第16話 悪代官掃除

-side リック-




 この町の代官が税金を不正に利用しているというのは、報告書を詳しく見たらわかった。あとは、不正を抑えるだけ……というわけで、家の前まで来ている。

 抜き打ち突撃訪問とはいえ、この手の代官はずる賢いので、既に逃げているかもしれない。だから、これは念のためである。



「ねえ。父上。」

「なんだ?リック?」

「シルフにウィンドバリアを使って、屋敷を囲って貰えば、逃げられなくて、いいんじゃない?」

「なに?そんな事が出来るのですか、シルフ様?」

『それくらいなら、楽勝だぜ![ウィンドバリア]!これでいいか?』

「お……おお。」



 無事に発動したシルフの魔法を見た父上が腰を抜かしている。たしかに、これを逆にやられたらって考えると、……いや嫌すぎる。



「これで、少なくとも今、中に残っている連中は逃がしません。」

「あ、ああ……。しかし、これは使えるな……まあ、いいか。後のことは後で考えよう。」

「……?」



 父上が、何かぶつぶつ呟いているのを疑問に思っていると、「なっ……何者だ!」と門番がビビりながら、叫んでこちらにきた。

 しかし、壁に阻まれて、外に出ることはできないことで、余計にビビっている。

 まあ、自分が警護している屋敷をこんな壮大な魔法で囲われていたら、誰でもこうなるよなあ。多分、門番は何も知らないし、不憫だな。

 


「聞け!我が名はレオ=シュタイン!シュタイン公爵家の当主である。この家の領主の家を調査にきた。通せ!」

「こう……ヒッ!は、はっ!」



 不憫すぎる門番は、またまたビビらされていたが、なんとか正気を保ち、返事をして、俺たちを中に入れる。

 あまりにも不憫すぎたので、門番に飴を渡してあげると、とても感謝された。

 ……大体の元凶は俺だから、これでプラマイゼロだな。



「な!何事だ!って……ヒッ!これはこれは、レオ様。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「残念だった。お前を信用していたのに、まさか会計の不正報告していたなんて。」

「な……!なんのことでしょうか?」



 おお……、今明らかに、なんでバレた!って表情をしていた。

 それにしても、まだ家の人たちが中にいて良かったな。



「父上、俺は証拠を騎士団と探します。

 ご許可を。」

「分かった。気をつけてな。」



 というわけで、騎士団が家の中を制圧してくれたおかげで、執務室の中に入れたので、不正を探していたんだけど……。



「これは、酷すぎるな。」



 まず、金の使い側が酷い。宝石類もたくさんあるし、武器類も沢山ある。



「通りで、うちが貧しかったわけだよ。[クラフトスキル]」



 これは、売って領地の発展のために換金しよう。クラフトスキルで作った入れ物に沢山の宝石類を詰めていく。



「こっちは、不正会計書類っぽいな。全て持ち帰ろう。[クラフトスキル]」

 


 あと、見てないところは……隠し扉とかあるかもな。



「[クラフトスキル]解体。」



 --ズッドオオオオン!



「お!あたりだ。隠し扉発見。」



 中に入ると、そこには、銀色の狼?の子供がいた。鎖で繋がれていて、ボロボロの状態である。



 「クゥーーーン……。」と狼はこちらの方を見つめてきた。



「可哀想に……。俺と一緒に来るか?」

「クゥーーーン!」

「でも、そのままじゃ危険かもな。

 よし。“我、リックは汝との間に契約を結ぶ。その名は従魔契約。汝の名は?”」

『フェル!』

「よし!契約完了!」



 --ピッカーー!バキバキバキ!



 その時、狼が光を放ち、繋がれている鎖が一気に引き裂かれた。ボロボロだった姿も美しい姿に戻っている。



『感謝するぞ。人間……。』

「お、おう。まさか、フェンリル?」

『ああ……。我が名はフェル。風の精霊シルフ様の眷属だ。』

「シ、シルフの!?」

『ぬ?お主、シルフ様を知っているのか?

 ……というか、その感じ、お主、シルフ様の主人か。』

「う、うん。そうだけど。」

『ふむ。我がここにいた事を鈍感なあやつが知るわけないよな。……となると、お主が自力で見つけたのか。精霊の加護以外これと言って取り柄もない、あやつには勿体無いくらいの主人だな。』

「い、いや。」



 お、おう。結構な言われようだな。シルフ。

 ちなみに、今、シルフは風魔法の結界を維持するため、外にいてくれている。



『ふむ。それより、お主。いいのか?我も、もうそろそろ外に出たいぞ。

 せっかく自由になれたのだからな。』

「あっ。そうだった。」



 先に騎士団には、押収した荷物を外に運んでくれるように頼んでいた。そろそろ、終わる頃だろう?



「え……と、とりあえず、一緒に来てくれるか?フェル。」

『うむ。シルフ様の顔も見たいし、とりあえずはな。』



 というわけで、フェルと一緒に下に降りることになった。




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