第4話 お祭り騒ぎ
-side リック-
「はい。運んだ運んだ〜。」
「これもだ。これも!」
今日も今日とて、暑苦しさマックスなうちの家庭。それもそう。母上の部屋のものを運んでいるのはうちの騎士たちだからだ。
領民からそこそこの税収入は得られるものの、軍事にはお金がかかる。
薄々お気づきだろうが、端的に言うと、うちはド貧乏だった。
使用人も最低限しか雇えないので、貴族にしては珍しく自分のことは自分で行う。
手伝うとしても、騎士見習いの人たちにお願いする事が多い。
今騎士達になにをお願いしているかというと、ボロボロの家をクラフトスキルで修復する準備である。
昨日の本棚事件のようになってしまったら困るからね。持ち物を念のため全て外に出しているので、結構な大仕事である。
あのあと、床を修復できたから、壁や天井もできるだろうと思ってやってみた。
無事成功したので、完璧に修復できる自信はある。
というか、家の至る所が危なそうだからすぐにリフォームしたい!そう思い、手はず通り、早速母上の部屋から始めることにした。
「よしっ。持ち物は全て運べたな。
これなら大丈夫そうだ。
[クラフトスキル]修復。」
俺がそう唱えると、部屋の床と天井全てが変わった。床はボロボロの木からフローリングに。壁と天井は白い壁にだ。
「「「「「おおおーーー!!」」」」
周りの騎士たちもとても喜んでいる。
俺は薄々、気付いていたのだ。
ここの床が頻繁に抜け落ちて、その際に騎士たちが驚異的な運動神経で、避けていたのが普通ではないということを。
前世の記憶が戻るまでは、見て見ぬふりをしていたけど。記憶が戻ってからは早く解放してあげたくて仕方がないな。
「よし!この調子でどんどんいこう。」
どうやら、俺の魔力は通常の人よりもかなり多いらしい。
寝落ちたあと、夜中に目が覚めて、廊下と天井は全て修復したが、魔力が全く切れなかった。
まあ翌朝、鐘の音で起きて、ぼーっとしていた時に至る所から発狂が聞こえて目覚めは最悪だったから、夜中に作業するのはもうやめようと思うけども。
ともかく、休憩を挟みながらだったら、今日中に他のところも全て終わらせる事ができるのでは無いかと思う。
「おおっ…!!きたか。頼む!!」「おおっ…!!きたか。頼む!!」「おおっ…!!きたか。頼む!!」
兄たちから、全く同じ歓迎を3人分受けて、修復と熱血をこなし、最後に父上の部屋。
熱血ラスボスの登場である。軽くいなせれば良いのだけれど……。
「失礼します。」
「おおーーー!リック!!
ファンタスティックッッッ!!」
「失礼しました。」
--バタンッ。
待て待て待て。これは聞いていない。
普段はむしろ、兄上達よりも声のトーンは低めだ。内に秘める熱血が凄すぎて面倒臭いだけで。
だけどこれは、大丈夫かな?
気を取り直して、再びドアを開けると、いきなり抱きつかれた。暑苦しい〜!
「リック!!よくぞ……!!よくぞやってくれた!!私は嬉しい……!!この屋敷がここまで綺麗になるなんて。
不甲斐ない話、修理代にかかる費用は年々増加していたのだ。なんとか削減をしようと交渉したが……それも叶わず。
大金をかけて再び屋敷を立て直そうと思ったが、借金地獄になりそうでそれも踏み出せなかったのだ。」
そうそうこれよこれ。そういえば、こういう感じの熱血だった。……さっきのは見なかったことにしよう。
それにしても、ああー。なるほどな。と思わされた。
うちの父親は決して、無能ではない。むしろ、カリスマ性や政治力はとてもあった。
だけど確かに……金勘定は苦手そうだな。
部屋を修復がてら、溜まってる書類も片付けてあげよう。ついでに、できる事があれば、アドバイスもしてあげると良いかもしれない。それより、まずは……。
「父上……!!苦しいです、死ぬ……!!
死にます。俺っ。今から……!!」
「ああ。すまぬな。
嬉しくて思わずつい……な。それにしても、相変わらず、リックは大袈裟だなあ。」
ワシワシと父上が俺の頭を撫でる。
ぜんっぜん、大袈裟ではないです、父上。
首もげますもげる……とは悲しんでしまうから言えない。ここは笑顔でゴリ押しだ!
「あはは…!父上の部屋も綺麗になりますよ。[クラフトスキル]修復。ほらっ!!」
「……!!やはり、お前は天才だ!!
生まれて来てくれてありがとう」
「イデデデデデ……!!
……?」
「ああ、ごめん。どうした?」
おかしい。最初は痛かったはずなのに、途中から痛みを感じなくなった。
『なかなか見事な魔法だったな。
感謝するぜ!』
「「……!!」」
なにやら、頭の中に声が流れて来た。
-------------------------------
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます