1人かッ!!」
グラキエスの日本刀をダガーで受け止めると、ダガーはみるみるうちに凍りついていき、日本刀を一度浮かされもう一度振り下ろされた衝撃で煎餅のように砕けてしまう。
「『バインド』!」
スイッチのその言葉と同時に黒い縄の様な物がグラキエスの日本刀に巻き付く。
「没収……だッ!」
彼は勢い良く日本刀を引っ張っり吹き飛ばすとグラキエスとの距離を一気に詰め、腕を掴むとそのままストラップを腕に巻き付け拘束し、帯を取り出し、グラキエスを近くの木に巻き付ける。
「『敵感知』あと1人はどこだ……」
スキルを使い、辺りを見渡すが人のような気配は一切しない。
その時、背後から大きな音が聞こえる
「そこかっ!!」
スイッチは小型爆弾を音のする方へ投げつけ、起爆するがそこには何も居ない。
「囮か……ひとまずコイツを」
そう言ってグラキエスの方を見ると、そこに彼女は居なかった。
「してやられたか……」
スイッチは穴の空いた端末を取り出すと差し込んである筈の鍵を確認する。
「鍵は……うおっ何だこれ」
鍵は一部黒色に腐食したようになっており、引き抜くとバラバラと砕けそうになる。
「おっと……」
スイッチは急いでそれを保存用の袋の中に入れると耳に手を当て集中する。
『……えるか。……ッチ聞こえるか?』
「こちらスイッチ、力場が戻って来たようだ」
『スイッチ、無事か?』
「あぁ、それよりもこの世界の出入を監視しろ。今すぐだ」
『……という事はやはりさっきの襲撃は』
「そう。ディヴィデのメンバーが少なくとも2名この世界に居る」
スイッチはペンを握りながらニヤッとした笑みを浮かべる。
「袋のネズミって訳さ」
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