人が消えた街3
「パシュッ」空気を割く音とともに金属同士のぶつかる鈍い音が閑静な住宅街で反響しドローンに襲いかかります。
ソラの狙い通りアンカーはプロペラのつけ根に引っかかり、ロープはそのまま巻き取られていきます。制御を失ったドローンは少し危険ですが「危険なぐらいがちょうどいい、狩りってそういうものじゃん?」というレナの言い分にソラも納得し、今では飛んでいく方向で占いをするほど楽しんでいます。今回は住宅のがべを破壊し、逆さまに墜落したので明日は雨のようです。
何はともあれ、プロペラがとれ墜落したドローンは、もはやただの箱でしかありません。持ってきた工具で扉をこじ開けると、けたたましいサイレンと共に機械音声の警告が流れます。ですが2人にとってそんなものはなんの関係もありません。慣れた手つきで配線を切断し、諸々の騒々しい音声を止めると中身を確認。
「ないね」
「無いねぇ、なんだろこれ」
「あけてみるね…うわっ、ぶよぶよしてる」
「穴があるし何か入れるんだろうね」
「ふーん、へんなの」
「時間もないし、次いこうか」
「いえっさー!」
調味料が手に入ったのは、それから1時間後のことで合計8台ものドローンを落としました。プラスチックの容器に入った茶色のソースはとろみがあり、振るとタポタポと音を立てます。
乗り物に戻った頃、既に太陽は西の空に傾き始め、白とオレンジの合わさった眩い光が2人を照らしています。
「つかれたー」
「ほら立って、帰るよ」
「もうこのへんでいっぱくしようよー」
「それもいいけど置いてきた荷物も心配だし、魚も食べれないよ」
「やっぱかえる」
「ん、ほら乗って」
レナの手を支えにソラが乗り込みます。
耳障りな音を立てながらエンジンを始動させ奇妙な乗り物は公園へ戻っていきました。
公園に戻ると辺りは薄暗く、空には一番星と沢山の人工衛星が輝いています。気温も下がり過ごしやすくなった公園を、少し冷たい風が吹き抜けていきます。
「さむい」
「いつまでもそんな格好でいるからだよ」
「なんか、きるもの」
ソラは鞄の中から薄手のTシャツを取り出し汚れたタンクトップの上に着こみましたた。これで幾分かは寒気も引いたようで、時折していた身震いも収まりまっていました。
乗り物から降りると足下の草についた露がズボンに触れ濃いカーゴパンツのカーキ色がさらに濃く染まっていきます。それを嫌がるように轍を踏んで焚き火に近寄り、弱い光を発するそれに薪をくべるとポッと火がつき、やがて炎となり付近を照らしました。
「あったかーい」
「焚き火の熱さは太陽と違ってすごく落ち着くんだよね」
「これで、おなかがいっぱいだったらなー」
「だね、ご飯にしよっか」
「おさかなー」
お腹の虫も居心地が悪いようで先程から『キュルルルルゥ』と可愛らしい音で鳴いています。その声に急かされるように折りたたみ式の椅子から立ち上がり食事の支度にかかります。
今晩のメニューはコーンスープと焼き魚、今夜は少し豪華なご飯になりそうです。
「もう、たべられない」
「お腹、いっぱい」
「あしたも、たべられるかなぁ」
「悲しいこと言うなよ」
「でも、そうじゃん?」
「どうせいつかは、死ぬんだから。気にしない気にしない。」
「そのときがきたら?」
「そのときは…そのとき考えるよ」
「もう、ひとりになりたくない」
「それだけはしないよ。私が生きてるうちはね」
「じゃあ、あとせんねんぐらいは だいじょうぶかな?」
「千年ねぇ…」
そう言いながら見上げた空には千年先も見えてるであろう沢山の光で溢れていました。
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