第12話 店の営業

-side リック-




 今日はお店の開店日である。



「順調そうだな。」

「そうねえ。」

「ええ。お陰様で。ありがとうございます。

 父上。」



 事前に父上に報告していたため、父上の知人や公爵家の関係者の方が来た。

 なんでも、家が綺麗になったおかげで、知り合いを家に招待しやすくなり、その時に真新しい家具ばかりの家を見てみんなどこで買ったか、聞いたそうだ。

 その際に、宣伝をしてくれていたおかげで、遠くからも人がたくさん来た。

 客が客を呼び、噂を聞きつけた商人も沢山来ているっぽいな。



 開店前からあまりにも長蛇の列だったので、現在は整理券を配り、人数制限をかけさせて頂いている。

 一応うちは、高級家具店というのがコンセプトだからだ。接客もとても大切である。



 その大切な接客は、次男のディラン兄さんと3男のノエル兄さんがやってくれている。

 彼らが自分から申し出てくれた。

 理由は、もし、家を出て、働かなくてはならなくなった場合のために、修行をしたいからだそうだ。もちろん、小遣い稼ぎ目的もあるらしい。

 家の財務が改善されて、ちゃんとした教育係がついてからは、2人の脳筋もかなり改善されたように思える。しっかりと将来の事について考えているようだ。



 家族全員が、厳しいマナー教師に接客や社交界での振る舞いなどを叩き込まれたので、今日もバッチリである。



「ところで、リック。俺たちも何か買いたいんだが?」

「えっ。ああー。ありがたいのですが、今ある在庫が無くなりそうで。

 父上の書斎は今日帰ってから片付けるつもりです。もちろん、オーダーメイドの家具を作るつもりでいます。」

「あら?疲れてるんじゃないの?今日は早く帰って寝なさいよ。」

「そうだな!寝不足は肌の大敵ともいうらしい。どうせ、明日も混むんだ。そこそこに切り上げ、早く帰ってこい。」

「わ、わかりました。そ、そうですね。ありがとうございます。」



 肌に大敵……そんな言葉が父上から聞けるくらいにはマナー教師に調教されているらしい。ガクガクブルブル……。





 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢





 帰ってから、俺は早速父上の書斎を整理する事にした。

 前々から、やりたいとは思っていたが、他にやるべきことが山程あったため、今日まで手付かずの父上の部屋、何が出るか楽しみである。



「ふむ。[クラフトスキル]!解体。[クラフトスキル]」



 流石にただのカラーボックスが父上の部屋に置いてあるのは少しなあと思ったので、スライド式の蓋がつき、高級感あふれる……カラーボックスを作った。

 まあ、結局カラーボックスが1番便利。

 ついでに、机の収納も多くしたり、椅子も疲れにくくしたりと、父上の労働環境は結構改善したように思える。



「ついでに、書類も整理しますね。」

「ああ、分かった。セバス、ライ。よろしく頼む。」

「「かしこまりました。」」



 セバスは父上の執事である。出来るおじいさんという感じの人だ。

 政治や経済に関して疎い父上が、今まで、なんとかやっていけたのも、彼のおかげである。

 そんな彼は、仕事を他の人たちに任せて、最近はライなど新しく来た従者の指導にあたってくれている。



 そして、この2人に書類の整理を手伝って貰う理由。

 それは、代官の不正をチェックしてもらうからである。

 今まで、セバス1人で仕事をこなしていた時は、多すぎて、詳細なチェックは出来ていなかったらしい。

 ならば、財政に詳しいライもいる事だし、書類整理のついでにやってしまえという事だった。



「何もなければ良いけど……。」

「いえ。おそらく、確実に何かあると思われます。

 普通、これだけ税収があるところの領主がこんな貧乏生活を送ることはないですから。

 クククッ……!リック様。この仕事を私に任せて頂きありがとうございます。

 元王宮勤めの者としての腕が鳴ります。」

「あっ……はい。そうなんだ。」





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