第13話 クラスの女子がサキュバス被害に遭いまくっています。

 校門をくぐった俺たちは教室に向かって歩いていく。そしてそのあとを、レヴィアたんがふわふわと浮かびながらついてくる。

 

 どこまでついてくるんだよ!


 俺は心の中で強く念じて、後ろを向いてレヴィアたんをにらみつけた。


「どこまでって、教室までにきまってるじゃないー。

 サキュバスが紛れ込んでるかもしれないしー」


 学校にはいないんじゃないか? 先生や学生に化けるのは無理があるだろう?


「んー? どうだろう? 校長先生とか理事長を魅了すれば、なんとかなるだろーけどさ、てか流斗りゅうとは根本的にサキュバスを勘違いしているよー?」


 どういうことだ? 今までのサキュバスはみんな人間に惚れて実体化してたけど……?


「それが、そもそもの認識違い。人間に惚れちゃうなんて、小物のあかし。

 本物のサキュバスってのはね。もっとタチの悪い悪魔なんだよー」


 レヴィアたんは話をつづける。


「サキュバスの魔力の源って、人間の男の精子なんだけどさー。その精子ステータスが優れていればいるほど、サキュバスの魔力もあがっていくんだよー」


 ちょっとなに言ってるかわからない。


「よーするに、モテる男の精子の方が、強い魔力を得られるってこと。

 だからさ、サキュバスはとりついた男をそそのかして、魅了で色んな女を誘惑させて、セックスさせまくるのー」


 ふーん、そーなのかー。

 わかったような……わからないような……。


 俺といぬいは、クラスの違う澄香すみかにあいさつをして、教室のドアを開ける。

 教室にはすでに結構な生徒があつまっている。そんな生徒たちを見て、レヴィアたんは喜びの声をあげた。


「におう! におうわ! 発情したメスのにおいがぷんぷんする♪

 サッキュバスの魅了の力に洗脳された女がウヨウヨいるわ!」


 ま、マジかよ!


「ほら、窓際の、いかにもイカ臭そうなギャルでしょ。

 あと、その後ろの席の、わりと綺麗な女の子からもイカの臭い。

 そして、後ろの席の地味メガネの隠れ巨乳! この娘は洗脳されたてね。新鮮なイカ臭さがただよってるよー」


 クラスで一番やらせてくれそうな、新田あらた朱莉あかり

 クラスで一番の美少女の、黒沢くろさわ雪奈ゆきな

 クラスで一番の巨乳の、佐々本ささもとらん


 なんてこった、クラスの人気の女子ばっかりじゃないか……。

 でも、サキュバスが誰についているかわかった気がする。

 多分、サッカー部の北村きたむら……じゃないかな?


 北村きたむらしゅうは、新田あらた朱莉あかりの彼氏だ。

 そして、壊滅的なクズ野郎だ。

 クラスのとある男子を、テッテー的にいじめまくって、自分をスクールカーストのトップだと勘違いしている、クラスのはなつまみのモラルぶっ壊れ野郎だ。


 うん、決まりだ。

 悪魔に魂を売るなんて外道な行為ができるのは、北村きたむらしゅうくらいしか考えられない。


 パチパチパチ。


「さっすが流斗りゅうとなかなかの名推理だねー」


 いやー、それほどでも?


「でも、残念ですがハズレでーす♪

 てか、北村きたむらしゅうならとっくに登校してるよ」


 は? あのクズが登校しているのに、気づかないわけない。


北村きたむらしゅうなら、自分の席で大人しくしているよー」


 んな馬鹿な! 俺は、振り向いた。

 窓際の一番後ろの、北村きたむらしゅうの席を見た。


 北村きたむらしゅうは、自分の席で猫背になって、机にひじをついて頭をかかえている。


 え? なんで?? 信じられない。何やってんだあいつ!


 だって、いつもなら北村きたむらが登校したら、ビッチギャルの新田あらた朱莉あかりが、すぐさま北村きたむらにすりよっていくはずだもの。そしてクラスの目をはばからずに、キスしたり、おっぱいを揉んでいるはずだもの。


 なのに、新田あらた朱莉あかりは、北村きたむらをガン無視して、さっきからずっと窓の外を見ている。


 誰かが登校するのを待っているのかな?


「だと思うよー。そいつが、新田あらた朱莉あかりを魅了した、つまりサキュバスにとり憑かれている男のはずー」


「あ! キタキタ!! 彰人あきひとー!!」


 え? 彰人あきひと??


 俺は窓際を見た。新田あらた朱莉あかりは、目をハートにして手をブンブンとふっている。

 黒沢くろさわ雪奈ゆきな佐々本ささもとらんも、窓際にかけよって新田あらたと一緒に目をハートにしている。


 俺は、窓際に駆け寄った。そこには、校舎に向かって歩いている男子生徒と、蝙蝠みたいな羽と尻尾が生えた、とんでもなくきわどいコスチュームを着た、ピンクの髪のおねーさんがフワフワと浮いている。あれが……サキュバスか?


「そー、実体化してない時のサキュバス。

 でもってそのご主人様が、あの彰人あきひとで間違いなさそうだねー」


 レヴィアたんは、淡々と説明してくれる。

 でも、俺は信じられなかった。


 だって、あの、サキュバスをつれてあるいている西野にしの彰人あきひとは、今ここで頭を抱えている北村きたむらしゅうに、毎日と言っていいほどイジメられているヤツだったからだ。

 

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