第9話 商業ギルド
-side リック-
翌日は……物理的に死んでいたので、翌々日。俺は商業ギルドに訪れていた。
先日、ウィリアム様にアドバイスを貰ったためだ。
「父上も母上も、ギルド登録には大賛成って感じだったしなあ。」
「まあ、あなたの性格はともかく、あなたの発明した品々はどれも一級品である事は間違い無いですからね。早く登録するに越した事はないでしょう。」
「俺ってそんな性格悪いかなあ?」
「悪くは無いですよ。どちらかと言うと、問題児って感じです。」
「それはまあ……子供だし?」
「はあ。その頭をもっと貴族的に使えれば良いのですがねえ。まあ、そこら辺は調きょ……ゴホン。教育によって改善していけばなんとかなりますか。」
「今、調教って言おうとした?
調教って言おうとしたよな?」
「言い間違えただけです。申し訳ございません。飼い慣らしたいとは思っていますが。
あっ。」
「あっ。今のは……。」
『お前ら……どっちもどっちだ。
それに、もうそろそろ着くぞ。』
「うん……?そうですね。」
「は……?あ、本当だ。」
どっちもどっちだと言う言葉は聞き捨てならないが、商業ギルドが見えたので、ここは一時休戦である。
「私が先に参りますので。」
「うん。分かった。」
ザワザワ……。
事前にアポは取っていたはずだが、ライが行くと大騒ぎになっているようだ。
商人は基本的に接客業大好きな人間の集まりである。貴族への礼儀やおもてなしに関しては、彼らの右に出る者はいない。
おそらく、それも裏でかなりの事前準備があるからそうなっているのだろう。
今回は急だったからなあ。まだ、準備出来ていないのかもしれない。……悪いことしたかも。
「リック様。もう大丈夫です。」
「分かった。」
中に入ると、数人の偉い人がやってきた。
大したことをやるわけでは無いのに、大層なもてなしにプレッシャーを感じる。
戸惑っていると、1番偉そうな人が声をかけてきた。
「いらっしゃいませ。リック様。
私はギルドマスターのベンと申します。
この度は我がギルドに来ていただき、誠にありがとうございます。こちらは、部下のリンとレンです。」
「副ギルドマスターのエリーです。よろしくお願いいたします。」
「同じく、副ギルドマスターのレンです。」
おうふ。トップスリーがお出迎えか。
税を治める領主の息子だから、この対応なのかもしれないが……、父上はギルドとは良好な関係を築いているようだ。
しかし……父上にこのレベルの頭の良さそうな商人を相手に出来るかと言われれば、確実にカモられてそう……だけど……。
うん。考えるのやめようか。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「こちらでございます。ここから先は私とリック様、シルフ様のみでございます。エリーとレンは見張りを頼みます。」
「かしこまりました。」「はい。」
ベンさんはエリーさんとレンさんに見張りを任せて、部屋の中に入る。
「ここに、発明した商品を置き、商業神様に祈れば、発明者登録は完了です。」
「ありがとうございます。ライ。」
「はっ!」
おお。ライがいつになく従者っぽい。
猫なんて被れたんだ。
--っと、それはともかく、お祈りしよう。商業神様。お願いします。
ポワアアアア……!
『--分かったわ。この世界に来てくれてありがとね。リック君。素晴らしい品々をこれからも生み出してね。
--それでは、良いクラフトライフを。』
「えっ……、今のは!?」
「おお……!素晴らしいですね。これだけ、強い光を見たのは初めてです。
きっと、神に愛されているのでしょう。
さすが、シルフ様の愛子ですね。」
そう言っているライは、口では誉めているが、内心では驚きを通り越して、呆れている様子を隠しきれていない。
『ああ。この光といい、リックの周りといい、居心地が良かったのは、そういうことだったのかもしれないな。商業神の声も聞こえたし、幸先いいな!』
「ああ。やっぱりあれは商業神様の声だったか。そんなことってあるんだね。」
「いっ、いえいえ。聞いた事が無いですよ。
--ここだけの話ですが、万が一、そう言った事が、教会にバレたら厄介です。
お気をつけください。
特にリック様の家は、大貴族ですので、国と教会などのパワーバランスなどにも影響してきます。ただでさえ、シルフ様のご加護を授かった事で、目をつけられているので。」
「そ、そうなんだ。わかった。」
教会……というと、洗礼式で行ったっきりだな。あんまり、良い思い出はない。
「そう不安そうにしなくても、別に命を狙われるとかでは無いですけどね……。ただただ、面倒なだけです。」
「この商業神様の祭壇も、教団の神官様が無料で作ってくださいましたし、良い方ばかりですよ。少々……熱心すぎる方が多いのは事実ですがね。」
「そうなんですね。」
よく分からないけど、とりあえず関わらないようにしようか。
「ふむ。それはそれとして、リック様。
これだけ素晴らしい品々があるのですから、ご自身でお店を持ってみませんか?」
「えっ……?」
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