第18話 そっち側だったのか!

-side リック-




「これはこれはリック殿。家具屋の経営の調子はいかがかな?」

「とても順調ですね。」

「だろうね。我が家の別荘で、貴殿の家具を使わせて頂いているよ。妻が大層気に入ってねえ。また頼む。」

「ほっ……!本当ですか!ありがとうございます。」



 そう。うちの家具をお忍びで買いにくる貴族の客は多い。今話している人もその一人である。

 貴族位も、侯爵と高い。売り込みのチャンスだな。--とそんな事を思っていた時、「これより、陛下が入場します。」と言われて、話を強制的に打ち切られた。くっ……。



「やあ。諸君。ご機嫌麗しゅう。本日の主役。我が息子ウィリアムだ。」

「テイラー王国。第二王子のウィリアムだ。

 こうして公の場に出るのは初めてだが、よろしく頼む。」



 今日のお茶会は、身内に第二王子をお披露目すると言う名目である。

 なぜ、俺が錚々たるメンツの中に混じって、身内扱いなのかはすごい疑問ではあるが、前回の訪問時に王子の友人認定されてしまったようだ。



 国王の挨拶が終わった後は、セールストークを貴族相手にしていた。

 そんな時、「リック=シュタイン」こちらへと陛下に呼び出された。



「リック=シュタイン。第二王子の病気を治したというのは本当かな?」

「え……ええ。まあ、そうですが。」

「ふむ。そちらに関しては、病名も分からないため、それだけでは褒美は出せない。」



 まあ……、確かに。原因がハウスダストじゃなあ。そう思っていると、国王陛下は話を続けた。



「だが、お主はこの国で起こっていた数々の不正。それを、発見したという功績がある。

 それに、自力で商会を大きくしてみせた手腕は目を見張るものがある。

 よって、お主には、成人する15歳の時に男爵位を授けよう。」

「はっ……?」

「はっはっはっ……!そう驚くでない。

 元より、風の精霊王シルフを従えている人間を野放しにするわけにはいかないのだから。

 いずれ、隣国と接している領地を与え、辺境伯あたりになってもらうつもりだ。

 今日はその前段階だな。」

「は、はあ……。」



 話が急すぎて、追いつかないが、絶対王政社会ではしばしばこういうことも起きる。

 まさか、自分にそんなことが起こるとは思わなかったが。



「して、お主にはこれから、領主教育を受けてもらうため、王立学院に通ってもらう。」

「えっ……!?しかし、王立学園の入学試験は秋頃。もうすぐではないですか!今からでは間に合わないのでは?」

「問題ない。お前の審査は全て済んでいる。

 --ライ。」

「はっ!リック様は優秀です。通うのに問題ないとの報告書を提出いたしました。」

「……いつのまに。」

「実はこのライは、私が送ったスパ……オッホン。試験官として送っていたのだ!」



 今スパイって、言おうとしたな。うちがザルなの分かって、スパイって言おうとした。

 というか、ライ。お前そっち側だったのか。

 今回の公爵家代官掃除といい、店の経営の手伝いといい、公爵家の立て直しといい、国から派遣されて、いろいろ裏で暗躍していたのだとしたら納得する。

 俺を男爵に仕立て上げ、領主にしようとしていたのもお前、結構関わってそうだ……。

 つまり、なかなかの黒幕じゃねえか!



「これからも誠心誠意お仕えさせていただきます。リック様。」



 ……くっ。食えないやつ。



 そんな感じで俺は学園に行くことが決定したのだった。





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                -完結-

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