第2話 狼人間のフォン

この近辺では、砂埃を免れるのはこの洞穴しか見当たらない。それでも人混みよりはマシだ。


 野獣がこれでもかと彷徨っているようなこの場所が、人里離れているのは考えてみれば当たり前だ。 


 危険ではないのだろうか、と人は聞くだろう。


「ああ、危険ではない」


 獣人の俺から言わせればの話だが。





 ……俺は人間と狼の子供として生まれてきた狼男だ。


 人間たちとはこれまでは上手く行っていた。ところが謎の伝染病が流行してからというものの、人間たちの怒りの矛先が俺に向かってきた。


 無理もない、誰を責めていいのかわからない精神状態でいるよりは、俺のことを責めたほうが気持ちは楽だろう。


 寂しい気持ちと、裏切られた気持ちが混在するなかで、俺は迫りくる人間たちから逃れてきた。



 だが、この洞穴に辿り着いたとき。ここが俺のふさわしい場所だと思った。



 視界が霞んできた。もう眠い。

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