第17話 大変だ大変だ!

-side リック-




『お〜!リック。戻ってきたか。って、フェル!無事だったのか!?』

『ああ……、危うく殺されるところだったがな。リックのお陰で助かった。』

『まじか……、ありがとな。主人。俺の大切な眷属を救ってくれて。』

「いや、全然。それより、結界の維持お疲れ様。疲れてるっぽいから、魔力あげるよ。フェルにも。」

『本当か?助かる!』

『感謝する。』



 シルフとフェルに魔力を与えると、両方とも途端に元気になった。



『ふむ。我が主人の魔力はなかなかうまいな。久しぶりに、力がみなぎるぞ。』

『そうだろう!ん……我が主人主人?……って、あーー!お前、まさかフェルとも契約したのか?』

「う、うん。ダメだった?」

『だ、ダメではないけどよ……。うーむ。

 これは、歴代最強の風魔法使いが誕生してしまったかもしれないと思ってな。』

「えっ……?どういう事?」

『つまり……、簡単に言うと、俺の加護や従魔契約もすごいが、眷属であるフェンリルとの従魔契約もすごいという事だ。両方とも持っていると、もっとすごくなる。』

「なるほど……?つまり、とてもすごい風魔法使いが誕生して、俺はとてもすごいと。」

『そういうことだ。』

「なるほど、分からん。」

『ふむ。我も分からぬ。』

『えっ……。』



 逆になんでわかると思ったかを疑問に思っていると、父上がやってきた。



「こっちは終わったぞ。アラン達もそれぞれの場所で不正の証拠を見つける成果を出せたみたいだ。ありがとう。リック。シルフ様。」

「おお、お役に立てて、よかったです。」

『ああ。これで、領地もしばらくは落ち着くか?』

「いや、むしろ慌ただしくなる。」

『えっ……。』

「まあ、今はいいだろう。とりあえず、諸々がうまく行った事を喜ぼう。」



 こうして、長かった1日は無事に幕を閉じたのだった。--そして、もっと慌ただしくなるのだった。





 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢





 --あれから2ヶ月。



 案の定、父上は代わりの代官を見つけたり、国に根回しをしなければいけなかったりと大忙しになった。俺は俺で、順調にお店の経営を進めていた。

 今では、なかなかの繁盛店である。

 売上は主に、公爵領に住んでいる高所得者層向けだ。

 今後は中所得者層の個人向けも開拓していきたいとは思っているけど、なかなか、そこまでうまくはいかないものだな--とそんな事を思っていた時の事であった。



「た、大変です!リック様!」

「ライ。安心しろ。そうそう大変なことなんて起こらないから。」

「冗談言っている場合ではなくてですねっ!

 これです。これ!陛下からまた呼び出しです!」

「えっ!?また--!?」

「またです!」



 見ると再び、王宮に来いとの事だった。



「また、ライのレッスン!?大変だ大変だ!」

「そっちですか。全く。あなたはお気楽で良いですね。いいでしょう。今回はマナーだけではなく、勉学の方もしっかりと、仕込ませていただきますからね。」

「ちょちょちょ……!良くない。全然、良くない。」



 こうして、順調だった俺の生活にも変化が起きる予感がしたのだった。





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