成果
耳ウサギが突進してくる。もう見慣れてしまったソレに、俺は冷静に剣を突き出す。
ウサギは吸い込まれるように切っ先へ突っ込み、グジュリという生々しい感触と僅かな断末魔を残して消えてゆく。
「お見事です、ファウダー様。もう、ウサギ程度では相手にもなりませんな」
「ありがとう。でも、まだまだだよ」
「そんなことはありませんよ」
「あるよ、まだ本気のガウスさんには一度も勝てないし」
ウサギの残した核を拾いながらそう答える。初めて殺したときは気がつくことができなかったが、魔物を殺せば必ずこの核だけは残るらしい。この核は、生活のいろいろなところで活用できるらしい。
俺が魔物を初めて倒した日から一年がたった。あの日以降、普段の訓練に加えて週に一度は魔物狩りをするようになった。最初の数回はすぐに気分が悪くなってしまったが、今ではすっかり慣れてしまった。
レベルも上がり、魔法も実戦レベルのモノをそれなりに扱えるようになって、戦闘に魔法が加わるようになってから、メインになる武器も両手剣から片手半剣、バスターソードと言われるものに変わった。
戦闘スタイルが固まり始めるとガウス達の訓練もいよいよ本格的になり、今では先程のうさぎ程度なら簡単に倒せるようになっていた。
「ハッハッハ。まだまだ教え子に負けるわけには行きませんからな」
「まさか、両手剣が本当のたたかい方じゃなかったなんてな…」
俺がつぶやいたとおり、ガウスは両手剣を使った戦いをする戦士ではなかった。
盾と片手剣を使った戦いが彼の本気の戦い方のようだった。上半身を覆い隠す大きな盾を前面にだし、後ろで水平に構えた片手剣で突きを繰り出す。教えを受けたときに手首が内に曲がっていたのはこの独特の構えから来ていたようだ。
このスタイルになったガウスは鉄壁、その一言で表せる。何をしても攻撃が通用せず、逆にこちらが隙をさらしてしまうのだ。遠い背中を前に、いつか必ず勝つと鍛錬に励んでいる。
剣の方はまあ順当に実力がついてきてる。これはルミィのお墨付きだし、ガウスは同年代にどころか一般兵くらいなら圧倒できるだろうと言っていた。
「っと」
不意に飛んでくる水球を、魔力の障壁で防ぐ。もちろん魔法の方も順調だ。む詠唱での実戦レベルの魔法も使えるようになったし、最近はいつ襲われても対応できるようにと、授業の時間中マーラは姿を隠してこのように魔法を撃ちこんでくる。今でこそ、防げるようになったが、なれるまでは一日で十回以上もやられたことだってある。
魔法自体は当たっても大したことのないものだが、絶妙に気を抜いた瞬間に撃たれたりしてまともにくらうと結構いたい。ただ、この訓練は一個上のランクの魔法士。世間では魔導士や賢者なんて呼ばれるものたちが行う者らしいが、マーラ曰く、俺には絶対に必要になるから今からやりましょうと言ってやることになった。
「ふむ…では、今日の訓練はここまでにしましょう。時間も時間ですからな」
「わかりました」
そう言って俺たちはマーラを呼び戻し、馬車へ乗り込む。
相変わらずガタガタと尻の痛くなる時間を過ごしながら、今の俺のステータスを確認する。ここ一年での俺の成果だ。
〈名前〉 ファウダー・カオ・ヘウンデウン
〈年齢〉 6
〈職業〉 なし
〈レベル〉 37
〈経験値〉 331
〈必要経験値〉 9060
生命力 3
精神力 5
持久力 8
筋力 5
敏捷 3
耐久 5
魔力 6
知力 2
〈技量〉 20
〈特性〉 可能性
〈スキル〉 初級剣術・初級魔法・中級魔法(青)
〈加護〉 神の観察
ルミナスの想い
メリスの想い
となっている。レベルに関しては本来なら10ちょっとのところを加護のおかげで水増しできている。伸ばした数値はできるだけ戦闘で分かりにくいものにしている。
一応レベルに対応する各項目について言っておくと、生命力はそのまんまの意味。あげれば死ににくくなるし病気や対する耐性ができる。ただ、あたまや心臓を壊されればどれだけあげても意味がない。精神力は魔法の強度に、また精神的な攻撃や負荷に対する耐性が上がる。持久力もそのまま、継戦能力の向上。筋力も読んで字のごとくだ。敏捷は体の動きや反応速度が上がり、耐久はまんま防御力。毒なんかの耐性も上がる。魔力は魔力の量に影響し、知力は理解力や記憶力が上がっていくらしい。
そして、自分の能力をどれだけ扱えているかを示すのが技量。これだけは経験値ではなく普段の生活や訓練で上がる。数値1当たり一パーセント分の力を扱える。今の俺はニ十パーセントってことだな。ちなみにこの技量が一般的な兵士と同じくらい。普通の市民とかだと10くらいだ。
ちなみにステータスを一つに固める。言わゆる極振りをしていないのは、ルミィやガウスたちに逆にバランスが悪くなって弱くなると言われたからだ。伸ばしたいところに重点を置きつつほかもバランスよく伸ばすのが強くなる秘訣らしい。
そしてスキル。今の俺は三つ持っているが、ルミィ曰くこれは魂へ刻み込まれた証だそうだ。これらがあるからといって動きに補正がかかるわけではない。ただ、そこに至るまでに身につけた技術が一切衰えなくなるそうだ。どんな技術もステータスに現れた時点で決して失われない。要するに、今から俺が剣術訓練を二十年さぼっても初級剣術レベルの技術は常に保たれるということだ。まあ、体力はその限りじゃないけど。
んで、魔法に関しては初級クラスまでは夜にメリィとこっそり練習してひと通り身につけた。中級魔法みたいに青とかついていないのはそのせいだ。中級魔法の(青)ってのは水に関する魔法系統。ってコトらしい。正確には違うらしいが、そこまで気にすることじゃないとメリィが言っていた。
まあ、以上が俺の一年の成果だ。結構頑張ったよ。
そうそう、最近聞いたんだけど十二歳になったら学校に行くんだとさ。それを知ったときルミィたちは、
『やっぱり無双に学園は外せないわよね!』
といってはしゃいでいた。俺も学校自体は楽しみだが、そのはしゃぎっぷりを聞いてルミィたち何を言い出すかの方が不安なったよ。まあまだまだ先の話だし、それまでにできうる限りの状況に対応できるよう、努力するしかないか。
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