第12話 二人きりの部活はセックス三昧です。

「行ってきます」


 俺は玄関を出た。今日は九月一日。今日から新学期だ。

 夏休み中は、レヴィアたんのサキュバス探しに引っ張り回されて、自転車で走りどおしだった。

 まあ、フードデリバリーも一緒に出来たから、ふところはそれなりにうるおったけど。あと体力もそれなりについた気がする。


「あっちの耐久力も随分と強くなったよねー」


 レヴィアたんが、ふわふわと宙に浮かびながら、俺についてくる。


「なんで学校についてくるんだよ……」

「もちろん、サキュバス探しに決まってんじゃん!

 そのために、頑張って昼夜逆転生活してるんだよ。

 おかげで毎日6時起きの10時就寝!

 悪魔にあるまじき、とっても健康的なライフスタイルだよー」


 学校にサキュバスなんているのか? 生徒や先生になりすますのって大変な気がするけど。俺がどうでもいいことを考えていると、


「オハヨ! 流斗りゅうと


 となりに住む、幼馴染の澄香すみかが声をかけてきた。


「はよー」


 俺と澄香すみかは並んで学校に行く。


 澄香すみかの処女を寝とって(澄香すみかにはその記憶がないけど)、レヴィアたんに嫉妬を奪い取られてからというもの、俺は、信じられないくらい、澄香すみかと普通に接することができるようになっていた。


流斗りゅうとのお父さん、夏休み、帰ってこなかったの?」

「あー、父さんが帰るんじゃなくって、母さんが、今ベトナムに行ってるよ。ベトナムは9月の1日と2日が祭日だからさ、父さん、それと合わせて長期休暇をとったみたい」


「へー。日本のお盆みたいなものなのかな?」

「いや、建国記念日らしいよ」

「ふーん。そうなんだー」


 俺たちは、たわいもないことを話しながら学校へと向かう。


「おはよう! 澄香すみか壬生みぶ


 曲がり角から現れたのは、俺の親友で、澄香すみかの彼氏、いぬいだ。

 いぬいと合流して、俺たちは三人横並びになって歩いていく。


「そーいえばさ、学園祭に向けた文集と、演劇部のシナリオって進んでんの?」

「え? あー、シナリオの方は夏休み中に欲しいって言われたからなんとか完成させたけど、文集はちょっと手こずっててさ」


 いぬいがバツの悪い返事をする。


「なんだよ。あんなに張り切ってたのに。部活だって毎日やってるんだろ? わざわざ学校の部室まで行って」

「う……うん、まあ……そうなんだけどね……」


 今度は澄香すみかが歯切れの悪い返事をする。


「そんなんで大丈夫かよ。あんなに新入部員が欲しいって言ってたのに」

「……………………」

「……………………」


 澄香すみかいぬいは、黙りこくってしまった。


(ふーん、なるほどねぇ……部員が増えたら都合がわるくなったってことか?)


 さっきからずっとついてきているレヴィアたんが目を細めてニヨニヨと笑っている。


 ん? どういうことだ??


(んもー、流斗りゅうとは本当におこちゃまだなー。誰もいない部室でふたりっきりなんだよ? ヤリたいほうだいじゃない!)


 そう言ってレヴィアたんは、左手で輪っかを作って、右手をしゅぽしゅぽと上下運動をさせる。


「マジかよ!?」


 俺は思わず声をあげてしまった。


「ビ、ビックリしたー!」

「驚かせるなよ、壬生みぶ?」


 し、しまった……澄香すみかいぬいが怪しんでいる。でも、ビックリしたのはコッチの方だ。この二人、学校でセックスしてるのか……。


(そ、しかも最低三回はやってるらしいよ! いやー若いっていいねー。青春だねー)


 頼む、レヴィアたん、少し黙っていてくれ。


(ほー、澄香すみかちゃん、騎乗位が好きらしいよ。いぬい君は、澄香すみかちゃんに乳首を責められるのが好きみたいー)


 俺は、澄香すみかいぬいと他愛もない話をしながら、レヴィアたんに、ふたりの普段のプレイの内容を事細かく聞かされ続けるという、地獄の責め苦を受けながら、学校の門をくぐった。





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