第14話 控え目に言って人間のクズ。

「もぅ、彰人あきひと! まちくたびれたよぅ♪」


 クラスで一番やらせてくれそうなギャル、新田あらた朱莉あかりが、西野にしの彰人あきひとの腕をからめとる。


「悪いな、ちょっと野暮用があったもんでよ」


 西野にしのはそう言いながら、クラスで一番の巨乳の、佐々本ささもとらんを見やる。

 たちまち、佐々本ささもとの頬が赤く染まっていく。


 え? ひょっとして、野暮用って佐々本ささもととセックスしてたってことか!?


「そうみたいだねー。どうりで新鮮なイカ臭さを漂わしてたわけだー」


 レヴィアたんが、頭の上であきれ気味につぶやいた。


 西野にしのは、頬を染めている佐々本ささもとを見ながら、これみよがしに、腕に絡みついている新田あらたの制服の中に手を忍び込ませる。


「やん……大胆! ま、彰人あきひとなら全然オッケーだけどー」


 そのやりとりの一部始終をじっと見ていたクラス1の美少女、黒沢くろさわ雪奈ゆきなが、


「……うらやましい」


 と、つぶやいた。


 なんだ? なんだ?? なんだ??


 本当に、西野にしのがモテている!

 夏休み前まで、俺と同じスクールカーストの最底辺にいた西野にしのとは別人だ。


 西野にしのは、ビッチギャルの新田あらたのおっぱいを揉みながら、スタスタと窓際の一番後ろの席へと歩いていく。

 新田あらたの元カレ、北村きたむらしゅうの席だ。


「よう! 北村きたむら、どんな気分だ?

 彼女が寝取られるってのはよう」


「…………」


「はは! だんまりかよ!!

 そういえば、あの時もそうだったよな。カラオケ屋で、俺と新田あらたがセックスしているときも、指をくわえてだんまりだったよな!」


「……………………」


 北村きたむらは、さっきからずっと頭を抱えている。

 ビッチギャルの新田あらたが、元カレの北村きたむらに吐き捨てるように言い放った。


「あーあ。カッコ悪い―!

 アタシ、なんでこんな男とつきあってたんだろー」


 ガタン!!


 突然、北村きたむらが席を立つと、西野にしのが「ひっ!」と軽い悲鳴をあげて身体をちぢこませる。でも、口先だけはやたらと挑発的だ。


「な、なななな、なんだよ! なにか文句あるのかよ!!」


「……………………………」


 北村きたむらは、大粒の涙をためて教室からにげだしていく。

 西野にしの北村きたむらの背中を見ながら「ふぅ」とため息をつくと、笑いながら教室から消え去った北村きたむらをののしり始めた。


「あひゃひゃひゃ! だっせー!

 惨めだねー。あーなったら人間終わりだよ。

 北村きたむらは、人間のクズだな!!」


 西野にしのの下品な笑い声が響き渡る。


 俺は心の底から思った。

 西野にしののやつ、あいつは人間のクズだな!!

 頭の上から、レヴィアたんの声が響く。


「だよねー、完全にサキュバスの力におぼれちゃって。

 あーなったら人間おわりだよねー」


 ・

 ・

 ・


 その後、俺たちは体育館で校長先生の長い話を聞いた後、再び教室にもどっていた。


 西野にしのは、校長先生の話を聞きながら、クラスで一番の美少女の黒沢くろさわのおっぱいをもみつづけ、教室に戻った今は、クラスで一番の巨乳の佐々本ささもとのおっぱいをもみつづけている。


 西野にしののやつ、どういう神経してるんだ?


「知りたい? 西野にしのの頭の中」


 レヴィアたんの声が上から聞こえてくる。

 知りたくないよ! あんなクズ野郎の思考なんか!!


「そー遠慮しないで、てか、聞かなきゃ後悔すると思うよー」


 なんだよ、後悔って。

 そう言った瞬間、俺の頭の中に、西野にしのの声が響き渡った。


「ったく、早く学校終わんねーかな。そうすれば、佐々本ささもとのデカパイに直接むしゃぶりつけるのに……」

「その子もいーけどさー、もっと新しい娘も魅了しちゃおーよ♪」


 ん? 西野の声の他に、もうひとり女性の声がひびきわたる。

 これって、西野にしのにとり憑いているサキュバスか?


「アタシのチカラは、彰人あきひとがモテればモテるほど、パワーアップするんだから! どんどん魅了してもらわないと」


「リリム……お前って本当にどん欲だな。まー、次のターゲットも目星をつけてるけど」

「だれだれ?」

「隣のクラスの乙部おとべ澄香すみか


 な!? 西野にしのの野郎!

 今度は、澄香すみかを狙っているのか!!


「ふーん、どんな娘だろ、ちょっと見てこよっと」


 そう言うと、西野にしのに憑いたサッキュバスのリリムは、身体を半分壁にめり込ませて隣の教室をのぞいている。


「えー、あの地味な娘? しかも貧乳じゃん!!

 どーしてあんなさえない娘を魅了するの?」


 リリムのめちゃくちゃ失礼な質問に、西野にしのは下劣な返答を返す。


「あの女、あー見えて彼氏持ちなんだよ。あそこにいる、真面目メガネの」


 西野は、いぬいを見る。


「へー、そうなんだー。いかにも真面目そーなメガネだね」

「だろ、きっとまだ童貞だと思うんだよな」

「ってことは、澄香すみかって娘も処女ってことだね♪」


「その処女を、彼氏のいぬいの前で魅了して寝取るって計画さ」

「あははー、彰人あきひとはホント、良い性格してるよ。悪魔のアタシもどんびきするくらい」


 残念! 澄香すみかはすでに処女じゃない、しかも俺が寝取り済みだ!!

 って問題はそこじゃない!


 澄香すみかを、いぬいから寝取るだって!?

 ジョーダンじゃない!! しかも、こんなゲス野郎に澄香すみかを汚されてなるものか!! 絶対阻止しないと!!!


「さすが、流斗りゅうとは、幼馴染と友達思いだねー♪」


 レヴィアたんがニヨニヨと笑っている。


「せっかくだから、わたしも手伝うよー。なんか、西野にしのってやつを張っておけば、美味しい嫉妬に出会えそうだし。あと、なーんか悪い予感すんだよねー」


 悪い予感?

 おいおい! まさか澄香すみかが寝取られるってことか?


「ちがうちがう! 魔界こっちの事情!」


 魔界の事情?


 さっぱり意味が解らない。でもまあ、レヴィアたんが協力してくれるなら心強い。俺は今日一日、西野にしのを見張ることにした。

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