第3話 犬のアカイ

 火の粉が飛ぶような音がして、目覚めると犬の姿をした女が焚火をしていた。


「あ、目覚めた。おい、新人さっさと起きて飯の支度をしろ」


 肉の焼ける匂いが鼻を掠めた。


「誰だ.......? 」

「黙れ新人、ここは私の居場所だ」

「ここは誰のものでもないはずだ」

「つべこべ言うな。ここに居たかったらそれ相当の覚悟をしろ」


 女は泥だらけの手で鼻をこすったり、長いベロで舐めとったり、やけに下品だ。


「他にも、仲間はいるのか? 」

「ああ、私を慕う仲間はかなりいるな。ここの場所を陣取っている群れのリーダー私だからな」

「あんた、すごいんだな」


 褒めてみせると、女は難しい顔をした。


「あまり適当なことを言わないほうがいい。私はお世辞が大嫌いだからな。それと、和を乱すだろう。仲間の間では悪口が最高の褒め言葉だからな」

「......変わった女だな」

「そう、素直に思ったことを言え」

「わからないな、なぜ君がリーダーなのか」


 俺のその言葉に、女はやっと笑った。笑うと案外、可愛く見えた。


「俺は狼のフォン。お前は、名前はなんだ」

「私の名前は、アカイ。生まれたとき、首に赤いスカーフがついていたらしい」

「アカイの飼い主か」

「飼い主なんかじゃない。飼い主なんていう間柄ではない」


 俺は口をつぐんだ。アカイは悲しげな顔をしていた。余計なことを言ってしまったようだ。






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狼人間と赤毛のミツク slime @umbrella55

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