ようこそOCOへ

「……さん……ゼノさん!起きて下さい!」


薄らと目を開けるとアルがゼノの体を揺すっていた。


「……うん?」


寝ぼけた様子のゼノが起き上がる。


「やっと起きた……大丈夫ですか?」

「あ、あぁ……あれ?みんなは?」

「もう回復してそれぞれの担当の人について行きましたよ」


アルが扉の方を見て答える。


あぁ、今までの事がアルさんのこと以外全て夢だったら良かったのに……。


そんな事を考えていると、扉が開き、ユビキタスが入ってくる。


「お、起きたか、早速だが君達の配属先が決定した」

「配属先……?」

「そうだ、君達はこれから各部門に配属され、そこで任務をこなしてもらう」

「任務……」


ゼノ達は不安そうにする。


「安心しろ、とりあえず部門について簡単に説明させてもらうぞ」


ユビキタスはそういうとコートのポケットからスマホのような端末を取り出し、起動する。


すると、空中にスクリーンが写し出される。


あぁ、もうこの程度では驚かなくなってしまった自分が怖い……


「アルは知っていると思うがもう一度聞いてくれ」

「はいッ!」


アルは返事をすると、元気良く敬礼をする。


「まずは、異世界統制機構……通称OCOについてだ」


OCOそれは複数に存在している"世界"と"世界"を繋ぐ事を使命としている組織である。


うん、壮大すぎて、もうわからん。


そして、OCOには異世界にまつわる複数の部署が存在している。


中央司令部、情報部、能力開発研究部、技術開発部、治安維持部……


「そして、君達が所属する事になる異世界間移動管理部だ」


「えーーー!?私達異動管理部なんですか!?」

「ああ、おめでとう」


ユビキタスはどこか少し嬉しそうに答えた。


「異動管理部って具体的に何をやるんですか?」

「基本的には、世界同士を繋ぐ『門』(ポルタ)の管理と運用なんだが……」

「が……?」


ゼノが不思議そうな顔をする。


「何故か異世界での任務も任せられててな……しかも他の部門より圧倒的に多くな……」


ユビキタスは頭を抱えて大きなため息をつく。


「うわぁ……大変そうですね……」

「君達にも多分やってもらうけどな……まぁ、詳しい事はオフィスで話そう。あと、これを」


ユビキタスはそう言うとゼノとアルにカードを差し出す。


「これは……!やった!私も遂に正式な統制官に……!」


アルはカードを握りしめながら喜ぶ。


「まだ、本登録が済んでないからな、これから登録しに行くぞ」

「はい!」

「わかりました」


2人は同時に返事をする。


「よし、では行こうか」

そう言うと、ユビキタスは医務室の扉を開けて外に出ることを促す。


━━━━━━━━━━━━━━━

廊下に出てしばらく進んでいると、巨大なドーム天井の開けた場所に出る。


「ここは、OCOの中心部いわゆる……ロビーって奴だ」


中央には円形の大きな吹き抜けのような穴があり、その周りに受付らしきカウンターがあった。

その1つに寄っていく。


「やあ、レプス三等官」


ユビキタスがカウンターのスーツと黒縁メガネを掛けスーツと同じ黒色のベレー帽を被った白髪の女性に声をかける。


「ユビキタス二等官、お疲れ様です」


彼女は赤い目を机から上げて返事をする。


「この子達が新しく入った新入隊員だ、登録を頼みたくてね」


ユビキタスが2人を彼女に紹介する。


「……話は聞いています。私は中央司令部所属、レプス三等官です。よろしくお願いします」


彼女がペコリとお辞儀をして挨拶する。


「よ、よろしくお願いします!」

「よろしくお願いします!」


アルとゼノは慌てて頭を下げる。


「では、IDをコチラへ」


レプスがそういうと、机の下からキーボードのようなものが出てくる。


「はい!お願いします!」


アルがポケットから自分のIDを取り出す。


「ありがとうございます」


レプスがそれを受け取ると、画面を見ながら手際よく入力していく。

そして、最後に空中に浮くウィンドウにタッチすると、ピピッという音が鳴る。


「はい、これで完了しました。こちらがあなたの新しい身分証になります」


レプスがアルにカードを返す。


「おお〜!これで私も本物の統制官……!」


アルは目を輝かせていた。


「ゼノさんもどうぞ」


ゼノの分のカードも受け取る。


「おや……これは、」


レプスがゼノのカードを見て呟いた。


「何か問題でも……?」

「いえ、少し珍しいコールサインだと思いまして」

「そう……なんですね」


ゼノは苦笑いを浮かべ、カードを受け取る。


「レプス、ありがとう。では俺は彼らをオフィスに案内する」

「了解です、行ってらっしゃいませ」


ユビキタスはそういうと、ゼノとアルを連れてカウンターの横を横切り、吹き抜けのような穴の前に立つ。


「あー……ゼノは初めてか、アル教えてやってくれ」

「はい!えっと……最初はこわいと思いますが!慣れます!」

「え……?」

「大丈夫だ、一歩踏み出すだけだからな」


ユビキタスが怖い笑顔で言う。


「は、はい……!」

「じゃあいきましょう!」


そう言うと、アルはゼノの手を掴んで勢い良く穴の中に飛び上がった。


「うあああァァァ!?!?」


落ちる!何!?死ぬの!!??

ゼノは目を瞑りながら落下に備えるが、それは訪れない。


ゆっくりと目を開けると穴の中央に浮いていた。


「あれ……?落ちてない……!?」

「大丈夫です!進みたい方向に重心を傾ければゆっくり進みますよ!」


アルがニッコリと微笑む。


「異動部のオフィスはもう少し下だ、降りるぞ、見失わないようにしっかり着いてくるんだ」


ユビキタスはそう言うと浮いた状態から一気に降下しだす。


「ゼノさん!私達も追いつきますよ!!」

「え……ええええええええぇえええええ!!!!!」

「えいっ!」

「うああああああァァァ!」


こうして2人はユビキタスの後を追って、オフィスのあるフロアへと向かって落ちていった。


━━━━━━━━━━━━━━━


恐ろしく怖いエレベーターを降りると、また廊下を進んで行く。


途中色んな人とすれ違った。


エルフっぽい人、ロボット、どう見ても人外の獣とか逆にコスプレみたいな獣人も…


本当にカオスな空間なんだな……

そんな事を考えていると、ユビキタスが扉の前で立ち止まる。


「ここが俺達の部署、異世界間移動管理部だ」


そう言うとユビキタスは扉を開けるように子招きする。


「さぁ、第一印象は大事だぞ」

「はい!」

「お邪魔します……」


アルとゼノはゆっくりと扉を開けて、中に入る。

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