WORLD OPERATION-世界を自由自在に操って"主人公"の物語の完結まで導け-

Leiren Storathijs

プロローグ-インストール-

 俺の名前は金操かなぐり 波音はおと。二十四歳で大学を卒業し、そのままサラリーマンとして働き、好きなゲームであるシミュレーションゲームを毎日起動しては、時々課金をして遊んでいた。


 シミュレーションゲームは、現実の事象や体験を仮想的に遊べる物で、基本自分の好きな町を作ったり、世界を作って、時間経過と共に少しずつ発展していく姿を見る物だ。

 時間経過の速度はほぼリアルタイムで、加速させることも出来るが、俺は現実と同じ時間で楽しむ派だ。

 仕事の疲れにため息を吐きながらも、ただゲーム画面を眺め、必要最低限の操作だけをして、自分の作った世界がどのような動きをするかをただ眺める。


 俺はこの時間がもっとも楽で、そして楽しい。気づいたら一日中ゲーム画面を眺め、休日でもそれだけで日を過ごすことがある。

 だがそれが良い。疲れが取れているのかと言われれば微妙だが、この間はゆったりと、ゆっくりとストレスが発散されて行く。

 だから休日をこれだけで過ごした日の翌日の仕事は、コンディション最高の状態で仕事に挑めるという訳だ。


 俺は別に肉体的疲労は酷くない限りは気にしない。最も長く仕事を続けるには精神的疲労の回復が大切だと思っている。

 そう、精神状態さえ正常を保っていれば、肉体の疲れも増えにくくなるのだ。

 毎日心に余裕を持って仕事に勤めるべき。嫌なことなんて全てゲームで忘れる。


 さて、俺は人生の一部だと思えるほどのシミュレーションゲームが好きな訳だが、俺は学生の頃からずっとやっていたゲームをついに全て行動をやり尽くした。

 ならば次は新しい同じタイプのシミュレーションゲームを探そう。


 そう思った時だった。


 ふとPCの仕事用メールボックスに一件の受信サインを見つける。

 このメールボックスに送られてくるのは、大体殆どが仕事関連で、プライベートのメールが届くことはまずない。

 しかしメールを開けば、それは、仕事ともプライベートとも言えない内容だった。


 『WORLD OPERATION ドットコム』

 こんなサイトに登録したつもりも無く、見覚えすら無い。

 ただそのサイトは自社が開発したシミュレーションゲームを紹介するもので、俺は吸い込まれるように興味を持った。


──────────────────

 こちらはシミュレーションゲームが好きそうな方へピンポイントに送信されたメールです。削除されると二度と再度届かないので、少しでも興味があればお読みください。


 こちらは自社が開発したゲーム。

『WORLD OPERATION』

 それは、最初に何も無い世界から始まり、(テンプレートも選択可能)地形、気候、人々、生態系から、追加で国、町、村を作り、組織、国家と、その人らの人格まで細かく作れるゲームとなっております。


 『世界を全て我が物に』がこのゲームのコンセプトで、ただ世界や町や人々を作るだけで無く、運営が用意したクエストに挑戦することで自身が作成した世界が、どれだけ優れているかを確かめることが出来ます。


 あなたの全てが、世界の全てが詰まった究極のシミュレーションゲーム。

 ダウンロードはこちらから。

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 世界を全て我が物に。説明を見る限り、自由度を重視した俺が求めるもので最高のゲームだということが分かる。

 せっかくこの俺にシミュレーションゲームを勧めてくれているんだ。

 何故俺が個人的にシミュレーションゲームを好きなのを知っているのか気になるところだが、無視すれば二度と会えないとも書いてある。ならばやるしか無いだろう。


 俺はサイトページを一番下までスクロールした所に見えるダウンロードボタンをクリックして、ダウンロードを開始する。


 ダウンロード中……。100%。


 別にPCのスペックもそこそこなのに、超速でダウンロードが完了した。

 あとはPCにインストールだ。と、インストール開始をクリックする前に運営からだろう事前文が書かれていた。


「これは、貴方が求める全てが詰まったゲーム。自由に、気のゆくままにお楽しみ下さい」


「あぁ、やってやる」


 俺は意気揚々とインストールボタンをクリックした。


《現在地、位置情報取得。完了》

《個人情報取得。完了》

《個人口座情報取得。完了》


 ……??? 俺は目を疑った。インストール前に一体何を取得しているのだと。

 位置情報ならどんな意味があるかわからないが、殆どのゲームにあるのは分かる。

 しかし、個人情報に、個人口座情報まで。そんなものがこのゲームに必要なのだろうか?

 まさか変なウイルスでも間違ってダウンロードしたのだろうかと、俺は途中まで興奮する気待ちを一気に冷静にさせて、すぐにインストールをやめようと×ボタンをクリックする。


 だが、中止できない処理の際になるPC独特のエラー音が鳴り、何度クリックしても無理だった。まずい、早く止めないと。

 と思った時だった。


《インストール完了》

《転送順番完了》

《転送を開始します。その場を動かないで下さい》


「なんだ? 何が起きるんだ!? 待て待て待て待て! やめ───」


 俺が言葉を言い終える前に、俺の視界は瞬時に暗転した。

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