そうだ教会へいきなさい
俺が五歳になってしばらくたったある日、俺は父に呼ばれたので、いつも父がいる執務室の扉をバンと開けて中に入っていった。
「どうしたの、とうさん」
父の名はアレクサンドロ・カオ・ヘウンデウンだ。どこぞの征服王みたいな名前をしているが、物静かな本の似合いそうなイケメンである。母も美人だったが、父は次元が違う。もうジャ〇ーズとか目じゃないくらいのイケメンである。
そんな父は、勢いよくドアを開けた俺を苦笑しながらこちらを見ていた。
「元気なことはいいことだが、扉はノックしてから開けるんだぞ?あと、『父上』だよ」
「あ、ごめんなさい」
父であるアレクサンドロにそう注意されると、俺は素直に謝った。一応俺も貴族の家に生まれたので、こういった礼節に関しては今のように普段から言われているが、ほとんど意識できていない。特に身内で合っても目上には敬語を使うというのがどうにもなじめない。
「えーと、なにかごようですか?」
「ああ、ファウダーも五歳になったからね。一度教会に行ってもらおうと思うんだ」
『そういえば、そんな時期でしたね』
気を取り直して父に何の用か聞くと、そうかえってきた。しかし、いきなり教会に行けだなんて、どういうことだろうか。ルミィも知っているようなので、悪いことではなさそうだが。そんな俺の疑問を見て取った父が説明を始める。
「どんな子供も5歳になると教会で祝福を受けに行くんだ」
「しゅくふく?」
「そう、祝福。その祝福を受けると、自分のステータスが見れるようになってレベルをあげたりできるようになるんだよ。それを今日やってもらおうと思ってね」
今更ステータス?それなら普通に見れるし、なんなら経験値もちょっと増えてるぞ5くらい。そのことを伝えようとするとルミィから待ったがかかった。
『申し訳ありません。ファウダーさんの状況はちょっと特殊なので、今はアレクサンドロさんに話を合わせておいてください。詳しいことはまたあとで』
『あー、わかった』
「わかりました。きょうかいに行けばいいんですね」
「ああ、この町の中央にあるし、すぐにつくから行っておいで」
「わかりました!」
「あ、ちょ、待ちなさい。くっ油断――」
後ろでまだ何か言っていたような気がするが、まあ大したことじゃないだろう。面倒なことはさっさと終わらせてるに限る。祝福とやらを受けたら、また庭を走るとしよう。そう思って俺は外に向かって駆け出した。
…数分後。
「いい?ファウダー。貴族はいつだれに狙われてもおかしくないのよ?まして子供なんてなおさらよ」
「全くです。こちらの身にもなってください。護衛もつけずに外出などありえません」
「もうしわけございませんでした」
俺は玄関にて母とエリーに説教を受けていた。理由は一人で教会に行こうとしたから。俺の感覚からすれば、そんな馬鹿な見ないな感じだったが、ルミィからも結構あることですよと言われてしまい、今は反省し二人のお叱りを黙って受けている。
「…まあ、いいでしょう。ステータスがもらえるときは誰でもはしゃぐものだし。反省したならそれでいいわ。エリー、馬車と護衛のをよろしく」
「かしこまりました奥様」
貴族というのは、とても窮屈なものである。ガタガタ揺れる馬車に尻を痛めながら思う。このちょっとした外出にも、鎧を着たいかつい護衛が10人もついている。街に買い物に行くときもこんな感じらしい。もっと気楽に自由に生きたいものである。
『ファウダーさん、時間がありそうなので先ほどの説明をしますね』
『うーい』
『…何でしょう。休み明けの天使みたいな無気力さですね」
さっきの話を合わせろと言っていたことについてだろう。俺が気の抜けた返事をするとそんな風に返してきた。というか天使にも休みとかあったんだな。まるでサラリーマンのようだ。
『ステータスに関してですが、たしかにこの世界の方々は、祝福を受けるまでステータスを見ることができません。ファウダーさんが見れたのは、私とのつながりを保つ加護のおかげですね』
『それ、もうちょい早くいってほしかったよ』
『申し訳ございません。完全に失念しておりました。まあ、バレてないので問題ないでしょう』
あんたが言うことじゃないぞそれ。でもまあ、確かにばれてなくてよかったよ。
『もしバレてたらどうなってたんだ』
『祝福前から見れるのは、加護もちだけですので、ほとんどの場合教会に聖人認定されて囲い込まれますね…』
『……やばくね』
『………やばいですね』
囲い込まれたら無双再現とか無理じゃん。一生教会の首輪付き。完全にバッドエンドだよ。
『全然意識してなかったからな…。俺達って運がよかったんだな…』
『…………ええ、本当に。今更ですが』
『これからはバレないように気を付けような』
『そうですね』
「ファウダー、ついたわよ」
と、そうこうしているうちに教会についたようだ。加護の事もあるし、さっさと済ませて帰ろうか。
「はい!」
俺は、元気よく母に返事をして馬車を下りて行った。
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