第7話 ハウスダストから王子を守れ!
-side リック-
「ウィリアム様。とりあえず、お部屋をお片付けしますね。」
「は、はあ。」
ウィリアム様の部屋に入った俺は、本人に許可を取る前に部屋を片付け始めていた。
彼の病気の原因はおそらくハウスダストアレルギーだろう。
一刻も早くその原因を取り除かないといけないという使命感からの行動である。
ハウスダストの原因は大半が繊維である。
衣服や寝具、絨毯はもちろんのこと、本やノートなどの紙や、ティッシュなどからも意外と出る。
おそらく、ウィリアム様は勉強家なのだろう。本が部屋の中に沢山ある。
本に囲まれた生活をしている……それが裏目に出てしまった形だ。
したがって、まず、大切な事はそれらを出来るだけ外に出しておかない事だ。
もちろん、捨てられるのだったら、それが一番良いだろうが、この世界では貴重な本をそう易々と捨てるわけにはいかないからね。
本の場合だと、本棚にガラスの扉をつけるだけでもかなり違う。なんか言われる前に、勝手にやってしまおう。
「[クラフトスキル]」
そう唱えながら、ガラスの扉をつけるイメージをすると、扉がついた。
「なっ!リック様。いけません。」
今の今まで黙って後ろで、控えていたライが慌て出す。
「大丈夫だって。ですよね。王子様!絶対こっちの方が格好いいに決まっています!」
驚いた様子で、目をパチクリさせる王子。
一瞬目があった後、次の瞬間弾けるような笑顔で笑った。
「あ、あはは!そうだね。いいよ。別に。
部屋を自由に改造してくれても。
面白そうだし。」
よっし。ゴリ押し成功。
あとは既成事実さえ作ってしまえば、完全犯罪である。
「ではでは……続きを。あいでっ。」
「全く。悪戯がすぎますよ。リック様。
すみませんでした。殿下。」
「いえいえ。完成。楽しみにしています。」
これはもう、思う存分やってやろう。
やっふ〜。実は床をフローリングに変えるとかは、遠慮しといた方がいいと思ってたんだよね〜。でも、やってもいいぽいし、やってしまえ。
思う存分、部屋を改造した方が、ウィリアム様も体調の回復も早いだろう。
「ほどほどにしてくださいよ。リック様。
あ、これはもう聞いてないやつだ。
はあ……。レオ様にどうやって報告しましょうか。」
そうそう、困るのは使用人だけだ。
頑張れ。ライ。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「[クラフトスキル]修復、修復、修復!」
うん。これで、床や壁の部分は埃が大分溜まりにくくなったね。
「おおー。優秀なクラフトスキルの使い手だとは聞いていたけど、まさかこれほどとは。
流石、四大精霊王シルフが認めただけのことはありますね。」
『おう。お前、分かってるな。』
「ええ。この床や壁の新しい製法……商業ギルドに登録したら儲かるかもしれませんね。
その、ガラスの扉が付いた本棚とかも。
素晴らしい発明です。」
「ほ、本当ですか!?」
「ええ。」
心なしか、ウィリアム様もさっきより顔色が良くなっている気がする。
「では、これが終わったら、行きます。」
「え?まだ終わってないんですか?」
「そうですね。本番はこれからです。」
次は、ここに合う家具を作っていくか。
良い片付けはいい家具からだ!
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