OCOツアー
「「「ようこそ!!異動部へ!!!」」」
「うわあッ!」
突然の歓迎とクラッカーに驚いてしまう。
「驚いたかい?」
ユビキタスが悪戯っぽく笑う。
「はい……驚きましたけど、すごく嬉しいです」
「良かったです!こんなサプライズがあるなんて思いませんでした!」
「ふふ、あなた達のこと楽しみに待っていたんですよ」
「ドゥクスさん!!」
アルにドゥクスと呼ばれた女性はは金髪ロングに美しい紫色の目の背の高い女性が柔らかい笑顔でこちらを見つめていた。
「はじめまして、ゼノさん。アルさんは覚えて下さったのね、異動部で副部長をやらせていただいてます。ドゥクス二等官です」
彼女は丁寧にお辞儀をするが、その姿にはどこか威厳があった。
「よろしくお願いします!」
ゼノとアルは慌てて頭を下げる。
「あらあら、そんなに緊張しなくても良いのに……」
ドゥクスはそう言いながらニコニコと笑う。
「次は私かな?私はホラ、よろしく」
そう言って金髪ボブカットの西部劇に出てくる様なコートを来た美しい青い瞳の女性が手を差し出す。
2人とも順番にホラの手を握り握手を交わす。
「おや、まだヴェティは帰ってきてないのか」
ユビキタスはオフィスを見渡して言う。
すると、丁度ドアが開き、少し長い髪を後ろで纏め、使い古されたオリーブ色のジャケットを着た右目に眼帯を付けた男が入ってくる。
「ヴェエィ、戻ったか」
「あぁ、連れて来たぞ……お」
ヴェエィはこちらに気づくと近付いて手を差し出す。
「エッセ・ヴェナーティオ二等官、長いからヴェエィと呼ばれている。よろしく」
新人2人と手早く握手を交わすと、扉の方から1人のケモ耳の女の子が飛び出す。
「ヴェエィ!もう出るからね!我慢出来ない!!」
「「シエナ(さん)!?」」
ホラとドゥクスが驚いた顔で彼女を見る。
「シエナ、元気か?」
ユビキタスは彼女に気さくに声をかける。
「うん!色んなテスト受けさせられたけど元気!……って!アル!?」
彼女はアルを指差す。
「シエナちゃん!?」
アルもびっくりして目が点になる。
「そうか、会うのはかなり久々か」
ヴェティは腕を組みながら思い出したように言う。
「2人とも知り合いなんですか?」
と、ゼノが不思議そうに尋ねる。
「あ、ごめんなさい。言ってませんでしたね、この子はアルの幼なじみなんですよ」
ドゥクスがニコニコしながら説明する。
「そうなんです!だから統制官になったら!一緒に仕事するのが夢だったんです」
アルが嬉しそうにはしゃぐ。
「そういう事だったんだ……本当に良かったね」
するとシエナがこちらに向かって歩いてくる。
「初めまして!あたしはシエナ!シエナ三等官、あなたは?」
「僕はゼノ三等官です、よろしくお願いします」
「よろしく!ゼノ!ねぇ!今から時間ある!?」
「え?えっと……」
「あ!シエナ!もしかして案内ですか!?」
アルは目を輝かせながら言う。
「そう!ゼノ色んなもの見せたくて!ヴェティ!いいよね!」
「俺に聞くのか……ユビキタス、良いのか?」
ヴェティが片目をユビキタスの方に向けて聞く。
「ああ、行ってこい。ついでに『門』も見てくるといい」
「やったー!アル!ゼノ!行くよ!!」
そう言うとシエナは2人の腕を同時に掴んで部屋の外にすっ飛んで行った。
「ふふ、若いって、いいですねー」
ドゥクスが微笑みながら言う。
「俺たちはまだそんな歳じゃないよな……」
ユビキタスは苦笑いを浮かべた。
その時、ホラ以外のの端末にほぼ同時に連絡が入る。
「これは、嫌な予感がするな」
ヴェティは頭を掻きながらイヤそうに言う。
「あぁ、全くだ」
ユビキタスはため息をつくと端末を取り出す。
「あらあら、せっかくのお祝いムードなのに」
「とりあえず、『門』付近に集められるだけ集めるぞ、シエナ達も呼び戻さなければ」
そう言ってユビキタスは端末を操作し、呼び出しをするが、机の上からバイブレーションの音が響く。
「しまった、端末を渡すのを忘れていた!」
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「ここは食堂!!」
シエナは目の前にある大きなテーブルをバンッと叩く。
「色んな世界の料理が食べられるですよ!」
アルが自慢げに胸を張る。
「よし!次行くよ!!」
シエナが2人の腕を引っ張る。
「うわわわわ!」
「シエナー!!」
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「ここはバザール!!」
シエナが両手を広げる。
「市場みたいな所です!」
「へぇ〜、すごい活気!」
色々な格好や種族の人が食材や装備品を吟味していた。
「はい!いろんなものが売っているんですよ!」
「へぇ〜」
「さ!次は───」
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シエナに色んな所へ連れ回されて、2人はヘトヘトになっていた。
「ちょっと……休憩しましょうか」
アルがゼノにベンチをフラフラと指さす。
「うん……そうしよう」
「一旦休む!?あ!そうだ!飲み物買ってくるね!」
シエナはそういうと通路の角を凄まじい速度で曲がって自販機へと向かっていった。
「シエナ、まだまだ走れそうですね……」
アルが呆然と呟く。
「そうだね……」
それにしても色々見た。
食堂を初め、市場のような所、トレーニングルーム、休憩スペース、公園。
他にも、様々な部屋や扉があった。
そのどれもが、微かに頭に残る自分の世界とはかけ離れた技術や道具で溢れていて新鮮だった。
そんなことを考えているうちに、シエナが帰ってくる。
「お待たせ!はいこれ!」
シエナが2人に缶ジュースを渡してくれる。
品名は『レインボートマトジュース』
「oh……これは……」
ゼノは思わず、その名前のツッコミどころとパッケージの派手さに言葉を漏らしてしまう。
「あれ?嫌い?だった?」
シエナが自分の分を開けながら首を傾げる。
「いえ、そういう訳じゃなくて、初めて聞いたもので……」
「そっかー、まぁ飲んでみてよ!すっごく美味しいんだ!なんか本能的に!」
「本能的……」
ゼノはその言葉に少し身構えながらプルタブを開ける。
アルの方を見ると、既にごくごくと飲んでいた。
意外と大胆なのかもしれない。
「いただきます……」
一口飲むと、ドロっとした感覚と共に甘味と僅かな鉄味を感じる。
そして、何故か少し生暖かい。
美味しいかと言われると微妙だが、決して不味くはない。
「あ!これ似てます!」
アルが何か閃いたのかベンチから立ち上がる。
「これ!ヤギの生き血味に似てます!」
「ぶっ!!!」
ゼノは盛大に吹き出す。
「ゼノ!!大丈夫!?」
シエナが慌ててハンカチを差し出してくれる。
「……平気ですか?」
アルは心配そうに見つめる。
「うん、ありがとう……ちょっとビックリして、反射的に……」
ゼノが拭きながら考える。
こんな可愛い女の子がなんでヤギの生き血の味を知ってるんだ……?
もしかして、こっちの世界では常識なのか?
「ごめんなさい、私が変なこと言ったせいですね」
アルは申し訳なさそうな顔をする。
「違うよ!僕が勝手に驚いただけだから!気にしないで下さい」
ゼノはそう言うと残りのドリンクをイッキする。
「おー……すごい飲みっぷり、また買ってあげるね!!」
シエナは嬉しそうにゼノの肩をポンポン叩きながらジュースを一気に飲み干すと、ゼノとアルの腕を掴んで言う。
「よし!次行くよー!」
「まだあるんですか!?」
「もちろん!次は、とっておきだよ!」
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