第8話 やりきったぜ!

-side リック-




 ウィリアム様のお部屋は煌びやかな雰囲気である。家具も基本的に木目調のアンティークのものばかりだ。

 ただ、機能面や健康面には配慮されていないので、うまくモダンなのを取り入れて、利便性を高めるのが俺の今やるべき事だろう。



「リック様、頼むから、ほどほどに……、ほどほどにしてくださいよ……。」

「残念だったな。ライ……もう遅い。」

「グハッ……!」

 


 フハハハハッ……!すまんな。悪気しかなかった。次からは礼儀作法の勉強楽にしてね。そう目でライに訴える。



「そんな目をしても……はあ。仕方ない。帰ったら、課題を倍にしますか。」



 あっ……ミスった!これ逆効果なやつだ。どうしよう。

 まあ、何とかなるだろうし、……後のことは後で考えるか。そんな無責任な事を思いながら、部屋を再度見渡してみる。



 まず、部屋にある毛布とクッション。

 こんなにいらなくない?うん。絶対いらない。それに、こんなゴワゴワとしてるの絶対ウィリアム様の体に良くないな。

 


「というわけで、この無駄にあるクッション片付けますね〜。ついでにもっといいやつ置いてきます。[クラフトスキル]!ほれっ。」



 そう言って、俺は蓋付の木のバケツを作って、その中に毛布やクッションを全て入れた。代わりに置いたのは、薄い毛布と綿のクッションカバーがついたクッションである。



「何がというわけで……、ですかっ!というか、扱い方っ!雑です、雑!」

「まあまあ、これも王子の体調を治す為ですって!」

「絶対嘘ですね……貴方がやりたいだけでしょう?」

「そ、そんな事ないもん。」



 ジトーー。



「はあ……、まだ、ギリギリ貴方が可愛いと呼べる年齢で良かったですね。そんな事、大人になってからそんな事言ったら、火炙りの刑にしていますからね?」

「え!?あ……良かった。あははは……。」



 ちょちょちょ……!それは、まずい。非常に、まずい。今の年齢は、前世から数えると35歳。もしバレたら、そりゃもう……非常にまずい。

 ライには、絶対前世をバレないようにしよう。笑顔で焼肉コース回避のためだ。

 万が一バレたら、その時はシルフを頼ろうか。うん、それが良さそう。



『んん……?なんか俺様。ただならぬ事に巻き込まれてる予感がするんだが?』



 気のせい気のせい。





 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢





『おおー!やりきった感あるな!』

「ああ……ウィリアム様。これで大丈夫だと思います。

 おそらく、次第に体調が改善するはずですが……期待はしないでください。

 あと、なるべく外に物を出さないように、片付けてください。」

「コホン。わかった。心なしか、さっきよりも体調が楽になった感じもするよ。

 ありがとう。今日はもてなしができなくてすまなかった。もしよかったら、次回もてなさせてくれないか?」

「もちろんです。元気になったら、ウチにも遊びに来てください。」

「ああ。もちろんだ。」



 その後、外に出っ放しの洋服類もクローゼットを付け、ゴミ箱にも蓋をつけ、全て片付け、王城を出た。



「……。」



 ところで、さっきから無言のライがすっごい怖いんだが。ずっと笑顔なのも。



「なあ、ライ……。」

「リック様。最後に何か言い残すことはありますか?」

「あっ。これ死んだやつですか?」

「ええ。その通りです。」

「全肯定かよ?」

「ふっふっふっ。言いたい事はそれだけですか?なるほど……分かりました。」

「待て待て待て。何をだよ!?」


 

 その日、家に帰った俺は両親に沢山叱られ、ライに貴族としてのマナーを叩き込まれるのだった。うん。死ぬかと思った。





------------------------------

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る