人が消えた街2
「たっだいまー」
ソラがスキップしながら帰ってきたときレナは、テントの最後の角をペグで固定していました。
お帰りと、声をかけたレナはソラの顔を見て少し首をかしげ優しい口調で続けます。
「何かいいことあった?」
「なぜわかった!!さては、ちょーのーりょくだな!」
「そんなわけないだろ、そんなにニヤニヤして私じゃなくても気づくよ」
「うぬぅ」
「で、何があったの?」
「えっとね、おっきいさかな つかまえた!」
いくつかあるバケツの1つに30センチほどの鱗のない魚の姿をしたものが1匹入っています。
「じゃあ今晩はコーンスープと焼き魚だな!」
「ほんと!?うっほほーい!」
小躍りするソラを横目にレナはご飯の準備に取り掛かります。と言っても魚を焼くこと以外は、昼食と変わりません。
火を起こし、その上に焼き網を適当に置けば準備は完了です。
季節がら周囲の草は青々としていて湿度も高く、燃え広がる心配を知り必要はなさそうです。
「さてと、あとは焼くだけだな」
「やった、はやくやこーよー」
「いや、まだ焼かないよ。味付けしなきゃ、調味料ってまだあったっけ?」
「んーと、赤いソースならあるよ」
ソラが鞄をあさりながら答えます。
「それ辛いんだよなぁ。塩は…っとこの前使い切ったな」
「どうするの?」
レナは少し考えてから笑顔で聞きました。
「いつも通りさ、欲しいものがない時は?」
「狩りに行く!!」
笑顔で答えるソラ、2人の決まり文句です。
することが決まったら早速準備をし、出発します。
近場ですませたいのですが、公園内は昔から整備用ロボと同様にドローンも行禁止エリアとなっていたので狩りをするためには公園の外に出なければなりません。
少しでも多くの成果を持ち帰るため乗り物の荷物はなるべく下ろし、ボウちゃんやドローンを開ける工具、それからおやつなどの狩りに必要なものだけを持っていきます。
身支度ができたらエンジンをかけ、ドローンが多く飛んでいる住宅街へ移動します。
工業区の近くなども多くのドローンが飛行していますが、調味料となると住宅街のドローンを狙うのが適切でしょう。
ビル群を抜け小さな商店が軒を連ねる通りを進むと、真っ白に塗られた円柱形の家が並ぶ住宅街に着きました。
住宅はすべて5mほどの高さで揃えられており、例外はありません。
「なんか、つまんないね」
「確かに、窓ひとつとっても全く同じとなると見応えがないね。」
ソラとレナの目線の先には、周りの家と同じく円柱形で真っ白に塗られた大変『つまらない』家が今も綺麗なまま建っています
「ここのひとたちは、これでたのしかったのかな?」
「たとえ楽しくなくても人間誰しも慣れるもんだよ」
「そう…かな」
「きっとそうだよ。さ、はやいとこ狩って帰ろう」
「うん」
胸にボウちゃんを抱え小さく頷くと2人は獲物を探して歩きだしました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます