第13話 一足先に!
-side リック-
「おおっ!事前に予想していたとはいえ、まさかこれ程とは。」
「うん。人数多すぎるね。……とりあえず、基準を決めて、酷い人から取り締まる。
その後、徐々に締め付けをきつくするという感じでいい?」
「ええ。それが良いですね。」
「まずは、こことこことここに、騎士団を派遣する。ここの3つは特に酷い。」
「ええ。その後は、他の領主に関しては領法に基づいて、適切に処理しましょう。」
「うん。」
案の定、沢山出てきたいくつもの不正。それを行った責任者とその一族を退治するために、今はライと一緒に計画を練っている。
「セバス。俺は何をすればいい?」
「そうでございますね。旦那様は、これから書類に沢山サインしていただきます。
忙しくなるのは確定なので、とりあえず、休んで覚悟しておいてください。」
「なっ、なんか物騒な事を言っているような気がするのだが。はあ……、お前がいうなら本当のことなのだろうな。分かった。」
「ええ。私は長男のアラン様に、騎士団を派遣する準備をするように伝えておきます。
ディラン様とノエル様にも、すぐに家に戻って支度するようにと伝えておきました。」
「分かった。」
後ろでは、父上とセバスが話している。
父上は何も分かっていなさそうだが、これから、彼の労力を考えると、ご愁傷様としか言えない不正の量だ。
まあ、領主としての仕事を防衛以外で何もやっていなかった事を思えば……、自業自得ではあるのだが。
それはそれとして、おそらく、明日。何人もの貴族家が没落するだろう。
しかし、この不正の量。それだけで済めば良いのだけど。
「リック様。不味いかもしれません。」
「ん?」
「ほら、ここの町、レーグラードと隣の町。
魔物の防衛費を不正に削減しているようです。魔物の量も、減っているようですが、明らかに、不自然です。」
「ああ……、ここか。最近ダンジョンが見つかったところだな。」
「ええ。冒険者が増えたとはいえ、彼らのほとんどはダンジョンに潜るのが優先で外の魔物にはあまり興味が無いと聞きます。」
「確かに。」
「にも関わらず、これだけ魔物が減っている。
考えたくはないですが、これは……。」
恐れている最大の事態のことを、ライが明かそうとしたちょうどその時、騎士団長がこちらに急いできた。
「大変です!レーグラード周辺で、スタンピートが発生しました!今すぐ、騎士団の派遣の許可をお願いします!」
……気づくのが、一歩、遅かったか。
「なに?分かった。リック。着いてきなさい。
お前も、一緒に行こう。」
「へっ?はい!」
「セバス。お前はディランとノエルを連れて来い。俺はアランとリック、騎士団を連れて、先に行く。」
「かしこまりました。お気をつけて。」
「ライは、この屋敷にいて、対応しろ。
何かあった時頼む。いざとなったら、妻に助けを求めろ。」
「了解いたしました。」
「では。行くぞ。リック。」
「は、はいっ!」
急に、仕事モードに切り替わった父上が、矢継ぎ早に指示を飛ばしていく。
我が公爵家としての最大の任務--それは、防衛である。
常に危険なところを任されているので、こういうところは流石本職……という感じである。
父上が自ら行くのは、当然で、家の者が一緒に行くのも分かるが、まだ実践経験が無い息子をいきなりハードな戦場に連れて行くか?……とは思うが仕方がない。
「シルフ。」
『おう。分かってる。任せろ。[浮遊]。』
「えっ!?えええーー!」
シルフがそう唱えると、俺に翼が生え、空に浮かび上がる。
「どうした!?リック!……って。
ええええーー!」
『俺様にしてみればこれくらい朝飯前だぜ!
お?スタンピートはあそこだな?
旦那達。俺たちは、先に行ってるぞ。』
「あっ……ああ。頼んだ。」
『よし!行くぞ!』
「ちょっ……ちょっと待っ……!」
『安心しろ!悪いようにはしない!』
「既にしてるだろーー!」
俺の声その声は、風圧でかき消されていたのだった。
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