第14話 転機
気が付くと、トレファチャムの町に来て2年が過ぎようとしていた。
俺がこの世界で製造に成功したステン鋼は、その後もヒットを続け、必要に応じて事業を拡大していった結果、俺は工房とは別に大きめの土地と屋敷を購入して、そこで奴隷達と共同生活を送る事になっていた。
現在、屋敷の住人は20人で、俺、犯罪奴隷の促成錬金術師たち12名、借金奴隷の世話役(メイド)たち5名、料理人兼庭師兼厩番(借金奴隷)2名と言う構成になっている。
敷地には、俺とメイド達が暮らす本館(工房の事務所を兼ねる)と、錬金奴隷たちが暮らす別棟、馬車用の車庫兼厩の3棟が敷地内に整備されている。
本館は、2階建てで、2階に俺の私室、メイド達の部屋(メイド頭1部屋+メイド用2人1部屋×2部屋)、ゲストルーム兼用の空き部屋4部屋の7室にトイレ(共同)、1階に玄関ホール、風呂(共同・個室)・トイレ(共同)・大食堂・調理場・執務室兼打ち合わせ室・庭師兼厩番兼料理番2人の部屋1部屋を備えている。
錬金奴隷たち用の別棟は、3階建てで、1Fに玄関ホール、(プレイルーム兼)食堂、トイレ(共同)、大風呂(共同)、奴隷頭の部屋、2~3Fは奴隷用の個室各10室×2の20室(現在空室9室)と言う構成となっている。
通常、食事は本館で用意するので、別棟の食堂はほとんど使用しない為普段はプレイルームとして自由に使わせている。
共同で使える大風呂は、どちらでも使える様に整備させている。(掃除中は除くが、掃除は夜の3刻~昼の3刻までに行い、昼の3刻~夜の3刻までの間は基本的に使えるルールになっている。)
流石に女性を大風呂で一緒に、と言うのはひどいと思ったので、交代で使える最大2人位しか入れない個室風呂を本館に用意して、これは本館で寝起きする使用人が自由に使っていい事になっている。
本館の個室は俺の私室を含め1室約10畳程度の広めの部屋で、別棟の個室は1部屋約7畳程度とやや狭い間取りとなっているが、奴隷に個室を与えるのは別格の待遇だそうだ。
馬車用車庫兼厩には、2台の馬車(オープン型の1頭引きの荷馬車が2台、ただし雨除け用のオーニング付き)と2頭の馬がいるが、未だ使っていない部分が残されていて、拡張の余地は十分にある。
稼ぎ頭の錬金奴隷たちは基本が犯罪奴隷で余程運が良く無ければ奴隷身分から解放される見込みはほとんどないので、せめて少しでも気持ち良く働いてもらおうと、個室を用意したり、いつでも風呂に入ってさっぱり出来る様に色々配慮してやっているつもりだ。
本館の借金奴隷たちは、年季が明ければ解放されるので、待遇はほどほどである。
それでも、他家の扱いを考えると別格の扱いを受けているのだそうだ。(本人達談)
錬金奴隷たちは、朝起きて本館で食事を摂り、食後馬車で工房に送られて夕方まで働き、迎えの馬車に乗って別棟に戻り、本館での夕食後就寝まで自由に過ごす。
基本的に魔法を使った労働なので、精神的にリラックスできる様に色々配慮しているつもりだ。
本館は、俺の私室と奴隷頭用の個室(私室兼管理公室)、ゲストルーム以外は2人1室でシェアする様に使わせている。現在ゲストルームとして未使用の部屋は、将来奴隷が増えた時の予備の意味もある。(元々、コジーニくん以外に私的な客はあまり来ない。)
色々考えたが、結局、新素材実験用の工房は、こっちには作らない事にした。
敷地の広さを考えれば、十分作る事は出来るのだが、この辺は閑静な住宅地だ。
そんな中で、トンカントンカン余計な音を響かせた日には、あっという間にクレームの嵐で、ここを追い出される事になりかねない。
何より、ここは体と心を休める為の場所で、鍛冶の音なんて響かせた日には、どっちも碌に休ませることなんかできやしない。
因みに、奴隷のメイド達相手にxxx自由ならハーレムじゃん、とか思うやつがいるかもしれないが、彼女たちはいずれ年季が明ければここを去る予定の借金奴隷で、当然xxx不自由である。
当人の同意もなくxxxしようとすれば、俺の手が後ろに回る事になるので、もろもろ溜まったらプロのいる吐き出す為の場所に行って、お金を払って吐き出す事にしている。(幸い事業は順調でお金なら腐る程ある。)
この辺は奴隷たちも一緒で、念の為だが風紀を保つ意味で、錬金奴隷は男性に限定して購入している。別に衆道に偏見がある訳ではなし、双方同意の上でそういう関係になるのであれば、特に禁止しようとも思わないが、俺はそういうのには興味は無いし試したいとも思わない。そう言う意味で溜まると大変だろうと、奴隷に対しては破格だと言われたが、それなりのもの(お金)を定期的に渡している。
別に、そういう所に通えと言う意味ではないので、その金で酒を飲んでも甘味を楽しんでもらっても構わないので、確実かつ適当に発散してほしいものだ。
ついでに言えば、女性の錬金奴隷に関しては、現時点柄でぜひ雇いたいと思う程の逸材が見つかっていないだけで、そういう意味で逸材が見つかれば購入したいと思っている。当面、本館住まいをさせて、増えてきたら女奴隷用の別棟を建てればいいだけの話だ。
奴隷メイド達(何とも淫靡で良い響きだよなぁ)で最も齢がいってるのはメイド長で20台後半のアラサー女子のフェンディーネ嬢だ。この世界では嫁き遅れの年増扱いだそうが十分に脂が乗って実に旨そうである。他の娘たちも10台後半から20台前半の実に旨そうな娘たちばかりで、時として堪えるのに苦労する事もあるが、生憎右手は封印中だ。耐えられそうに無ければ吐き出す為の場所に行く。
年季が明けた時点で彼女たちがここへの残留を希望した場合、条件次第ではここに残ってもらう心算はあるし、そう言う意味でも現在相応の待遇を与えている心算だ。
そんな、それなりに慌ただしくも充実した毎日を過ごしいるていると、ある日突然にそいつはやって来た。
いや、それ、と言うべきだろうか。
キンキンキラキラのチンドン屋もかくやと言いたくなる程派手派手しい馬車に乗って、横がありすぎて馬車からの出入りするのにも苦労しながら、である。
あまりに太り過ぎて、新種のトロールじゃないか確認したくなる程であったが、お付き(ヒューマン)がかしずいて世話をしているところ見入ると、一応ヒューマンらしい。
それが、いかにも横柄そうな態度で口を開き、俺に向かってこうのたまった、粘つく様な効き取り辛い声でだ。
「ここが、クァージュ工房かね?」
と。
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