メリス
屋敷に帰ってから、父に報告してすぐに部屋に戻りステータスというよりは、増えた加護の確認のために部屋に戻った。
『で、ルミィ。このメリスってやつはだれなんだ?』
『はっ‼そうだった!あの女のせいでいろいろめんどくさいことになったのよ!』
それは知ってる。俺が知りたいのは、このメリスっていうのが誰なのかだよ。天界にいる神の1人なんだろうけど俺が知ってるのはルミィだけだからな。しかも加護が嫉妬って書いてあるから怖いんだよ。せめてどんな奴かぐらいは知りたい。
『そいつはこの世界を管理する女神の1人よ。ついこないだまでは親友だったわね』
『あら?あんた猫かぶるのやめたのかしら?』
『な、メリス!あんたねぇ、どの面下げてきてんのよ!あんたのせいでいろいろ台無しじゃない!』
『だから何?あなたが最初から普通に接してればよかったんじゃない?』
『あんたねえ…。百歩譲って猫かぶりは仕方ないにしてもあのタイミングの加護はないでしょ!あのタイミングは!下手したらずっと首輪付きだったじゃない』
急に違う声が聞こえたと思ったら、どうやら件のメリスがルミィのもとにやってきたらしい。…その前に俺にいろいろ聞こえる状態でケンカをしないでほしい。結構うるさいぞ。しかも頭に直接聞こえてくるもんだから耳もふさげん。
『別にかまわなわよ。というかむしろそうなればいいのよ。私を差し置いて婿を育てようだなんて絶対許さないわ。独神の誓いを破ったんだから邪魔されても当然よ』
『何が独神の誓いよ!あんただって必死こいて抽選に参加してたくせに!正当に負けたんだから、チャンスをつかんだ友神を応援しようって心はないわけ?』
『あるわけないでしょ!せっかくのチャンスが真横にいたやつにかっさらわれたのよ⁉しかも友神の私に一緒にやろうともいわずに独占までするんだもの。絶対つぶしてやるわ!』
内容から察するに嫉妬とかいう加護は、このメリスからの妨害だったわけか。独身仲間が一抜けしそうだからって理由で。…醜い。そしてうるさい。これがこの世界を管理し、人々に崇められる女神の姿か。よく今まで滅びなかったなこの世界。
『つぶすって、あんた人の神生なんだと思ってんのよ!』
『あんたが言えたことじゃないでしょう!それに、手に入れたチャンスを分け合おうとも思わない心無いやつはつぶされて当然よ!』
『分け合うなんて嫌よ!人間相手ならマウントとって正妻とか余裕ですけどおんなじ女神だったら危ないじゃない!』
…何だろう。こんなクソくだらない理由で俺は人生バッドエンドに行きかけたのかと思うと、すごくむなしくなってきた。
『そんな理由で独占したの⁉ほんと、性格悪い女よねえあんたは。そんなんだから神官どもも腐ってんのよ。あんたの性格と一緒で』
『あんなゴミカスどもと一緒にしないで!大体信者もほとんどいない根暗ボッチ陰キャ女神になんかに言われたくないわ!』
『そこまで言わなくてもいいでしょう⁉ていううか信者ぐらいたくさんいるわよたくさん!』
『たくさんてどれくらいですかー?具体的に言ってちょうだいよ』
なんか、最初と内容がだいぶ変わってんだがこいつら気づいてんのかね。…まあ、それよりもだ。
『うるせええええええ‼』
『ひゃっ⁉』
『ぴっ⁉』
『急に何よ!脅かせないでくれる?心臓破裂するかと思ったじゃない』
『な、なんなのよぉ。急に怒鳴らないでよぉ。この人ほんとに大丈夫なのルミィ?』
ルミスは平常運転だが、メリスだっけ?そっちはキャラかわりすぎじゃないか?なんか声が震えてんだけど。もしかして泣いてる?今ので?
『ちょっとなんか言いなさいよ。メリス泣いちゃったじゃない。この子すっごい内弁慶なんだからそういうのやめてくれない?』
『そりゃこっちのセリフだ。泣かしたのは悪かったかもしんないけどなぁ、その前に俺の頭に聞こえる状態でケンカしてんじゃねえよ。うるさすぎんだよ。せめて俺に聞こえない所でやってくれ』
『うっ。そ、それは悪かったわね。て、もしかして今の全部聞いてたの?』
『そりゃな。耳もふさげんしな』
何をいまさら。最初っから最後まで低レベルなケンカの内容が筒抜けだったぞ。
『うそでしょ…。メリィあんたのせいですごい女神象が崩れちゃったじゃない!どうすんのよ!』
『そんなの知らないわよぉ。そのまま嫌われちゃえばいいのよぉ。ヒック』
『そんなのって、あんたねえ、私の結婚生活が懸かってんのに嫌われましたはいそうですかじゃすまないのよ!』
『いや別にこのくらいで嫌いだとか、かかわるなとかそんなことは思わんぞ』
『…その言葉、嘘じゃないわよね』
こわっ。急にひっくい声出すなよ。あれ実際見たらグリンってなるやつだグリンって。
『おう、嘘じゃないから安心しろって』
『ほんとに?あとから嘘でしたとか言ったらすり潰すけど大丈夫?』
『こええよ。大丈夫だから安心しろって。もともと俗物的な神だなあて思ってたし。たいして印象変わってねえから。それよりも、そこにいるメリスだっけ?そいつどうすんだ。事あるごとに邪魔されたんなら、生き残る自信ねえぞ』
まあ、俺の中では俗物的から駄女神にランクダウンしてるんだが、これを言うとまた長引きそうだから言わないでおこう。
『…まあいいわ。そうね、メリスは魔物関連やダンジョン関連の管理をやってるから無下にするわけにもいかないし…』
『魔物の神なんていたのか…』
『まあね、魔物もこの世界を維持する重要なシステムだし。…はあ、ほんとーに仕方なくだけどメリィ』
『何よ?』
『正妻じゃなくていいなら仲間に入れたげるわ』
『いや、俺の意志は?』
『聞いてない』
ひどくね。それ、俺の今後にかかわるんだけど。顔すら見てないよ?そのメリスって女神。
『いいの?ほんとに?』
『ま、まあ、あんたには結構助けられてるしね。別にいいわよ。た・だ・し。正妻は譲らないわよ!』
『争奪戦に勝ったのはルミィなんだし、そこまで図々しくないわよ。それじゃ遠慮なく仲間に入れてもらうわ!』
『ふふん、ファウダー!解決したわよ!しかも側室確保までできたわ!』
『不束者ですが、末永くよろしくお願いしますね。ファウダー君。ふふ、今まで言いたくても言う機会がなかったこの言葉、ようやく言えたわね』
どうやら、名前と声しかわからない女神が俺の嫁になることが決定したようだ。そこに俺の意志はないが。ここまで見てきたが、神というの皆ここまで自分勝手なものなのだろうか。
『目標十人だから…あと8人ね。頼んだわよファウダー』
『10人だけ?もっと多くてもいいんじゃないかしら?天界の平均は30人くらいでしょ?』
『いいのよ。多すぎたら順番が来ないでしょ』
『そ、そうだったわ!一番重要なことを忘れていたわね』
この駄女神どもは、きっとこれからも俺を振り回していくのだろう。これから先、俺はやっていけるのだろうか。不安で仕方がない。
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