第15話 縞パンがチラリチラリと見えている。

 キーンコーンカーンコーン


 学校のチャイムが鳴る。夏休み明けの今日は、午前中でおしまいだ。

 普段の俺なら速攻で帰るところだけれど、今日に限ってはそうはいかない。


 西野にしの彰人あきひとを見張らないと。


 西野にしのは教室に残って、サキュバスで魅了した女子たちと楽しく会話をしている。


「今日は絶対、私とセックスして!」


 クラスで一番の美少女の、黒沢くろさわ雪奈ゆきながせがむと、


「……わたしもおっぱい揉まれ足りない……」


 と、クラスで一番の巨乳の、佐々本ささもとらんが、負けじと豊満なおっぱいを西野にしのの腕におしつける。


「あ、良いこと思いついた、折角だからみんなで楽しも! 4P!」


 トドメにクラスで一番やらせてくれそうな、新田あらた朱莉あかりがとても平和的な? 案を出している。

 なんというハーレム状態。サキュバスのチカラ恐るべし……。


 西野にしのに魅了された、三人の女子が論争をくり広げる中、西野にしのはドヤ顔で言い放った。


「ダメだ! 今日は先約があるから! じゃあな!!」

「「ええー!」」


 先約って……澄香すみかが了承したわけじゃないだろう!!

 なんなんだ? 本当になんなんだ?? めっちゃイライラする。


 俺は、したり顔で席を立ち、教室を出ていく西野にしのを追いかけていく。

 すると西野にしのは、いそいそと、サキュバスと一緒にトイレの中へ入っていった。


 俺は、トイレを曲がった先の廊下で西野にしのが出てくるのを見張りながら、レヴィアたんに気になったことを聞いてみた。


「レヴィアたんの姿って、西野にしのとリリムってサキュバスからは見えてないんだな。なんで?」


「幻獣のサキュバスと魔神のわたしじゃ魔術の精度がちがうから!

 ステルス迷彩の精度に、プレステ2とプレステ5くらいの差があるよー」


 うん。とってもわかりやすい説明をありがとう。


 ……

 …………

 ………………


 どうした? 西野にしののヤツ。

 ちょっと、いや随分とトイレが長い。なんだなんだ? ひょっとしてウンコか?


「今は絶賛リリムと交尾中だよー」


 レヴィアたんが右手で輪っかをつくり、左手でそのわっかをしゅぽしゅぽと前後させながら話をつづける。


「前も言ったことあると思うけど、サキュバスの魔力の源は人間の精子なんだよー。

 澄香すみかちゃんを魅了するために、エネルギーをチャージしてるってわけー」


 なんてこった!

 俺は、澄香すみかを寝取る準備をしてる、しかもセックスしている西野にしのを張り込みしているのか……。


 なんとも悲しくなった。


 そして、悲しみで軽くにじんだ景色の先に、トンでもないものが飛び込んできた。

 渡り廊下をいぬいが歩いている。なんだか大量のプリントを持って、知らない女子と一緒に歩いている。栗毛のポニーテールのその女子は、ずいぶんと背が低い。一年かな?


 あ、二人が笑った。それも、すっごく楽しそうに!


 な! いぬい澄香すみかという彼女がいるのにヘラヘラしやがって!

 その時、突然突風がふいた。


「ああ! 台本のプリントが!!」


 いぬいの隣の女子が叫ぶ。スカートが風にあおられ、パステルピンクの縞パンがチラリチラリと見えている。


 台本? あ、なるほど、あの女子、演劇部の子か。


 って納得してる場合じゃない。プリントは、風にあおられあっちこっちに飛びまくっている。俺は渡り廊下に飛び出すと、いぬいと一緒にプリントの回収をはじめた。


 数分ほどかかっただろうか。俺といぬい、そして演劇部の女子と協力して、なんとか校庭にちらばりまくったプリントを回収した。


「センパイ! ありがとうございます!」

「助かったよ、壬生みぶ!」

「そんな……たまたま目撃しただけだから」


 こんなにまっすぐなお礼をされるとなんだか気恥ずかしい。

 さすがに、西野にしののセックス待ちとはいえないし、俺は適当にはぐらかす。


「じゃ、俺、用事あるんでこれで」


 俺が急いでトイレに戻ろうとすると、


「あ、あの!!」


 演劇部の女子に呼び止められた。


「アタシ、一年の辰巳たつみほのかです!

 そ、その学園祭でちょい役だけど、アタシも劇に出演できるんです。

 壬生みぶセンパイも見に来てくれ……ますか?」


「え? う、うん。別に構わないケド」

「ホントですか! やったあ!!」


 ? なんだ? この子なんでこんなにテンション高いの?


「アタシ頑張りますね!

 絶対、絶対、見に来てくださいね! 約束ですよ!!」


「うん。わかった。約束するよ」


 そう答えると、辰巳たつみほのかは、まるで花が咲いたようにほほえんだ。

 あ、この子すっごくカワイイかも……リスのような感じ?


「じゃあ、俺、用事あるから!!」

壬生みぶセンパイ! 絶対ですよ!

 絶対見に来てくださいよ」


 俺は、なんだかちょっと気ハズかしくなって、辰巳たつみほのかの声を背中にうけながら駆け足でその場を立ち去った。


「なるほどなるほど、流斗りゅうとはやっぱり小動物系がお好みなんだー。

 ロリッロリの内角低めが、流斗りゅうとにとっては、ど真ん中のストライクゾーンなんだねー♪」


 う、うるさいな!!

 んな事より早くトイレに戻らないと。


「あ、西野にしのはもうトイレにいないよー。

 でもって、文芸部の部室に急いだほうがいいよー」


 ゲッ!! マジかよ!!


 俺は最悪の事態を想定した。でも、俺の考えていた最悪の展開の、はるかナナメ上の事態が起こっていた。


 文芸部の部室は、三階の空き教室だ。そこには三人の先客がいた。


 ひとりは、下着姿で涙目になっている香澄かすみ

 もうひとりは、下半身丸出しで、同じく涙目になっている西野にしの

 そして最後の一人は……。


「俺の女を寝取りやがって! ぶっ殺してやる!!」


 包丁を持って逆上している、北村きたむらしゅうだった。

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