はじめてのレベルあげの準備

「早速来ましたか…」


 俺がレベルをあげに行きたいといった後、エリーの第一声がこれだった。俺はレベルを上げたいといっただけなのになぜそんな深刻な表情をされなければならないのだろうか。


「どうしたの?エリー」

「坊ちゃま、レベル上げというのは簡単にしていいものではありません」

「そうなの?」


 俺からすればそこまでピリピリするようなことじゃないと思うが。が、エリーはそう思っていないようで、言い聞かせるように俺に説明をした。


「いいですか坊ちゃま。レベルは一度上げてしまうと元に戻せません。ですから貴族の子供たちは10歳になると必ず行くことになる学園で自分の適性を探り、それがわかってから慎重にレベルを上げるのです。けしていつものように興味本位でやっていいことではないのです」

「えー」

『ちっ。こうなったらこっそり抜け出すしかないわね。今夜から行くわよ』


 舌打ちって、そんなことしていいのかルミィよ。あんた一応女神だろ。

 しかしだ、レベルを上げるためなら、ルミィの言う通り多少抜け出すのもやむを得ないだろう。動けるようになってから見つけた抜けも道なんかもあることだし。


「ですが」

『ですが、って何よですがって。なんか無茶な要求出して来たら、向こう10年の不幸をプレゼントするわよ』


 どうやらエリーの話はまだ終わってはいなかったらしい。そしてルミィよ。自分のことを棚に上げて何を言っている。お前ほど無茶なことを言ってるやつはいないと思うが。


「私の目の届く範囲でなら、魔物を倒していただいて構いません。ステータスに関しては後日家庭教師を手配いたしますので、そこで分かった適性をもとにレベルを上げていただきます」

「じゃあ、やっていいの?」

「不本意ですが仕方ありません。奥様からも許可をもらっていますので」

「なんか、ひどくない?」


『あら、話の分かるお母さんじゃない。これは1年の幸福をあげるべきね』

『そうね。私はドロップアップはあんまり意味なさそうだから、身体健全をあげましょう』


 母やエリーは一体俺を何だと思っているのか。いやまあ、確かに行けなかったらこっそり抜け出そうとか思ってたけどさあ。


「ひどいといわれましても、物心つき動けるようになった時から自分の思ったことをすぐに実行しようとする坊ちゃんの事ですから、仕方ありません」

「そんなことないとおもうけどなあ」

「そうですか。でしたら旦那様の書斎に忍び込んだり、厨房のつまみ食いをしたり衛兵の武器庫に忍び込んだり、その他もろもろもよく考えたうえでの行動だったということですか?およそ貴族の子どもの行動ではありませんが?」

「うっ。そ、それは」


 やむにやまれぬ事情といいますか。いろいろ興味を惹かれるものが多かったといいますか。


「それは?」

「…なんでもありません」

「ならばよいのですが…。とりあえず家庭教師となる方が来るまではおとなしくしておいてくださいね」

「は、はい!」


 俺が返事をするのを確認すると、エリーはため息をつきながら部屋を出ていった。

 ふう、今日のエリーはなんか怖かったな。それにしても、そんなに言われるほどのことをしてきたとは思えないが。


『なあルミィ。普通の貴族の子供ってどうしてんの?』

『さあ?そこまで人間の行動を注視してるわけじゃないからわからないわね。あのメイドな感じ的に、もしかしたらほかの子はもっとおとなしいのが普通なのかもしれないわね』


 いや、知らないのかよ。仕方ない、機会があったら誰かに聞いてみよう。


『わかんないことは仕方ないし、経験値も稼げることが分かったから、しばらくは抜け出さずにおとなしくするか』

『そうね。今はそうする方がいいんじゃない思うわ。メリスはどう思う?』

『何かやって話がおじゃんになっても困るし、私もそれでいいわよ。ラノベでも呼んで待ってましょう』


 満場一致で決まっため、俺は家庭教師が来るまでの数日間女神たちとラノベを読みながらおとなしくすることになった。正直このラノベを読めるのが一番のチートのような気がする。最新刊まで仕入れてきてくれるし。

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