第8話 馬鹿なサキュバスだねー!

 絶賛お取込み中の茶髪ヤンキーと、金髪プリン頭の巨乳おねーさんは、透明になった俺たちに気がつく様子もなく、さらに激しく絡み合う。


「おら! くたばれ! リリア! このデカパイ女!」

「ひぃいい! 憲司けんじさんごめんなさぁぁぁぁい! もっとっお! もっとおおお!」


 うん。直視できない。

 俺は、大人しく正座待機をすることにした。


「はぁはぁ……おら! くたばれ! リリア! おら! くたばりやがれ! いくぞ!」

「え!? も、もう……?」


 どうやら、終わってくれたようだ。随分と早くて助かった。

 こんなこと、目の前で延々とやられ続けたら、色々と危険が危ない。


 スッキリした男は、紙タバコをふかしながら、横たわる胸のおっきな金髪プリン頭のおねーさんに質問する。


「はーはー、どうだ? 俺様のテクニックは!」

「え? あ、うん、憲司けんじはいつも、最高だよ」


 自己満足でドヤるの茶髪ヤンキーに、金髪プリン頭の巨乳おねーさんは、とても優しい天使のような受け答えをする。って悪魔か……。


(ひそひそ……はぁ。こんなしょぼい男をご主人にするなんて、馬鹿なサキュバスだねー)


 ステルス迷彩で表情は読み取れないけど、あきらかに呆れている声だ。


 男は、紙タバコを灰皿に押しつけると、いかにもけだるそうに立ちあがる。


「さてと、スッキリしたところで、もう一戦いっとくか!」

「え? やったぁ♪」


 金髪プリン頭の巨乳おねーさんは、おおよろこびで、胸をよせて茶髪ヤンキーのここには書いてはよろしくないところを挟もうとする。

 すると、茶髪ヤンキーが「はぁ」と大きなため息をついた。そして、いきなりおねーさんの顔を蹴っ飛ばす。


「そっちじゃねぇよ! バカ! パチンコだよパチンコ! おら、金出しやがれ!」

「えええ! もうお金ないよぅ……それに帰ったら、曲創るっていってたじゃないぃ」


「あぁん! 当たりも出ねーのにテンション上がるわけねーだろ!

 ったく、パチンコは大負けだわ、路駐の自転車につまづくは、そんなテンションで、俺に曲をかけってか? 魂がふるえる名曲を創れって命令するのか? ふざけんじゃねぇ!!」


 ドカァ! バシ!


 茶髪ヤンキーは、倒れたおねーさんに何発も蹴りをいれる。

 お、俺のマウンテンバイク、パチンコに負けた腹いせに壊されたのか……。なんてこった。(でも路駐はすみませんでした)


 ドカァ! バシ!


「おらぁ! 金出せよ。隠してるのはしってんだよぉ!!」

「わかった、わかった、出すから出すからぁ! 今月の電気代とケータイ代がまだ残ってるからぁ……」

「わかりゃあ、いいんだよ! わかりゃあ!!」


 金髪プリン頭おねーさんは、「ぐすん、ぐすん」とベソをかきながら、明らかにパチモンとわかるモノグラムの入ったお財布から二万円を抜き出すと、茶髪ヤンキーは、それをすぐさまひったくる。


「ったくよー。いちいちイラつかせんじゃねーよ! このデカパイ女!

 その胸使えば、もっと稼げるトコあんだろーが!」

「ダメだよ! リリアは憲司けんじさんの女だもん。憲司けんじさん以外の男性ひとに抱かれるわけにはいかないの」

「ったく、めんどくせー女だぜ」


 茶髪ヤンキーは、二万円をジーンズのポケットにねじ込むと、パンツとシャツ、それからそのジーンズをはいて、玄関えと向かう。


「閉店には帰るから、それまでに晩飯用意して…………ぐぎゃあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


 茶髪ヤンキーは、突然吹き飛ばされた、そしてゴロゴロと壁まで転がっ行って、そのままの勢いで壁を登り、天井を転がり、向かいの壁の下で着地した。


「はー、ホンットむかついたわー」


 レヴィアたんだ。ステルス迷彩を解いたレヴィアたんだ。


 レヴィアたんは片足立ちでファイティングポーズをとっている。え? 蹴り飛ばしたってこと?? なんちゅー脚力だ。

 よく見ると結構背が高くなっている。小学三年生くらい? 魔力を消費したからかな?


「ご名答ー。上位魔神のベルゼバブおねーさまの幻獣を使徒したからねー。結構魔力を消費したよー。あ、ちなみにステルス迷彩の消費魔力は大したことないよ。蹴りは単なるわたしの基礎能力」


 そ、そうなんだ。意外。


 レヴィアたんは、泡を吹いて倒れている茶髪ヤンキーをゴキブリでも見つめるような目でチラ見したあと、泣きべそをかいている金髪プリン頭のおねーさんを見た。


 そして、ネイビーのワンピースからごそごそと一枚の紙を取り出すと、金髪プリン頭のおねーさんの前に広げた。


「リリア・サキュバス! 人間界への不法侵入、および人間との無認可契約の罪で捕縛する。強制送還よ!!」

「はいぃ。申し訳ありませーん」


 金髪プリン頭のおねーさんは、大人しく両手を前に差し出す。すると、レヴィアたんの青みがかった髪の毛が、しゅるしゅると手錠のように腕に巻かれていった。


「じゃ、流斗りゅうと、こいつを魔界に送還するから後はよろしくー」

「は? なにをすればいいんだ?」


「なにって、セックスに決まってるじゃない」

「えええーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


「さっきこの娘が言ってたでしょ。

憲司けんじさん以外の男性ひとに抱かれるわけにはいかないの』

 ってさ。サキュバスは、契約していない人間に犯されると魔力を失って人間界で身体を維持出来なくなるの」


 レヴィアたんは、口元を手の甲で「しゅるん」と拭うと、両手を頭の上に乗っけて可愛らしいくダブルピースをしながら、とっても無邪気にほほえんだ。


「さあ! お楽しみのNTRタイム! はりきって行きましょー♪」

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