第25話

 またあの夢だ。


 あれから何度か同じような夢を見ている。


 どこまでも続く、霧深い丘を歩いている夢だ。


 目の前には誰とも知れない少年の背中。


 どこに向かっているんだろう。


 このまま永遠に歩き続けるのだろうか。


 夢の中なのに、息が切れて苦しい。


 立ち止まりたいのに、足は僕の意に反して動き続ける。


 動悸が速くなる。


 息はどんどん苦しくなっていく。


 前を行く少年に「待って」と言おうとしたけれど、声は出なかった。


 無防備に振られる少年の腕を掴もうと手を伸ばす。


 捕まえた、と思ったら少年は消えていた。


 背後に気配を感じて振り返ると、僕が立っていた。


 またか、と思った瞬間、もう1人の僕は表情を1つも変えることなく、僕の身体を無遠慮に押した。


 さっきまでは確かにあったはずの地面がなくなり、僕は落下していく。


 霧も丘も消え去って、辺りは暗闇に包まれる。


 落ちている感覚だけが体にあった。


 遠く、上の方から誰かが叫ぶ声が聞こえた。


 何と叫んでいるのかはわからない。


 意味のない悲鳴のようにも聞こえたし、誰かの名前を呼んでいるようにも聞こえた。


 誰だろう? と、上を見上げようとした所で目が覚めた。

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