第15話 魔物を片付けよう

-side リック-




「[ウィンド]![ウィンド]![ウィンド]!」



 --ビュオッ!スパンッ!



「うおっ!なんだ!?」

「突風が魔物を切り裂いていく!!」



 俺は、シルフの加護を受けたことで、新しく覚えたウィンドをうまく使えるようになるべく、練習することにした。

 自分でも驚くほど、魔力の威力が高い。

 後方支援というよりはメインの火力になりつつある感じである。

 --と、そんな事を考えていた時、隣で見ていたシルフが、別の魔法を見せてくれる事になった。



『初めてにしては上出来だな!ちなみに成長するとこんな事も出来るぞ![トルネード]』



 --ゴオオオオオオッ!



「うおっ!」

「て、天災だあ!」



 シルフの魔法で、その場にいた魔物が全て粉々になっていった。



「シルフ。」

『す、すまねえ!主人。主人から魔力を貰って以降、調子が良すぎて、ついつい魔法の威力が大きくなっちまうんだ!ともかく、今のが、中級魔法[トルネード]だ。』

「あのう……。私が知っている中級魔法とはかなり異なりますが……。」

「や、やっぱりそうだよね。ジェフさん。

 俺も以前、父上の上級魔法[ストーム]を見たことがあるけど、今の魔法の方が全然威力が高いな。」

『そっ……!それはそもそも、精霊が使う精霊魔法は普通の魔法とは違うんだ!普通の人間が使うのは、自分の魔力で魔法を使うが、精霊は他の人間や自然の魔力も使えるから、威力も精度も、全然違う。』

「へー。--って、それって、シルフが使う魔法って、ぶっ壊れてるって事じゃ……?薄々気づいてはいたけど。」

『そうだな!ちなみに精霊が加護を与えた人物は、精霊魔法の一部を使えたりする。だから、精霊の加護を受けている一族や人間はすごいんだ!』

「「……!!」」



 きっ……!聞いてない。聞いてない。でも、うちの一族が、代々優れた風魔法使いなのはそんな理由があったのか……、とそんな事を考えていると、父上達がきた。



「大丈夫か!リック!」

「父上!ええ!平気です!」

「うむ。大丈夫そうだな。よしっ!アラン!ディラン!ノエル!リック!前線に出て一気に型をつけるぞ!」

「「「はい!」」」「えっ?」



 えっ?いきなり、前線に?領主が自ら?

 他国との戦争でも無いのに?



「ぼさっと、してないで早くいくぞ!

 いやー!楽しみにしていたんだよな。

 家族で一緒に、魔物を狩れるのが!」

「えっ……!ええ。言ってましたね。そういえば……。」

「普通は、領主は前線に出ませんけどね。あ、私は足手まといなので失礼致しますね。」

「足手まといって大袈裟な……。でも、ありがとうございます。ジェフさん。」

「いえいえ。全然大袈裟では無いですよ。では……。」

「どうしたー?リック!早くいくぞ!」

「はっ……!はい!」



 --と、そんな感じで、父上の押しの強さに負けた俺は、父上や兄上達と一緒に、前線に出るのだった。



「ぜえ……、ぜえ……、ぜえ……。[ウィンド]![ウィンド]!」

「[ウィンドアロー]!」

「[ウィンドカッター]!」

「[ウィンドボール]!」


 

 ジェフさんが足手まといになるからと言ったのは結構正しかったのかもしれない--っと気づいた時には、すでに結構な量の魔物を倒してからだった。

 それはそれとして、今は兄上達が色々な技を使って魔物を倒しているのを見て、俺も見よう見まねでやってみる。

 なかなかに、使いやすい魔法ばかりだ。

 勉強になるなと、思っていたところ、魔物が父上を背後から襲った。



 --ギャアアアア!



「危ない!!」

「ふん!くだらん。[ウィンドクラッシュ]」



 --パアアアアアン!



 父上が[ウィンドクラッシュ]と唱えると、魔物が弾ける音がして跡形もなく粉々になった。



『今のは……、オリジナル魔法か!なかなかやるな!お前。』

「いえいえ。シルフ様。これくらい当然です。」

『個人が加護なしにオリジナル魔法を作るためには、相当な努力が必要だ!それこそ化け物級の魔物を倒すとかな……。久しぶりに、いいもの見れたぜ!』

「シルフ様。あ……、ありがとうございます!」



 父上はシルフに努力を認められ、感動している。それにしても、シルフに化け物って言われる魔物と戦って勝ったとか。

 強さこそ全ての脳筋で、自分の武勇をあまり話したがらない人だから知らないけれど、本当にとんでもない人なのかもしれない。



「ふむ。これで、魔物はあらかた片付いたか。リックがいたからか?いつもよりも楽だったな。

 そうだな……。では、アランとディラン、ノエルは事前に決めたところに行け。俺は、リックとこの町の領主について調べてくる。」

「「「はいっ!」」」

「リック!行くぞ!」

「分かりました!」



 これからが、本番のようだな。今日はどうやら、怒涛のスケジュールになりそうだ。

 そう思いながら、父上と俺は騎士団を連れて、領主の館に向かうのだった。




---------------------------------

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る